〈建設グラフ1998年3月号〉
寄稿
![]() |
中山 啓一(なかやま・けいいち)
|
建設産業は、我が国の資源利用量の約50%を建設資材として利用する一方で、産業廃棄物最終処分量の40%を超える量を建設廃棄物として最終処分しており、資源の利用、廃棄の両面で大きなウェートを占めております。
このため、今後「資源循環型社会」を構築する上で、建設産業が、他産業で発生するものも含めて再生資源の利用、建設廃棄物の再資源化を促進し、「ゼロ・エミッション(※)」産業の中核として発展していくことが求められております。
リサイクル促進については、ゼロ・エミッションを目指した工業団地の建設、使用済み自転車のリサイクルの推進、家電リサイクル促進のための法制度の検討等他産業においてもそのための動きが活発化しており、建設産業においても官民が一体となった建設リサイクルの取り組みを、一層強化していくことが必要であります。
建設省では、平成8年11月の「建設リサイクル推進懇談会提言」を踏まえ、建設省における建設リサイクル推進に向けた基本的考え方、リサイクル目標値、具体的施策を「建設リサイクル推進計画'97」(以下「推進計画」という。)として平成9年10月にとりまとめました。
推進計画では、建設廃棄物の6割は公共工事から排出されていることにかんがみ、発注者が発生抑制、再利用に取り組むことが重要であり、計画・設計段階での資源利用量、再利用量等を定めたリサイクル計画書の作成、適正処理を確認するための追跡調査、ゼロ・エミッションを目指したリサイクルリーディング事業、廃棄物処理法の再生利用制度等を活用した建設汚泥再生利用事業などを、発注者が積極的に推進することとしております。
また、民間建築工事、特に解体工事からの建設混合廃棄物や建設発生木材の排出量の増大が予測されるとともに、これらのリサイクルが特に遅れていることから、民間建築に関しては、住宅金融公庫の基準金利適用に当たって、高耐久性住宅であることの共通要件化、木造住宅の新築時の長寿命化や既存住宅の改修等による良質ストック化技術の開発などを、推進することとしております。
さらに、推進計画策定の際には結論が先送りされていた「建設工事における適正な解体・リサイクル促進のための新たなしくみづくり」や「再資源化施設及び最終処分場等の適正な立地促進方策等」については、引き続き重点的に検討を進めることとしております。
さて、現下の厳しい財政事情の下で、効率的に公共事業を執行し、社会資本整備を着実に進めるためには、公共工事コストの一層の縮減を推進することが必要であることから、政府は平成9年1月に「公共工事コスト縮減対策に関する行動指針」を策定しました。これを踏まえて、建設省においては、「公共工事の建設費の縮減に関する行動計画(以下『行動計画』)」を策定したところですが、この中で、コスト縮減の観点から建設発生土や建設廃棄物のいわゆる建設副産物対策として、建設副産物の発生抑制、再生資源の利用促進等が盛り込まれたところです。
公共工事コストの縮減と建設リサイクルの関係については、短期的側面と長期的側面の両面で検討する必要があります。
例えば、建設汚泥については、短期的側面で見てもリサイクルを行った方が最終処分を行うよりも処理費が軽減できるため、公共工事コスト縮減に貢献することができます。また、コンクリート塊等については、現時点で、再生資材利用コストが割高になる場合でも、公共工事において発注者が「リサイクル原則化ルール」を徹底し、再生資源を積極的に活用することにより、再生資材の市場が整備され、長期的には資材コストが低下し、公共工事コストの縮減にも資するものと考えております。
いずれにせよ、「リサイクル」と「コストダウン」は背反するテーマではなく、短期的な面ではコストアップになることがあっても、長期的な面では、リサイクルの推進がコストダウンにつながるものであり、発注者、建設業者、廃棄物処理業者等の関係者が連携して取り組むことにより、その成果が得られるものと考えております。今後とも、「コストダウン」の要請も踏まえながら、「リサイクル」の推進を進めてまいりたいと思います。
※さまざまな産業を組み合わせることで個々の企業活動に伴って発生する廃棄物を社会全体としてゼロにすること