〈建設グラフ1999年11月号〉

寄稿

次世代下水道の事業展開について

大阪府土木部 副理事 兼下水道課長 中本正明 氏

中本正明
昭和19年5月26日生まれ
昭和42年広島大学卒
昭和42年大阪府土木部計画課
昭和52年4月土木総務課主査
昭和61年4月都市整備局交通政策課主幹
平成 3年5月りんくうタウン整備事務所長
平成 5年4月南部流域下水道事務所長
平成 8年4月企画調整部空港対策室総括参事
平成 9年4月企画調整部空港対策室課長
平成10年4月土木部下水道課長
平成11年5月現職

はじめに
大阪府では、44市町村の全てにおいて下水道事業を実施しており、平成10年度末の大阪府全体の下水道普及率は80.5%(大阪市除く72.4%)と、はじめて80%を上回りました。
また、良好で快適な環境が享受できる 環境都市・大阪を目指し、「下水道は安全で快適な生活環境を創造するとともに、河川や海域などの水環境を守る重要な都市基盤施設である」という認識に立ち、単に下水を処理して水を浄化するというのではなく、次世代に向けて様々な事業展開を行っています。
下水道の高度処理化
府内の流域下水道のうち、初めて高度処理を実施したのは、平成元年度に供用開始した淀川左岸流域下水道渚処理場でした。
その処理方式は、従来のBODとSSだけでなく、淀川支川に暫定放流していることから水道の浄化処理に関わるアンモニア性窒素を除去対象としており、放流水質の均等化を図るため、標準活性汚泥法に加えて「急速砂ろ過+曝気付き礫間接触酸化法+安定池」としました。
また、閉鎖性水域である大阪湾の水質浄化を図るため、流域下水道の水処理施設の新設・増設にあたっては、砂ろ過施設の設置を行うとともに、窒素・リン除去が可能な高度処理を採用することとしています。現在、南大阪湾岸流域下水道南部処理場外6処理場で一部処理を実施しており、2処理場で建設中です。
今後、寝屋川流域下水道鴻池処理場など用地に制約があるところについては、コンパクトな窒素・リン除去と砂ろ過施設の採用など、個々の処理場の状況に応じ対応可能な方法で高度処理を推進していきたいと考えています。

下水道の高付加価値化(リサイクル)
大阪府では、リサイクル下水道の推進を今後の重要な施策と位置づけ、下水道が持つ資源の積極的な利用(高付加価値化)を図っています。
汚泥の再利用については、安威川流域下水道中央処理場において、下水汚泥の溶融スラグを粒度調整したものを「スラグストーン」の名称で建設資材として供給している他、淀川右岸流域下水道高槻処理場でも灰溶融設備を建設し、スラグを供給しています。また大和川下流南部流域下水道狭山処理場では、下水汚泥焼却灰を100%原料とした焼成レンガ「アシュレン」の供給を行っています。
今後の展開としては、現在実施中の自家処理に加え、民間の技術とノウハウとを活用した下水汚泥資源化に関する共同研究を昨年度より実施します。
新技術の開発と併せて民間主導による社会資本の整備の可能性を考慮しながら、民間事業者への原料として汚泥を供給し、資源化を図るシステムの導入などその実用化に向けた具体的な検討をしていきたいと考えています。
一方、処理水については、都市における貴重な水資源として見直されてきていることから、大阪府ではかねてより実施している植樹灌水や散水用水等への処理水の利用をさらに進めていきます。また、緊急時の水需要にも対応可能とするため、処理水供給施設として、愛称「q水くん」を寝屋川南部流域下水道川俣処理場において平成8年5月より供用開始し、現在11処理場において供用しています。
このような雑用水としての利用はもとより、豊中市の新豊島川や摂津市ガランド水路などで、せせらぎ水等、修景用水として再利用しています。
今後は、これらに加え新たな水環境創出のため、河川の維持用水や浄化用水、流水が枯渇したせせらぎの復活に下水処理水を積極的に再利用していきたいと考えています。

おわりに
このように、大阪府では、下水処理場の高度処理化やリサイクル事業等に積極的に取組んでおります。来るべき21世紀に向けて、下水道に求められている多種多様な住民ニーズに応えるべく、今後とも、多方面にわたる下水道事業の推進に積極的に取り組んでまいりますので、関係各位におかれましては、より一層のご支援ご協力を賜りますようお願い申し上げます。

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