建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2001年11月号〉

寄稿

無事故・無災害継続2,000日の達成をめざして

日本下水道事業団東京支社 東京工事事務所長 飯島 進 氏

飯島 進 いいじま・すすむ
昭和21年8月24日東京都出身、中央大学理工学部卒
昭和45年東京都下水道局採用
下水道局流城下水道本部工事担当係長
同計画部事業計画課施設事業計画担当係長
同流域下水道本部計画課事業計画係長
同流域下水道本部施設管理課課長補佐を経て
平成13年7月現職

東京工事事務所は、建設工事にあたっての最重点目標項目として、工事事故の撲滅を掲げてきている。公共工事に対するアゲインストの風が吹く中で、都民からの信頼の確保をめざして建設工事を行っていくことが最重要課題である。
とりわけ、日本下水道事業団は地方公共団体からの要請に基づき、下水道施設の建設等を行っており、全国の下水道整備を促進し、生活環境の改善・公共用水域の水質改善に寄与していく役割を担っている。したがって、事業団の工事で建設労働災害が発生した場合、それ以降の工事の進捗に支障をきたすとともに、委託団体にも多大な迷惑を掛け、それまで築き上げてきた事業団と委託団体との信頼関係が揺るぎ、ひいては事業団の社会的信用が失われる結果となりかねない。
こうした点に鑑み、平成10年4月の現場搬入口での歩行者を巻き込んだ交通死亡事故の発生を契機に、これまで定例化した安全推進協議会の充実、毎月1回の現場安全パトロールの実施、事故事例の勉強会を行うなど関係者全体が共有化した情報・教訓を持ち請負者と一丸となって、工事監督業務の中で安全管理の徹底と安全意識の高揚を図ってきた。その成果として、当事務所では現在まで1,256日(9月末)の無事故・無災害を継続している。
公共工事に求められている社会的責任を都民へ果たしていくためには、周辺住民との信頼関係のもとでの建設工事に対する理解と協力が是非とも必要である。この信頼関係を持続するためには、今後とも更なる無事故・無災害を継続していく必要があり、工事事故撲滅のための当事務所の工事安全目標として、「無事故・無災害継続2,000日達成」を新目標として掲げた。2,000日目である平成15年10月を無事迎える事が出来るよう、各工事の安全確認の徹底、関係者の安全意識の高揚をより一層充実させていくつもりである。

事務所工事概要
東京工事事務所は、東京都内の下水道事業を実施するため、昭和50年に事業団の発足とともに設置された。現在は、東京都区部の東品川ポンプ所と勝島ポンプ所、
町田市の町田下水処理場と鶴見川クリーンセンター、八王子市の北野処理場から建設工事を受託しており、所管区域も広いため町田市と八王子市の2ヶ所に出張所を設け建設に取り組んでいる。
このうち、都内各所で起きている浸水被害の解消と川や運河・海の汚濁防止を図るため鋭意建設工事をおこなっている東品川ポンプ所と勝島ポンプ所の工事概要を紹介する。
[東品川ポンプ所]
当ポンプ所は、目黒川下流の品川区、港区および目黒区の一部区域約250haの浸水防止及び東京湾や運河の水質汚濁防止対策としての雨水貯留池を併設した施設である。ポンプ所の設計にあたっては建設コスト縮減に力を入れ、従来の自然流下方式によるとポンプ所の深さが大きくなることから、建設費用・維持管理費用の縮減を図るため、長大伏越し型を採用することによって沈砂池ポンプ棟本体を約10m浅くすることができた。
平成8年度に建設に着手し、第一期工事として流入立坑部分をニューマチックケーソン工法にて施工した。続いて、ポンプ所本体の山留工(smw工法)と流入渠工事(シールド工法・仕上がり径3,750mm)を施工し、現在は掘削工事を終え、下部躯体の底盤・b1f途中までのコンクリート打設を行っている。
[勝島ポンプ所]
当ポンプ所は、目黒川下流の品川区及び立会川下流の品川区の一部区域約200haの浸水防止を図る雨水ポンプ棟と、東京湾や運河・川の汚濁防止対策としての「合流式下水道の改善対策施設」としての汚水ポンプ棟の二つの機能をもっている。
ポンプ所の建設にあたっては、平成8年より勝島運河の一部を埋立て、平成12年4月より雨水ポンプ棟の工事に着手した。現在、雨水ポンプ棟ではポンプ井部分の連続地中壁工事が完了し、後沈砂池部の山留工(smw工法)を施工中である。汚水ポンプ棟については、今年4月に契約し、10月よりポンプ井部分の連続地中壁工事に着手するところである。
当ポンプ所の周辺施工環境は、東京から羽田空港へのアクセス手段としての首都高速羽田線が建設用地を分断し、また東京モノレールが現場を近接通過している。施工にあたっては、近接構造物への安全確保のため、工事計測管理に万全な配慮したうえでの施工が求められている。


HOME