〈建設グラフ2000年8月号〉

寄稿

中央省庁再編と北海道開発行政

北海道開発庁総務課長 矢野 進一 氏

矢野進一 やの・しんいち
一橋大学社会学部卒
昭和48年 4月 建設省入省
平成 4年 7月 建設省建設経済局建設振興課労働資材対策室長
平成 5年10月 内閣官房内閣審議官(内閣官房内閣内政審議室)
平成 7年 6月 建設省住宅局住宅政策課長
平成 8年 7月 建設省関東地方建設局総務部長
平成10年 6月 建設省都市局都市総務課長
平成11年 7月 北海道開発庁総務課長
はじめに
明治2年、明治政府が開拓使を設置して以来、およそ130年にわたり、北海道の開発は一貫して国によって積極的に進められてきました。特に、戦後は、北海道開発庁を設置し、北海道開発法に基づき6期にわたり北海道総合開発計画を策定し、その時々の国の課題の解決に寄与することを目的に、積極的な開発を行って参りました。
このような中、政府による中央省庁等の再編により、平成13年1月には戦後の北海道開発に中心的役割を担ってきた北海道開発庁は、国土交通省へと移行することとなりました。
本稿では、間近に迫った中央省庁再編と北海道開発行政についてご報告させていただきます。
1.現行の北海道開発行政
(1)北海道開発は、明治以来、国自らが国家的事業として、特別の体制で進められてきました。北海道開発行政の基本は、自然的・地理的、また、社会的・経済的に日本の他の地域と大きく異なる魅力をもち、我が国の発展に貢献することが期待される北海道を、いかに開発ないし保全するかということについて、国の視点と地域の視点との整合性を図りつつ、方針を決定し、官民の協力の下に、その実現を図ることにある、と言うことができます。
(2)現行の北海道開発体制は、北海道総合開発計画の調査・立案から、同計画に基づく事業の実施までを一元的な組織で担当しており、本州等では農林水産省、運輸省、建設省の地方支分部局が個別に実施している国の直轄公共事業を総合的・一元的に実施しているなど、本州等に比べて地域開発体制としての総合性、効率性が高められています。
(3)北海道総合開発が特別の体制によって推進されてきたことにより、北海道の社会資本の整備は着実に進めら    れてきましたが、社会資本の整備水準は本州等と比べて未だ十分とはいえない状況でありなお整備は必要です。そして何よりも北海道は、我が国の長期的な発展に貢献が期待される地域であることから、北海道の総合的な開発は、今後一層重要性を増すものと考えられます。
2.行政改革の必要性
戦後50年を経た我が国の行政について、肥大化・硬直化や縦割り行政の弊害といった問題が指摘されている中、政府においては平成8年11月に行政改革会議(会長:内閣総理大臣)を設置、@21世紀における国家機能の在り方、Aそれを踏まえた中央省庁の再編の在り方、B官邸機能の強化のための具体的方策について、それぞれ検討を加え、平成9年12月3日に最終報告を取りまとめました。この最終報告の内容は「中央省庁等改革基本法」として法案化され、平成10年の通常国会で成立、同年6月に公布、施行されました。
中央省庁等の改革は、主に次の3つの項目から成っています。
@内閣機能の強化
A現行の一府二十二省庁を一府十二省庁へ移行させる中央省庁等の再編
B独立行政法人制度の創設や各省庁の局・課及び定員の削減等の行政のスリム化
3.中央省庁等再編における北海道開発行政の位置付け
北海道の開発は、引き続き国により組織的に進められることとなっていますが、北海道開発に中心的な役割を果たしてきた北海道開発庁については、中央省庁等の改革の方向にしたがって再編されることとなりました。
具体的には、中央省庁等改革基本法の中で次のとおり規定されています。
●国土交通省は、建設省、運輸省、国土庁及び北海道開発庁を母体に設置するものとする。
●「北海道開発」は国土交通省の主要な行政機能の一つとする。
●国土交通省は、北海道開発庁の任務及び行政機能を引き継ぐものとする。
●北海道開発庁の関係予算は、国土交通省に従前のとおり一括して計上するものとする。
