建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2001年11月号〉

寄稿

「呉市・広処理場」の受託から開設し、広島県内の市町村を支援し続けて満25年

日本下水道事業団大阪支社 広島工事事務所長 藤岡 謙治 氏

藤岡 謙治 ふじおか・けんじ
生年月日 昭和24年10月10日
出身地 広島県広島市出身
昭和50年 立命館大学大学院理工学研究科修了
昭和50年 広島県採用
昭和50年 都市計画事務所下水道課勤務
昭和62年 廿日市土木建築事務所主任
平成元年 熊野町都市整備課長補佐
平成 2年 土木建築部都市局下水道課主任
平成 6年 太田川流域下水道事務所工務課第一係長
平成 8年 土木建築部都市局公園下水道課流域下水道係長
平成 9年 土木建築部都市局公園下水道課主査(兼)流域下水道係長
平成11年 日本下水道事業団広島工事事務所長
はじめに
広島工事事務所の管内である広島県は、面積約8,500km2で、人口は約289万人であり、中国・四国地方の中心に位置し、行政・経済面などさまざまな機能が集積している。自然は、風光明媚な瀬戸内海に面し、北にはなだらかな中国山地を抱いて、温暖な気候に恵まれている。豊かな自然のなかで、夏のマリーンレジャーから冬のスキーまでさまざまなスポーツが楽しむことができるし、味覚もミカンからリンゴ、マツタケやカキなど全国の縮図ともいえるほどバラエティに富んでいる。
広島県の主な河川としては、太田川、江の川、芦田川、小瀬川、高梁川の水系がある。この中で流域面積が最も広いのは、江の川である。江の川の流域面積は、広島県域だけで約2,600km2ある。広島県は、瀬戸内海のイメージが強いと思われるが、実は、広島県のおおよそ3分の1は、江の川の流れとなって、島根県を貫き日本海へと流れ込んでいる。続いて流域面積の広いのは、太田川の約1,700km2、芦田川の約850km2となっている。
広島県の下水道
広島県の下水道事業は、まず、広島市が明治41年に着手し、続いて、軍都として栄えていた呉市が昭和18年に着手している。しかし、第二次世界大戦により壊滅的な被害を受けるとともに、戦後の都市再開発事業との関連により、新規に事業着手せざるを得ない状況となり、昭和26年に広島市、次いで昭和34年に呉市が再開している。また、昭和27年には福山市、昭和35年には大竹市で事業が始められており、現在、県下86市町村のうち59市町村において下水道事業が行われている。
広島県の人口普及率は、平成12年度末現在で57%と全国平均62%に比べ5ポイント下回っており、より一層の整備が望まれている。また、他の排水事業を含めると67%と、3人に2人は何らかの形で下水道の恩恵を受けることが可能となっている。県が今年から見直し作業に入っているが、平成8年度に作成された「広島県下水道適性処理構想」によると、農村集落排水事業など国土交通省関連でない事業によって、全ての排水整備計画を建てている市町村は18町村あり、現在、なんらかの形で供用している市町村43と着工済みの市町村6を加えると67となる。
下水道の計画が作成されているが未着手の市町村と、全く計画が立てられていない市町村を併せると、残りの市町村は19となっている。
広島工事事務所の紹介
広島工事事務所は、昭和50年(1975年)10月に、呉市の広処理場の受託により 「呉工事事務所」として呉市に開設され、同年12月には、広島県太田川流域下水道西部浄化センターの受託に伴い、広島市に移転し「広島工事事務所」に名称変更した。したがって、今年で満25年を迎えたことになる。
現在の事務所は、平成8年広島市中心部に移転されたものである。この25年間で県と35市町村併せて36の団体から事業を受託している。そのうち、処理場については43個所を受託し、うち37個所について既に供用開始しており、ポンプ場については8個所、うち5個所が完成済みである。
平成13年度の執行体制は、土木4名、建築2名、機械2名、電気2名、事務2名と私を加えて13名である。
13年度の工事内容
