建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2001年10月号〉

寄稿

時代の要請に応える都営住宅建設事業の展開

東京都東部住宅建設事務所長 石井 一夫

石井 一夫 いしい・かずお
昭和23年1月25日生まれ、東京都出身、早稲田大学法学部卒業
昭和51年東京都教育庁入庁
昭和59年墨田区産業経済課調査係長
昭和61年経済企画庁総合研究開発機構研究員
平成 5年江東区職員課長
平成10年東京都住宅局住宅政策室長
平成13年現職

東京都東部住宅建設事務所は、東京都特別区(23区)のエリアを管轄区域とし、管理・折衝・開発・建設・設備の5課、職員113名の体制で、都営住宅の建設事業を推進している。
平成12年度から、土地の手当を前提とした「新規建設」は、都の厳しい財政状況等のため停止しており、老朽化した既存の都営住宅の建て替えを専らに進めている。
管内に、900団地、17万戸の都営住宅を抱えており、その敷地は、1,000ヘクタールと、中央区や台東区、荒川区の面積に匹敵する。
23区は、大雑把に言うと、地形からも、また、文化面からも、大きく下町と山の手に分かれる。それに、日本橋、銀座、赤坂、六本木、青山、原宿、渋谷、新宿、池袋、上野、浅草、向島、深川、台場など、枚挙にいとまのないほど多くの街が個性を競い合い、東京の多様性を生み出し、東京の活力と魅力を作り出している。
都営住宅も、青山通り、いわゆる「246」の一歩裏側から、23区の周辺部の比較的オープンスペースに恵まれた地域に至るまで、23区内に広く分布しており、建て替え事業の進め方も立地環境の多様性を反映することとなる。
今年度、本事務所では、29件の建て替え工事を、また、16件の建て替え計画を進めているが、特に、都心部の都営住宅の建て替えにあたっては、都営住宅敷地の有効活用の観点から、「都市再生」の一環として敷地内に、民間活力により、都営住宅や民間住宅、商業施設などから成る都市コンプレックスの形成を目指している。
また、管内周辺部の団地などでも、本格的な高齢社会に対応するため福祉施策との連携を図り、地元自治体の意向を受け、特別養護老人ホームや在宅サービスセンターなどの社会福祉施設の併設を進めている。
いずれにしろ、都営住宅の建て替えにあたっては、単に都営住宅を再生産するのではなく、時代が求める付加価値をいかに生み出していくのか、このような観点から
事業を進めているところである。
また、建て替え工事にあたって、廃棄物の減量、資源の再利用を進めるため、モデル団地を指定して資源のリサイクル、また、ゼロ・エミッションの実現を目指しているところでもある。
なお、本年6月、本事務所が手がけた「都営住宅墨田一丁目第2アパート工事」が、全日本建設技術協会より「全建賞」を受けた。設計、施工に携わった方々を始め、関係各位に対し、この場を借りて、心からお礼を申し上げる。


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