建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2001年12月号〉

寄稿

我が国の下水道整備の現状と課題について

―協会の意義と役割―

(社)日本下水道協会長 佐々木 誠造

佐々木 誠造 ささき・せいぞう
生年月日 昭和7年10月30日
昭和31年早稲田大学第一理工学部工業経営学科卒業
昭和44年4月青森三菱自動車販売(株)取締役社長(〜平成元年4月)
昭和59年4月青森商工会議所副会頭(〜平成元年4月)
昭和60年12月青森県公安委員会委員(〜平成元年3月)
平成元年5月青森市長(平成13年5月四選現在に至る)
平成元年11月青森県市長会会長(現在に至る)
平成2年6月全国市長会副会長(〜平成3年7月)
平成4年2月青森県国民健康保険団体連合会理事長(現在に至る)
平成13年1月男女共同参画会議議員(現在に至る)

我が国の下水道は、21世紀を迎えた今、大きな転換期を迎えようとしています。
平成12年度末の我が国の下水道整備処理人口普及率は、62%に達し、この数字を見ると全国的に相当整備が進んできたように見えます。しかしながら、その実態を地域別に見てみますと、政令都市等のいわゆる下水道先進都市は100%ないしそれに近い状況にありますが、人口5万人未満の都市の普及率は、わずか27%にしか過ぎず、全国3200余の市町村のうち未だ下水道事業に着手していない市町村が、1000にも上る状況にあります。
もちろんこれらの市町村がすべて下水道事業で整備するということではなく、当然、下水道事業とともに合併浄化槽や農業集落排水事業との組み合わせによる効率的な整備計画により、整備すべき事は言うまでもないことでありますが、下水道事業者である市町村等地方公共団体は、最近の景気低迷下で、非常に厳しい財政状況にあり、このため下水道事業への財源措置が十分にできず、事業の推進に支障が生じているのが現状であります。
一方、整備の進んでいる大都市等についても、近年の異常気象による集中豪雨等への対応としての雨水対策もまだまだ不十分であり、早期に整備された合流式下水道の改善や管渠等の老朽施設の改築・更新事業も対応が求められており、今後の大きな課題となっております。
下水道事業は、地球環境を守る観点からも、良好な水環境を維持、保全し、健全な水循環を確保していくうえで不可欠な施設であり、国と地方公共団体が下水道の使用者である市民の理解と協力を得ながら、事業を進め、そして適切に管理運営していくことが、求められています。
日本下水道協会は、昭和39年、整備の遅れている下水道整備に熱意を持っている市長等関係者の努力により設立されましたが、設立以来、下水道事業を実施する地方公共団体の立場から、下水道事業の積極的な推進に向けて、国の財源措置、制度・施策の充実に向けての要望活動、事業を実施する上での技術的、経営的課題等についての調査・研究並びにその成果について国への提言、さらに下水道事業を進めるうえでの参考図書の編集発刊、下水道事業従事職員の養成のための研修・講習の実施、下水道事業の効率的な執行に資するための下水道用資器材の規格化、検査事業のほか、下水道技術や新製品等の情報交換等を行う下水道展の実施をはじめとする各種広報活動等幅広い活動を実施してきております。
下水道は、施設の整備が完了しても、施設の適切な維持管理や健全な経営が不可欠であり、そのことにより、下水道の機能が継続発揮されることとなります。適正かつ円滑な管理(経営面も含めて)を行っていくためには、多くの課題があり、これらの課題については、行政、民間、そして市民の三者が力を合わせて対処していく必要があります。
本協会設立時、我が国の下水道普及率は、わずか8パーセント程度でありましたが、関係者の努力により、相当整備が進んでまいりましたが、本協会も会員数の増大とともに、事業活動も質量ともに充実展開してきており、下水道整備促進の一翼を担ってきたものと確信をしております。これも本会会員各位の協会活動に対する理解と絶大な協力の賜と深く感謝いたしております。先述いたしましたように、下水道は、その役割、機能を未来にわたって果たしていかなければなりません。
本協会は、今後も会員の意向と社会のニーズを踏まえて、下水道事業の推進のため、適切かつ必要な活動を実施してまいりたいと考えておりますので、各界の皆様の、ご理解ご協力の程よろしくお願いいたします。


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