今年度の受託事業は、広島市を始め、21団体から24個所を受託する予定である。
受託内容は、処理場が19個所、内訳は新設個所が10個所、増設個所は9個所となっており、ポンプ場はすべて新設で3個所、幹線管渠が2個所の予定である。
総事業費は、年割額にして100億円程度になる見込みである。
現在、工事中の処理場のうち、湯来町、三良坂町、吉舎町、東城町の4個所が来年供用開始を迎えることとなっており、急ピッチで仕上げを行っているところである。三良坂町、吉舎町については、既に、灰塚ダム関連の処理場を供用しており、町にとって2個所目の処理場である。
処理場は、行政規模が小さくなるに連れ、処理区域面積が小さくなっており、処理人口、処理水量が減少している。したがって処理方式も標準活性汚泥法の個所よりオキシデーションディッチ法の個所数が多くなっており、podの採用もかなり多くなっている。
また、負荷量の変動が大きい処理場では長時間エアレーション法を採用したり、敷地面積の確保が十分でなかった処理場などでは回分式活性汚泥法を採用するなど処理方法に工夫がみられバラエティに富んでいる。汚泥の脱水方法についても多重円板型スクリュープレスの採用が多くなってきているなど技術革新にも即応している。
また、近年は建築デザインとして特徴あるものが多くなっている。昨年度供用した三次市の三次水質管理センターは、国道54号のそばで広島市など南からの玄関口にもあたり、西条川、馬洗川、江の川の合流地点と立地条件として市のシンボル的な面もあって、「蔵造り」としている。
また、今年供用した吉田町は、毛利元就の本拠地であったところで、吉田浄化センターは城郭をイメージしている。同じく今年供用した閑静な農村地帯である吉和村、筒賀村、御調町では、シンプルなデザインでまとめており、瀬戸内海に浮かぶ蒲刈町の赤石浄化センターは、島嶼美を考慮して静かな佇まいを見せている。一昨年の供用であるが「公園と大学のある街」をキャッチフレーズとしている庄原市の庄原浄化センターは、県立大学のイメージからシックなものとなっているなど従来の処理場のイメージからは遠く、多彩なものとなっている。
工事の管理
下水道事業団では、各工事現場に常駐は行っておらず、巡回による管理監督を行っている。安全管理としては、年2回の安全推進協議会を開催しており、労働基準監督署の講演やビデオの上映、安全パトロールなど多彩なメニューを大阪支社と一体になって安全確保に務めている。また、土木、建築、機械、電気工事、それぞれの工事調整のため、定期的な工程会議を開くとともに随時各担当者が現場管理に行き、現場代理人との交渉を行っている。日々の管理の外に、委託団体に引き渡す前に、総合点検、総合試運転立会、完成検査と3段階のチェック機構を持っており、それぞれ異なった目で、異なった立場からチェックを行っている。総合点検では、建築物、構造物、設備などの完成度のチェック、総合試運転では、各機器の連携運転による機能テスト、維持管理上の不具合の発見、プラントの機能確認などを行い、工事が完成すると別に任命された検査員により厳正な検査を経て委託団体へ引き渡しを行っている。
また、アフターサービスとして施設を引き渡し後、2年間に2回、施設の具合や維持管理の状況などの調査点検を実施し、技術指導も併せて行っている。
終わりに
県内の下水道事業の整備が進むとともに、その中心は瀬戸内海沿岸の都市部から、山間部や島嶼部の中小市町村へと重心を移しつつあり、事業個所も事務所から遠方となりつつある。13年度事業個所は、東は東城町から西は県境を超えて島根県六日市町、南は倉橋町と高速道路を利用しても、移動に1時間30分から2時間近くかかる場所が多くなっている。
近年の事業量の増加に比較して執行体制が追随しているとは言い難く残業時間も多くなっており職員の健康や、また、交通事故などの心配もあるが、事業の効率的な執行に務めると共に、少しでも委託団体に喜んで頂ける施設をお渡しできるよう、職員一同、日々頑張っている次第である。 

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