寄稿
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建設業はその就業者数において、全就業者数の約1割を占めるとともに、国民総生産の2割弱に相当する建設投資の直接の担い手として、我が国の基幹産業たる地位を占めている。さらにまた、各地域においては経済・雇用の下支えとして大変重要な役割を担っているものである。
建設業を取り巻く近年の状況は、建設業許可業者数は増加基調にある一方、建設投資はバブル崩壊後伸び悩み気味であり、将来的にもこれまでのように右肩上がりに建設投資が増加していくようなことは予想し難く、特に、公共投資については、財政構造改革の観点から投資水準の抑制やコストの縮減が求められている。
さらに、本年7月以降、一部の中堅クラスの建設業者において倒産が発生するなど建設業者の経営状況は厳しい状況に直面している。
入札・契約制度の改革やWTO政府調達協定の発効等建設市場の国際化に伴い、建設市場の競争性はますます高まっており、すでに「新しい競争の時代」を迎えてきているところであるが、さらに、このような厳しい状況の中で、特に公共事業への依存度の高い中小・中堅建設業者等について「技術と経営に優れた企業」が伸びられるような環境の整備を進めていくことが急務である。すなわち、各企業の自助努力と市場競争原理を基本としつつ、
などを進め、技術に支えられた生産性の高い産業となることを日指して、建設業の構造改革を図っていく必要がある。
中央建設業審議会基本問題委員会では、建設市場の環境変化に対応した建設業の構造改革を図るため、「@.受注者の技術力を活用する多様な契約・発注方式の導入など制度の更なる改善」、「A.技術と経営に優れた企業が伸びられる競争環境づくり」について、昨年9月より審議を進めてきているところである。当面まず、喫緊の課題である公共工事のコスト縮減に関連のある課題として、以下の3項目を柱とする中間報告が本年6月にとりまとめられた。
公共工事の入札・契約制度については、平成5年12月の中央建設業審議会建議に基づき、抜本的な改革が進められてきたところである。今後は、これまで進めてきた入札・契約制度の改革の一層の定着・浸透を図っていくとともに、入札・契約方式の多様化を一層進めていく必要があり、以下の4方式が提示された。
なお、建設省直轄工事においては、入札VEのうち価格競争型の「技術提案型競争入札方式」、「契約後VE」について、既に49試行対象工事が公表されており、そのうち31件の入札を終えている。(11月17日現在)
不良不適格業者の排除に当たっては、建設業の許可行政としての取り組みのみならず、業者の選定や施工段階での監督・検査において、発注者が果たすべき役割は大きく、これまで以上に、両者の連携を強化し、改善を図るべきであり、発注者支援データベース・システムの活用、施工体制台帳の活用や現場施工体制の立入点検、違反者に対するペナルティー等を課すことによって不良不適格業者の排除を図ることが必要であるとされた。
さらに、中小・中堅建設業者が厳しい時代に適切に対応していくためには、企業連携・協業化等により、経営力・施工力を強化する必要性がますます高まっていくものと予想される。協業化の第一段階としては、経常建設共同企業体(経常JV)の結成が現実的に有効な方策であるとされ、経常JVの活用促進のため、対象企業の拡大と企業評価における総合点数の調整が示された。
これを受け、経常JVの対象企業を資本金20億円以下又は従業員数1,500人以下の中堅建設業者まで拡大するとともに、適切な施工力を備え、かつ、継続的な協業関係が確保されると認められる経常JVには、客観点数及び主観点数について当面10%のかさ上げ措置を導入したところである。
現在、「@.受注者の技術力を活用する多様な契約・発注方式の導入など制度のさらなる改善」の分野では、「入札・契約手続の透明性の一層の向上」として、経営事項審査の結果及び資格審査・格付けの結果の公表や予定価格の事後公表、地方公共団体における入札・契約手続の改善の徹底方策について御審議いただいているところである。
また、「A.技術と経営に優れた企業が伸びられる競争環境づくり」の分野では、完成工事高ウェイトの実質的縮減など経営事項審査制度の見直しの検討や許可業種区分、元請下請取引の適正化について御審議いただいているところである。
来春を目途に建議を頂くことを期待しているが、それを受け、厳しさを増す建設市場環境に的確に対応して、各種の施策の展開を図って参りたい。