建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2001年11月号〉

寄稿

世界に誇る「琵琶湖」の水質保全 事業を開始してから30周年

日本下水道事業団大阪支社 琵琶湖工事事務所長 中山 繁

中山 繁 なかやま・しげる
昭和21年11月2日生まれ
昭和46年 滋賀県採用
土木部下水道計画課
同下水道建設課
日本下水道事業団琵琶湖工事事務所
滋賀県湖南中部流域下水道事務所
滋賀県下水道公社水質係長
滋賀県土木部都市計画課専門員
滋賀県大津土木事務所管理課長
財団法人 琵琶湖・淀川水質保全機構・水質浄化共同実験センター所長
滋賀県琵琶湖環境部下水道建設課参事
平成13年4月現職
1.滋賀県と日本下水道事業団について
滋賀県における日本下水道事業団の事業活動は、下水道事業センター時代の昭和48年から続いています。当時、琵琶湖の富栄養化を防止するための琵琶湖流域下水道で採用すべき三次処理(現在の高度処理)方法を、大津終末処哩場の一隅に実験プラントにて調査し、以来、滋賀県の下水処理施設の設計だけでなく、日本の下水高度処理技術の発展に寄与してきました。
昭和53年には琵琶湖流域下水道湖南中部浄化センターの建設に着手し、昭和57年3月に日本で初めて窒素とリンを除去する本格的な高度処理を採用した処理場として完成させました。その後も、湖南中部浄化センターの増設、湖西浄化センター、東北部浄化センター、高島浄化センターの流域4処理区の設計、施工を手掛けるとともに、近江八幡市の沖島浄化センター、志賀町南小松浄化センター(フレックスプラン)、朽木村朽木浄化センター、そして土山町オー・デュ・ブールと大津市を除く4個所の公共下水道浄化センターの計画、設計施工に参画し、現在すべての処理場が供用を開始し、順調に運転を行っています。
平成13年度の状況は、滋賀県から湖南中部浄化センター、湖西浄化センター、および東北部浄化センターの増設工事を受託しているほか、土山町からオー・デュ・ブールの場内整備工事を受託しています。
浄化センターの建設以外にも、委託団体の要請に応えるため、「活性汚泥循環変法」、「オキシデーションディッチ法(od法)」、および「単槽式嫌気好気活性汚泥法(ツービート法)」の開発・導入に携わってきました。現在は、超高度処理として「ステップ流入式多段硝化脱窒法」、「オゾン・生物活性炭処理法」や、下水汚泥炭化処理システムの開発・導入など、滋賀県の下水道事業の推進に貢献しつつ、全国に誇れる技術と研究水準を維持してきました。
2.「琵琶湖流域下水道」の現状と展望
「琵琶湖流域下水道」は、昭和46年度に事業を開始して以来、今年度で記念すべき30周年となります。それにあわせて、滋賀県の下水道普及率は全国平均を上回り、平成12年度末では64.5%に達しました。
湘南中部浄化センターが供用開始される直前の昭和56年度末で下水道普及率が僅か4.8%という事実を考えると、目覚しい整備が行われてきたことがわかります。と同時に、単なる普及率だけの問題ではなく、処理技術の面においても日本で初めて実用レベルで“窒素”と“リン”を除去する高度処理を採用したこと事からも分かるとおり、全国的な下水道の高度処理技術の発展に先駆的な役割を果たしてきました。
滋賀県では、平成11年度に「琵琶湖総合保全整備計画(マザーレイク21計画)」を策定しました。この中で、下水道を水質保全の重点事業と位置づけ、今後は従来の高度処哩にとどまることなく、cod、窒素、リンの負荷を更に削減するため、超高度処理の事業を推進していくとともに、ノンポイント汚濁負荷を削減することも念頭に置きながら、市街地からの初期雨水対策を進めています。
滋賀県では、下水道類似施設を含む平成22年度「汚水処理施設整備率」の目標を100%、下水道では85%と設定しており、今後も下水道の整備を積極的に進めていく予定です。
3.おわりに
今年の11月には滋賀県において、「湖沼をめぐる命といとなみへのパートナーシップ〜地味淡水資源の保全と回復の実現に向けて」をテーマに、第9回世界湖沼会議が開催される予定です。琵琶湖の流域は、120万人を超える人口とその社会経済活動を抱えていることにより、汚濁が進行してもおかしくない状況にあります。にもかかわらず、下水道によって琵琶湖に流入する汚濁負荷量を大幅に削減することでき、今もなお、琵琶湖の水質を良好に保っていられるのです。このことを広く世界に訴える良い機会だと考え、準備を進めているところです。
本事務所では、これからも、日本の下水道の一翼をリードしていけるよう、新たな時代の要請を考慮しながら、新しい技術を導入し、経済的で、委託団体にとって維持管理のしやすい施設の建設と運営のため滋賀県と協力しながら、ともに努力していきたいと考えています。

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