建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2001年12月号〉

寄稿

トキの羽ばたく賑わいの島づくり

新潟県 相川土木事務所長 木下 惠夫

木下惠夫 きのした・しげお
昭和 22年 2月16日生まれ
昭和 45年 東京教育大学卒
平成 11年 土木部砂防課長
平成 13年 現職

佐渡島は、面積855平方キロメートル、1市7町2村、人口約7万3千人の全国最大の離島であり、古代・中世以来の長い歴史と、地理的条件を背景とした独自の風土、文化を形成している。現在、両津港が佐渡への玄関口であり、両津市と商業中心地の国仲地区の一般国道350号に沿って、人口集中が見られる一方、大佐渡・小佐渡エリアには小さな集落が点在し、若者を中心とした人口の流出や高齢化の急速な進行が深刻な問題となっている。また、今年は、相川金銀山開設400周年にあたり、相川町では歴史的な建造物「佐渡奉行所」を再建するなど、佐渡の歴史をピーアールし、佐渡金山跡を「世界遺産」への登録の運動を展開している。
このような現況を踏まえ、相川土木事務所では、全島的な視野に立ち、地域住民の二一ズや地域の課題を把握し、佐渡の将来像を描きながら、優先的に整備すべき社会資本の「戦略的社会資本整備プログラム」を検討している。
道路関係では、島内の道路改良率は70.9%(県平均の75.7%)でまだまだ多くの要整備個所を抱えている。一般国道350号の道路改築事業では、交通渋滞対策として、両津、国仲バイパスを実施している。主要地方道佐渡一周線は、現在8工区で重点的に道路改築工事を実施しており、鹿ノ浦大橋、南片辺トンネル、願大橋、深浦大橋等の大型工事を鋭意施工中である。また、都市計画道路の道遊線は、金山ヘアクセスする観光道路として本年度完成し、窪田沢根線は、佐渡一周線のバイパスルートとして平成12年度より事業着手した。この他、道路法面などの危険個所対策として災害防除事業、歩道の段差解消や交通安全施設などの整備をする「バリアフリーまちづくり事業」なども重点的に実施している。
次に治水関係では、佐渡島は急流河川が多く、平成10年8月4日の集中豪雨で大きな被害を受け、その災害復旧としての石田川・山田川の助成事業は今年度完了する。また、河川整備については、国府川水系河川整備計画に基づき着実に進めている。土砂災害防止関係では、地域住民が安心して住んでもらうため、両津市の真更川通常砂防、相川町の長坂羽田地すべり、畑野町の浜河内急傾斜事業等を実施するとともに、土砂災害のソフト対策として、的確な情報伝達により早期の避難が可能となるよう、警戒避難体制の整備拡充を図っている。佐渡島は260.7kmの海岸線を抱えており、冬季風浪による侵食、背後地への越波を防止するため、環境に配慮した佐和田海岸等の海岸事業も積極的に実施している。本年度は海岸法の改正にともない、地域の意向を適切に反映した海岸線の防護・利用・環境の整備保全に関する「海岸保全基本計画」を策定する予定である。
21世紀は生物、環境の時代といわれ、循環型社会の構築、自然との共生が叫ばれている。佐渡島では、トキの野生復帰に向け住民参加型の議論が展開し始めた。住民と行政が連携して知恵を出し合い、「トキの羽ばたく賑わいの島づくり」を目指していきたい。


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