〈建設グラフ1998年5月号〉

寄稿

建設省横浜国道工事事務所の防災対策について

建設省横浜国道工事事務所建設専門官 市川 広志 氏

市川 広志 いちかわ・ひろし
昭和30年4月 2日生まれ、長野県出身
昭和51年長野高専土木工学科卒
昭和51年3月 建設省千葉国道工事事務所 採用
昭和57年4月 建設省北首都国道工事事務所
昭和59年6月 建設省関東地方建設局道路部
昭和61年7月 建設省高崎工事事務所
昭和63年4月 建設省東京国道工事事務所
平成 2年7月 建設省首都国道工事事務所
平成 5年4月 建設省関東地方建設局道路部
平成 7年4月 建設省道路局路政課
平成 8年9月 現職

神奈川県は、首都東京及び静岡県・山梨県と接し、面積約2400kuに、全国第3位の人口約830万人が居住している。
地域は大きく3つに分けられ、東部は、横浜市、川崎市に約半数の県人口と京浜工業地帯の生産、物流拠点等が集積し、西部は、丹沢や箱根の山岳地帯、中央部は相模川に沿って産業・人口の発展著しい地域となっており、災害に関しては、東海及び南関東直下の地震、風水害、雪害など多様な災害の想定されている県土である。
このため、横浜国道工事事務所は、神奈川県内において「安全・安心 災害に強い道づくり」を目指し、昔から東海道として日本の大動脈であった一般国道1号をはじめ246号など6路線、約240qを管理するとともに、高規格幹線道路である首都圏中央連絡自動車道の新設、及び国道の改築等を進めているところである。
当事務所の防災対策の概要について、次のとおり紹介する。

広域的な幹線道路ネットワークの整備による代替経路の確保
広域的な幹線道路ネットワークの形成によって、災害時においても代替経路が確保され、緊急輸送道路として救援・救急活動が可能となるものであり、首都圏及び神奈川県における自動車専用道路ネットワークのうち、首都圏中央連絡自動車道の、さがみ縦貫道路、高速横浜環状南線の整備、横浜湘南道路の計画調査、などを進めている。
また、平成9年12月に開通した国道16号保土ヶ谷バイパスの横浜町田立体は、自動車専用道路として東名高速道路の横浜町田インターチェンジと保土ヶ谷バイパスを直結し、渋滞緩和に効果をあげている。
災害に強い
道路ネットワークの形成
(1)緊急輸送道路ネットワーク計画等
平成8年12月、道路管理者及び関係機関からなる協議会により、神奈川県緊急輸送道路ネットワーク計画等を策定した。
その中で、一般国道は、緊急輸送道路として高速自動車国道、防災拠点を相互に連絡する道路、横浜港などの臨港道路、多摩川の緊急河川敷道路と併せ、重点的な耐震性確保の整備や震災時における道路啓開・復旧を行う路線となっている。
(2)道路橋等の震災対策、斜面・のり面等の防災対策の推進
平成7年1月の阪神淡路大震災等を契機として、橋梁点検、トンネル坑口部等の緊急点検、防災総点検を実施した。その結果、橋梁は、人口集中地区で橋脚補強が必要となった国道246号馬絹高架橋など、トンネルは、坑口部対策として国道16号新田浦トンネルなどを実施しており、さらに総点検で必要となった箇所についても早急に着手する予定である。
ライフラインの安全性・信頼性の向上
(1)共同溝の整備
交通混雑する市街地部の占用物件の掘り返し工事を抑制し、震災時のライフラインを確保するため、共同溝の整備を進めている。なお、横浜市中心部の伊勢佐木町では、国道16号に共同溝と地下駐車場の一体的施設として施工中である。
(2)電線共同溝等の整備
高度情報化への対応、電線類の地中化による防災対策などから、光ファイバー・電力・通信ケーブル等を共同収容する電線共同溝の整備を進め、又光ファイバーのみを収容する情報ボックスは、関西方面と首都圏の情報ネットワーク構築を重点として国道246号から着手している。
橋脚耐震補強工事 国道246号馬絹高架橋 除雪作業(夜間)溝の口横断歩道橋
防災管理情報化の推進
(1)総合的な道路防災点検の実施
日常のパトロール、定期的な構造物の点検、防災総点検及び道路管理データベースの補修履歴等を踏まえた総合的な点検により、計画的な維持管理を実施している。
(2)防災管理情報化の推進
地震計システム、道路情報板・情報管理室等の道路情報システム、建設省専用通信回線などに加え、平成9年7月の「東京湾オイルタンカー原油流出事故」の際、多摩川河口の状況画像をリアルタイムで送った衛星通信車の通信システムにより、災害情報の収集・提供を行うものであるが、さらにシステムの充実を図っていく。
防災管理体制等
(1)防災管理体制
防災管理体制として、事務所災害対策計画及びマニュアルにより、災害状況に応じた体制、関係機関との情報収集伝達、防災訓練の実施等を定めている。
ところで、今年1月の二度にわたる降雪は、列車の運休、高速道路の通行止めなど交通に多大な混乱を招いたが、当事務所では、5つの管理出張所が「24時間体制で除雪・凍結防止作業」にあたり、管理する国道の交通を確保した。
(2)広報
平成9年8月27日、当事務所が実行委員会事務局となり、道路防災週間の一環として「道路防災シンポジウム神奈川」を開催し、横浜市の神奈川県民ホールに、防災関係者、地域の方など約1200名が参加された。又9月14日、nhk教育・金曜フォーラムでこの討議が放映され、道路防災の意義が全国的に広められた。

地震、台風襲来など、自然条件の厳しい我が国においては、災害は避けることのできない宿命であり、「災害に強い国土づくりの実現」には、道路事業そのものが「震災・防災対策」である。
今後とも、関係機関や地域の皆様と連携を図りつつ、広域的な幹線道路ネットワークの整備や良好な日常の管理など、積極的に取り組んで参りたい。


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