建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2001年12月号〉

寄稿

森林のもつ多様な機能の持続的な発揮に向けて

北海道水産林務部 林務局長 梶本 孝博

梶本 孝博 かじもと・たかひろ
昭和22年生 兵庫県
北海道大学農学部卒業、北海道大学大学院(修士課程)修了
平成 2年4月林務部主幹 (みどり対策)
平成 4年4月同 みどり対策室主幹
平成 5年4月同 林政課長補佐
平成 7年6月上川支庁経済部長
平成 8年4月林務部森林整備課長
平成10年4月水産林務部林務林産課長
平成13年4月現職
北海道には、面積の71%に相当する558万ヘクタールの豊かな森林があります。森林は、水資源のかん養や環境の保全、木材の生産など、道民の暮らしと密接な関わりをもつ多様な機能を有しており、このような森林に対する道民の期待や関心が多様化・高度化しています。
このため、森林の機能が持続的に発揮されるよう、将来にわたって適切に森林を整備し、保全していくことが求められています。
治山事業は、森林の維持・造成を通じ、山崩れや土石流などの山地災害から地域住民の生命や財産を守るとともに、水資源の確保、生活環境の保全・形成など重要な役割を果たしています。
道においては、第九次治山事業七箇年計画(平成9〜15年度)に基づき、災害に強い安全な地域づくりや水源地域の機能強化、さらには豊かな環境づくりを目的として、荒廃地等における治山施設の設置やダム上流域等で水源かん養機能を高度に発揮させるための森林の整備等を計画的に進めています。
また、近年、山地災害が多発している状況のもと、山地防災体制の整備・強化を図ることを目的として、「山地防災ヘルパー」を活用した情報収集などソフト対策の充実にも努めているところです。
昨年3月、23年ぶりに有珠山が噴火しましたが、これに伴って周辺の治山施設や森林を合わせて約34億円の被害が発生しました。これに対して道では、平成12年度には、土石流等の新たな山地災害を防止するための災害関連緊急治山事業や地殻変動等により被災した治山施設の復旧整備を緊急に実施したほか、今年度からは、「火山地域防災機能強化総合治山事業」により、土石流等の二次災害の防止対策等を集中的、総合的に実施していくこととしています。
林道は、効率的な林業経営や森林のもつ公益的機能を高度に発揮するための森林施業を進めるうえで基幹となる施設であるとともに、農山村地域の振興にも大きな役割を担っています。
さらに近年は、森林のもつ生活環境保全機能や保健文化機能に対する道民の要望が高まり、森林や森林レクリエーション施設等へのアクセスなど、林道利用の多目的化が進んでいます。
道では、地域森林計画に基づき、関係市町村の要望なども踏まえながら、森林の適切な整備や保全に必要な林道の開設・改良を進めるとともに、林業生産性の向上や農山村の良好な生活環境の保全・創出を図るため、林道等の生産基盤の整備と一体的に生活環境基盤を整備する林業地域総合整備事業などを進めています。
また、森林に対するニーズの変化を踏まえ、今年度の道単独新規事業として、森林レクリエーション等に利用されている既設林道を対象として、入林者の通行の安全確保や環境保全機能の向上を図るための改良を行う「林道周辺環境整備事業」を創設しています。
治山・林道工事においては、自然環境への配慮や森林資源の循環利用を進める観点から、これまでカラマツをはじめとする間伐材の利用を進めてきており、健全で機能の高い森林を育成するために、道が平成12年度から進めている「緊急間伐総合対策」の中で、農政部、建設部及び水産林務部の三部の連携によって道が発注する公共土木工事等における間伐材の利用拡大を図る取組を進めています。
この取組では、治山・林道、河川、公園整備等の工事のほか、農業分野においても暗渠疎水材(木材チップ)への利用促進に努めており、12年度の利用実績は前年度の1.3倍に当たる11万7千Fとなりました。今後も、資材・製品の供給体制の整備や地域における関係機関の連携強化を進め、一層の利用拡大に努めていくこととしています。
国では本年6月、いわゆる「骨太の方針」を閣議決定しましたが、その中で、効果と効率を追求する新世紀型の社会資本整備に向けて、真に必要とされる社会資本を重点的に整備していくことが重要であるとしており、公共事業の分野においてもこれまで以上に「効果と効率」を追求する事業執行が求められることになります。
道としましても、関係業界の皆さんや国・市町村等との連携を一層強めながら、関連施策の重点的かつ効率的な推進に努め、森林に対する道民の期待に応えていきたいと考えています。

北海道民有林治山コンクールとは
北海道民有林治山工事コンクールは、社団法人北海道治山協会の主催、北海道の後援、社団法人北海道森林土木建設業協会の協賛で毎年行われている、治山工事の技術を競う大会だ。
道土の大半を占める森林の公益的機能の強化を図り、治山工事の発展と施工技術の一層の向上に資することが目的。一般治山工事の部と木材使用工事の部が設けられ、二部門に分けて実施される。
選考対象となる工事は、支庁などの推薦によりエントリーされ、北海道治山協会及び北海道水産林務部の役職員で構成される審査委員会及び審査幹事会によって審査される。一般治山工事の審査ポイントは、次の通り。
●治山施設の計量(寸法)、品質・外観などの仕上がり。
●工事行程などの施工管理、労働安全。
●工事規模や地形などの施工条件など
これらのポイントについて、推薦者から提出された推薦書などの書類、写真帳、図面などにより優秀度などを判断する。
優秀な工事は北海道知事等による表彰を受ける。一般治山工事の部は北海道知事表彰3点以内、社団法人北海道治山協会長表彰3点以内。木材使用工事の部は、同協会長表彰3点以内で表彰される。


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