〈建設グラフ1998年2月号〉

寄稿

東京外かく環状道路(千葉県区間)について

建設省関東地方建設局首都国道工事事務所長 川路 正行 氏

川路 正行 (かわじ・まさゆき)

鹿児島県出身、昭和41年日本大学理工学部卒。
昭和 36年 4月 建設省入省、関東地方建設局首都国道工事事務所
47年 1月 道路部道路計画第一課
51年 4月 東京国道工事事務所
53年 4月 横浜国道工事事務所
61年 4月 建設省道路局国道第一課
63年 4月 大宮国道工事事務所調査課長
平成 元年 11月 局道路部道路計画第一課補佐
3年 4月 横浜国道工事事務所副所長
5年 10月 沖縄総合事務局南部国道事務所長
8年 4月 関東地方建設局企画部(技術調整管理官)
9年 4月 首都国道工事事務所長
はじめに
建設省首都国道工事事務所は、主に首都圏の南東部における直轄の大規模改築事業を担当している。
したがって、年とともに担当事業は移り変わり、古くは一般国道6号の千葉県内から茨城県南部にかけての改築をはじめ、4号の千柱新橋、6号新四つ木橋、金町立体、14号小松川橋、357号荒川河口橋の架橋などを手がけてきた。
現在は、東京外かく環状道路(外かん)、東京湾岸道路、一般国道6号の藤代バイパスなどの事業を受け持っている。
この中で、当事務所の中心的な事業である外かんの千葉県区間(東京都葛飾区区間も含む)の概要を紹介する。
図1 3環状9放射のネットワークシステム
1.外かんの役割
人口や産業などの急激かつ高密な集積は、交通渋滞や環境悪化などの弊害をもたらし、健全な都市の育成を妨げることになる。
このような懸念から、首都圏の道路交通基盤の骨格を成す自動車専用道路ネットワーク構想である「3環状9放射」のネットワークシステムが、昭和42年の第五次道路整備五箇年計画において位置づけられた。(図−1)
外かんは、3環状9放射ネットワークの一部を構成する道路であり、3環状の中間のリングにあたり、神奈川、東京、埼玉、千葉の1都3県の都心から約15qの圈域を通過する延長約85qの道路である。
外かんは、都心に集まる多くの高速道路や一般国道等を相互に接続して、都心に集中する交通を適切に分散導入するとともに、都心に起終点を持たない交通をバイパスさせる役割を果たし、これにより、首都圏の交通混雑の緩和や都市間の円滑な交通ネットワークを実現させるものである。
また、新しい時代のニーズに応えるため、広い緑地帯を設けるなど、生活環境や自然環境との調和と保全に十分配慮し、安全で緑豊かなまちづくりに役立ったことも目指している。(図−2)
図2 外かん基本断面
構造は、標準的断面として幅員60mの掘割スリット構造(半地下構造)を採用することとしています。「外かん」は、市街化が進んでいる地域を通るため、特に沿道地域の環境保全に配慮する必要があります。このため、騒音・振動・大気質などについて環境を保全し、親しみと潤いのあるみどり豊かな空間を創出するため、片側16m〜20.5mの環境保全空間の中に、遮音壁や幅広い植樹帯を設けることとしています。
@専用部(高速道路)
広域的な通過交通を地域から吸収するとともに、他の地域への高速交通手段となります。
A一般部(一般国道298号)
市内の街路と密接に連絡し、地域の南北方向の交通軸となるとともに、バス路線としても活用できるなど、まちづくりの骨格となります。
B植樹帯
十分な緑化を行い、みどり豊かなまちづくりに貢献します。また、この中に遮音壁を設置し、沿道の環境を保全します。
Cサービス道路、自転車歩行者道
サービス道路は、沿道街区の地先道路となり、また、自転車歩行車道により、快適で安全な通行が確保され、これらは地域に密着したコミュニティ空間となります。
D地下収容空間
上下水道・ガス・電気・電話など、暮らしに欠かすことのできない施設を収容することもできます。
2.外かんの経緯
当事務所が担当している区間は、東京都葛飾区東金町地先から千葉県市川市高谷地先に至る約13kmである。(図−3)(図−4)
当該区間の基本構造は、自動車専用道路4車線と一般道路4車線が併設する複断面構造となっている。
路線の位置づけは、自動車専用道路は国土開発幹線自動車道の東関東自動車道水戸線、一般道路部は一般国道298号となっている。
道路構造規格は、専用部は、1種3級、設計速度80q/h、一般部が4種1級、設計速度60q/hとなっている。
都市計画決定は、昭和44年に一般部の中央に高架で専用部が入る計画で行われ、翌45年には事業化となった。
しかし、主に環境問題から、計画の見直しを千葉県、市川市、松戸市から要請され、建設省では、環境に十分配慮する道路構造という観点から、計画の再検討を行い、県・市に提示し協議を重ねてきた。
その結果、県・市から、変更の計画案を受け入れていただき、平成8年12月に、当初の計画決定から実に、27年の歳月を要したが千葉県区間の都市計画変更が決定された。(図−5)
また、専用部は、平成3年12月の国土開発自動車道建設審議会(国幹審)において、当事務所担当区間全てが、東関東自動車道水戸線として基本計画が決定され、さらに、平成8年12月の国幹審では、このうち、松戸ic(仮称)から高谷jct(仮称)までの整備計画が決定された。
図3 外かん全体図
図5 外かん計画変更の経緯


