〈建設グラフ1997年5月号〉

寄稿

北海道における地域振興の取組について

北海道企画振興部地域振興室長 河村耕作 氏

河村 耕作 かわむら・こうさく
昭和18年9月生まれ、札幌市出身、北海道大学卒
昭和56年総務部東京事務所主査
昭和58年商工観光部商業流通課主査(ロス市駐在)
昭和61年同観光局主幹
昭和63年保健環境部総務課参事
平成 3年総務部知事室国際交流課長
平成 5年商工労働観光部商工金融課長
平成 7年企画振興部地域振興室地域調整課長
平成 8年現職
1.地域生活経済圏の形成
国上の5分の1という広い面積を持つ北海道は、異なった気候・風上や歴史の中で、農林水産業や地域の資源を生かした様々な産業により特色のある発展をしてきた地域から成り立っています。
こうしたことから、平成10年度までを期間とする北海道新長期総合計画では、中核都市を中心とした地域的なまとまりとして、道内を道南、道央、道北、オホーツク、十勝、釧路・根室の6つの圏域に分け、都市と農山漁村の結びつきを強め、地域の産業の振興と生活サービスの充実を図り、個性豊かで活力あふれる「地域生活経済圏」の形成を目指して、各種の施策を展開してきました。
また、地域生活経済圏の形成を進めるための重要な手だてとして、地域の人が自ら発想し、主体的に進めていく39の「地域プロジェクト」を位置づけ、関連事業に対して重点的な支援を行つております。さらに、6つの地域生活経済圏ごとに地方拠点法に基づく地方拠点都市地域に指定し、中核都市の都市機能の整備を進めています。
近年の本道は、多くの市町村で人口が減少しているほか、若者の流出などから高齢化の進行が著しいなど、依然として厳しい状況にあります。しかし、各地では地域の資源を生かした特色ある施設づくりやユニークなイベントの開催など、地域が主体となった、活性化に向けた取組が積極的に進められています。
2.地域重視の道政の展開
このような中で、平成7年度から始まった堀道政では、地域の主体性・自主性が活かせるよう、道民に最も身近な自治体である市町村を重視し、市町村とのパートナーシップを大事にした道政を推進することして、地域重視の姿勢を明確にしました。このため、地域における総合的な行政機関である支庁が、地域ニーズに対応する施策を主体的に企画し、実践していく政策形成機能を強化するとともに、道の施策全般について、地域の課題や意向を反映していくための仕組みの整備に努めております。
これまで、支庁に地域政策部を設置するなど、支庁の体制の強化を図るとともに、平成7年度からは支庁ごとに、住民、市町村とのパートナーシップのもとに支庁が地域に根差した政策形成を行う場として「地域道民円卓会議」を設置しています。また、平成8年度には、支庁が自ら企画立案し実施する事業について直接予算化する仕組みとして、「支庁がつくる政策推進事業」を創設しました。さらに、市町村振興補助金や地方振興奨励費補助金など、支庁長の判断で執行できる補助金を大幅に拡充しました。
平成9年度に、「支庁がつくる政策推進事業」について、地域の必要な事業(34事業)を積極的に予算化したほか、支庁長の権限に属する補助金についても、地域の産業政策を進めるため、「農山漁村ふるさと元気づくり事業」を創設するなど、さらに充実強化を図っています。
また、支庁が主導性を発揮して、関係各部において予算措置する「共同要求事業」の仕組みを新たに導入しました。これによって、エゾシカ総合対策や漁業系廃棄物処理対策などの支庁を超えた、高度に専門的な地域の課題解決に向けた事業が具体化することになりました。
さらに、市町村と道との人事交流を積極的に進めるなど、市町村と連携した地域重視の取組を進めています。
3.広域連携の促進
現在、道では、平成10年度からスタートする新しい総合計画の策定を進めておりますが、現計画に引き続き6つの地域生活経済圏の形成を、地域政策を進める目標と考えております。
今後は、地方分権時代に向け、住民に最も身近な行政を担う市町村の役割が益々重要になってきます。しかし、住民の二―ズは多様化、高度化していることから、地域のすべてのニーズに個々の市町村で対応することは難しくなってきています。高度な機能の整備や質の高いサービスの提供、効果的な施設の整備、産業の振興など地域活性化への取組は、これまで以上に地域間の連携や機能分担が必要になってきます。
このようなことから、新しい総合計画では、地域重視の観点に立ち、市町村などとの連携を一層強め、地域住民や民間など地域の創意と主体性を生かした個性的で魅力ある地域づくりを進めることとし、特に市町村や支庁の枠組みを超えた広域的な取組やプロジェクトを支援していきたいと考えております。
このため、地域の特色と創意を生かし、産業の活性化や観光の振興など広域的観点から地域の発展を促す「パートナーシッププロジェクト」を、地域とともに推進していくことにして、その策定を進めております。
また、支庁の機能の強化を一層進め、地域における政策形成の場や市町村との政策協議の機会を充実させ、地域の課題に対して主体的に対応できる体制の整備を進めるとともに、圏域の形成に向け、支庁間の連携を更に強化していきたいと考えております。

平成9年度 支庁がつくる政策推進事業一覧

【石 狩】 ・交流の道構想推進事業
【渡 島】 ・渡島地域特産品情報発信事業
・おしまの新・文化財発掘事業
・渡島地域快適環境づくり(エコ・リージョンおしま)推進事業
【檜 山】 ・檜山“三世代交流”推進事業〜パワーアップひやま21〜
・檜山イカゴロ処理対策事業〜ひやま“イカゴロ”プロジェクト〜
【後 志】 ・SHIRIBESHI食のファッションプラザ事業
・後志観光グレードアップ事業
【空 知】 ・スパ・レクリエーション推進事業
【上 川】 ・天塩川流域活性化推進事業
・活力あふれる農村づくり推進事業
・上川地域産業情報高度化推進事業
・道北ふるさとの味自慢(道北3支庁合同企画)
【留 萌】 ・「オロロンライン100年植樹」推進事業
・るもいイメージアップ推進事業
・道北圏・留萌港物流拠点形成推進事業
・天塩川環境保全推進事業
・日本海地域物流・産業形成プロジェクト推進事業
【宗 谷】 ・'97北のてっぺん・車いすトレッキング事業
・ニシンが帰る海づくり森づくり推進事業
【網 走】 ・知床サーモン消費拡大pr事業
・「ウエルカム・オホーツク運動」推進事業
【胆 振】 ・東アジア交流推進事業
・いぶり下草刈りキャラバン隊交流事業
【日 高】 ・ひだか広域観光推進事業
・'97日高―森と海のふれあい学園事業
【十 勝】 ・ATAC21推進事業
・ファーミス活性化推進事業
・十勝圏産業連携プロジェクト促進事業
【釧 路】 ・くしろ 自然と共生する地域づくり事業
・浜料理を囲む異業種交流事業
・釧路支庁管内エゾシカ問題対策事業
【根 室】 ・酪農景観ニューデザイン(修景)推進事業
・家畜糞尿利活用促進指導事業

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