●北海道開発局は、国土交通省に置くものとする(農林水産省が所掌する事業については、従前のとおり、同省に所要の予算の移替え又は繰入れをするとともに、農林水産大臣のみが北海道開発局長を指揮監督する。)
4.国土交通省に於ける北海道開発行政の位置づけ
(1)平成11年7月には「国土交通省設置法」をはじめとする「中央省庁等改革関係法」が国会で成立しました。
  「国土交通省設置法」では、国土交通省が北海道開発庁の任務・機能を継承するという「中央省庁等改革基本法」の趣旨を踏まえ、「首都圏その他の各大都市圏、東北地方その他の各地方及び北海道のそれぞれの整備及び開発に関する総合的な政策の企画及び立案並びに推進に関すること」、「北海道総合開発計画に基づく事業に関する関係行政機関の経費の見積りの方針の調整及び北海道総合開発計画に基づく公共事業に開する関係行政機関の経費の配分計画に関すること」といった北海道開発の推進に関する事項が規定されました。
(2)また、「国土交通省設置法」では、国土交通省の地方支分部局として、従前どおり農業部門を含めた総合的な現地機関として北海道開発局を設置し、直轄事業の実施に加え、補助金の交付のほか、都市計画、建設業の振興等国土交通省が所掌する事務を新たに分掌する旨規定されました。
(3)国土交通省内の具体的な組織については、本省に北海道開発を担当する北海道局が置かれることとなりました。現地の北海道開発局には、新規業務に対応するための新たな組織として、事業振興部が設置され、既存の各部においても新たな補助関係の事務を担当する課が新設されることとなっています。なお、従来の北海道開発局長官房は開発監理部へと名称が変更されます。
(4)一方、国土交通省設置法と同時に成立した「中央省庁等改革のための国の行政組織関係法律の整備等に開する法律」において、北海道開発審議会の機能は、国土交通省に置かれる国土審議会へ移管されることとなりました。
(5)また、北海道開発局の附属機関である開発土木研究所は、平成13年4月に独立行政法人に移行することとされており、設立に必要となる事項を定める「独立行政法人北海道開発土本研究所法」が平成11年12月国会で成立しました。
5.中央省庁再編後の北海道開発行政
国土交通省への移行に伴い、北海道開発行政は、北海道総合開発計画の策定から、計画に基づく事業の実施まで、補助事業を含め従来以上に一体的に施策を推進することが可能となります。
北海道開発庁の機能を引き継ぐ国土交通省北海道局は、この点に十分留意しつつ、新たな時代や多様化する国民ニーズに即応した社会資本整備、北海道の優位性を活かした新たな産業の振興、北海道の重要な産業である観光産業の振興等の北海道の活性化にとって必要な様々な施策の実施に当り、これまで以上に関係部局等との連携をすすめ、北海道開発予算の一括計上による総合調整機能をより一層発揮するなどにより、北海道の発展のため、さらに積極的に北海道の開発を進めていくことが期待されます。
結び(中央省庁再編に向けて)
平成13年1月には、北海道開発庁は、国土庁、運輸省及び建設省とともに国土交通省へと移行することとなっております。
一方、北海道経済は、一昨年の金融不況の影響から抜けきれず、さらに今般の有珠山の噴火による経済的被害が北海道経済に与える影響が懸念されるなど、非常に厳しい状況が統いています。
このような状況を踏まえ、有珠山対策をはじめとする当面の課題とともに、北海道が抱えてきた中長期的課題の解決への道筋をつけることについて検討すべく、北海道開発庁長官の私的懇談会「北海道活性化懇談会」(座長:瀬島龍三伊藤忠商事鞄チ別顧問)を設け、去る6月21日、有珠山対策、観光、産業振興、21世紀型の祉会資本整備の各分野において緊急に取るべき対策について報告書をいただいたところであります。
北海道開発庁では、この報告書の趣旨を受け止めて、北海道など地元開係者と一丸となって、有珠山の噴火など北海道が直面する問題に対処するとともに、2001年からの国土交通省発足に向けて、既存の省庁や施策の枠粗みにとらわれず、斬新かつ大胆な発想の下、北海道の自立に向けてこれまで以上に円滑に、かつ、効率的に北海道の開発を推進していきます。

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