▲当初都市計画決定基本断面


▲都市計画変更基本断面
図4 千葉県内における整備計画
3.外かん事業の実施状況
外かんの計画変更について県・市と協議を進める中で、一般国道6号との交差箇所を大きな区切りとして、6号以北(埼玉県側)については、江戸川渡河部付近の地域交通改善のため、6号以南と切り離して事業を進めることとなった。
このため、埼玉・東京都県境から6号までの約2qについては、昭和53年度から一般部の内回りの工事に着手し、平成4年度までには供用となった。
また、平成4年度からは、江戸川から6号までの間の一般部の外回りについても工事に着手しており、現在も本区間の供用に向けて鋭意工事を推進しているところである。(写真)
6号以南については、県、市及び地元住民からの用地の強い買い取り要望を受け、買い取り要望の出された地権者に個々の事情を伺って、人道上やむを得ないと判断したものについて、平成2年度から買収に応じてきており、平成8年度末までに、面積ベースで約46%の買収率となっている。
また、9年度の後半からは、新たに埋蔵文化財調査、地質調査、路線測量に着手したところである。

〈工事名〉小山高架橋下部工事
小山高架橋下部その2工事
小山高架橋上部工事
小山高架橋上部その2工事
小山高架橋床版工事

〈工事名〉矢切インター函渠工事
国六ボックス改良その1〜4工事
常磐線金町・松戸間新矢切架道橋新設工事
〈工事名〉矢切インター改良工事
矢切インター改良その2工事
〈工事名〉矢切インターEランプ下部工事
4.今後の方針
6号以北については、埼玉県側の事業と調整を図りつつ、埼玉・東京都県境から6号まで、一般部の早期4車線化に向けて工事を推進する方針としている。6号以南については、都市計画変更を受けて、本格的な事業展開を図ることとしており、引き続き用地の買い取り請求に対応していくとともに、計画買収も推進し、早期に工事に着手する方針としている。
そして、日本道路公団(JH)への施行命令が出されれば、JHとも互いに協力しあって、また、県、市及び地元住民からの一層のご理解とご協力をいただきながら、概ね10年後の供用を目指し事業を推進していく方針としている。
おわりに
21世紀を目前に控え、社会生活、経済活動が、人を中心として一層効果的・効率的に展開されるよう、道路政策の目標を明示した新たな道路整備五箇年計画(案)が策定され、平成10年度からスタートすることになっている。
新計画は、「人中心の安全で活力に満ちた社会・経済・生活の実現に向けて」を基本コンセプトとし、各種道路施策の方向性が示された。
整備効果が広域的なものから地域的なものにも及び、その内容も多種多様にわたる外かんは、新計画で打ち出されている各種道路施策の多くを受け持つことができ、その整備によって、新計画の基本理念実現に向けて大きな役割を果たすことができると考える。
しかしながら、昨今の厳しい財政事情、多様な国民のニーズを踏まえると、事業の推進にはさらなる努力が必要と認識している。
このため、新計画でも示されているように一層の事業の効率化、透明性の確保、関係機関等とパートナーシップの確立を図るなど事業の進め方においても工夫を凝らし、円滑な事業執行に努め、来るべき21世紀に向け、人々が安全で安心して暮らせる社会の実現の一翼を担ってまいりたい。

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