〈建設グラフ1998年3月号〉

寄稿

横浜市住宅供給公社の建設事業

横浜市住宅供給公社建設部長 藤田 治郎 氏

藤田 治郎(ふじた・じろう)

昭和15年10月22日生まれ
昭和 38年 3月 山口大学工学部土木工学科卒
4月 横浜市港湾局企画課
  56年 5月 横浜市南土木事務所副所長
61年 6月 横浜市街路部特定街路課長
平成 元年 5月 横浜市道路局道路部維持課長
2年 6月 横浜市中土木事務所長
5年 5月 横浜市道路局部長(横浜市道路建設事業団派遣)
8年 4月 横浜市建築局部長(横浜市住宅供給公社派遣)

横浜市住宅供給公社は、昭和40年に施工された地方住宅供給公社法に基づいて、昭和41年12月1日、横浜市が基本金1,000万円を全額出資して設立された。
以来、当公社は、横浜市の住宅政策の一環として、市民に良質な住宅を供給し、また居住水準の向上をめざすため、積立分譲住宅及び一般分譲住宅の建設・分譲、賃貸住宅などの企画、建設、管理を行ってきた。
生活スタイルの変化に応じた住宅の供給を常に心がけ、昭和40年代は、市内の急激な人口増加による膨大な住宅需要に対し、県、市、日本住宅公団、県住宅供給公社と協力して大規模な住宅開発を行い、住宅難の緩和に寄与した。また、昭和50年代に入ると人々の住まいに対する要望も多様化し、当公社の一戸建分譲住宅や高層住宅の供給に努めるなど、ニーズに応えてきた。最近では、昭和60年から始めた地域特別賃貸住宅制度、愛称「ヨコハマ・りぶいん」などの民間提携事業が好評を得ている。
また、都市再開発や土地区画整理及び駐車場の整備、市営住宅の管理など、住宅を取り巻く環境の整備事業にも積極的に取り組んでいる。本稿では建設事業を中心に、主なものについて紹介したい。



▲台村寺山土地区画整理事業の様子
1.分譲事業
当公社はこれまでに集合・戸建て合わせて10,282戸の住宅を分譲してきた。建設にあたっては、用地取得の段階から環境面を配慮し計画を策定している。また、近年は、多様な発注方式(ve制度、企業開発提案など)で民間のノウハウを導入すると共に、中空スラブ採用による遮音性の向上や高齢化社会に備えるバリアフリー設計など、住宅性能の向上に努めている。
これらの努力がユーザーの支持を受けたのであろう。厳しい経済環境下に在りながら、現在当公社の完成在庫はゼロである。建設部では、現在南区高根町に「公園通り弐番館」106戸の建設工事を鋭意進めているところであるが、この物件も既に完売している。
平成10年は、鶴見区尻手で共同住宅225戸の工事を進める他、緑区台村町・寺山町や金沢区富岡東などで建設を予定している。
2.賃貸住宅建設事業
これまでに建設した自社物件の住宅は、4団地377戸あり、一般賃貸住宅として営業している。このほか現在2団地158戸を建設中であり、特定優良賃貸住宅「ヨコハマ・りぶいん」として既に募集を終了し、近日入居を予定している。
一方、当公社では、民間オーナーの土地活用として、ファミリー向けの「ヨコハマ・りぶいん」、高齢者向けの「シニア・りぶいん」の建設及び管理の受託を取り扱っている。平成9年12月1日現在で、双方合わせて209団地4,724戸を管理、44団地1,046戸を施工している。
なお、シニア・りぶいんについては、公営住宅法の改正に伴う措置として、平成10年4月より借り上げ市営住宅に移行の予定である。

▲台村寺山土地区画整理事業 完成予想図
3.区画整理事業
現在、緑区台村・寺山地区約21.5haにおいて、組合施工の土地区画整理事業を受託している。この事業は、平成10年7月に換地処分の予定である。当公社では、この地区で平成15年までに戸建て住宅53戸、共同住宅966戸を建設の予定である。
今後は、小規模区画整理事業の制度を活用して、市街化区域農地の宅地化を図るため、泉区新橋地区約2.2haで区画整理の事業化を計画している。
4.再開発事業
当公社では、昭和63年度に杉田駅前約2.4haの再開発を受託、平成5年に竣工している。平成9年12月には南区の三吉演芸場地区が竣工し、平成10年元日に柿落し講演が行われる予定になっている。この事業は、老朽化した大衆演芸場をオーナーと公社が共闘で再開発し、公社が取得した住宅床22戸を特定優良賃貸住宅として供給するものである。演芸場部分については、今後公社が西区野毛地区に再開発で整備する予定の芸能センターと併せて、横浜市における大衆芸能の拠点として活用されることになる。
当公社では、まちづくりを通じて良好な住宅の供給を図るべく、このほか市内数箇所で事業化に向けた調整を行っている。

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