建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2001年9月号〉

寄稿

東京都における鉛製給水管解消の取組みについて

東京都水道局営業部給水装置課長 伊藤 正三

はじめに

平成4年12月に厚生省(現厚生労働省)は、生涯にわたる連続的な摂取をしても人の健康に影響が生じない水準を基として安全性を十分考慮し、鉛濃度の水質基準を1リットル当たり0.1mg以下から、0.05mg以下に改訂した。また、この改定に際して、鉛濃度の一層の低減化を推進するため、おおむね10年後の長期的目標を1リットル当たり0.01mg以下にすべきとしている。
水道水への鉛の溶出は、給水管に使用している鉛製給水管からが考えられるが、東京都が、都内の給水栓でおこなっている水質検査では、水質基準(0.05mg/リットル以下)に十分適合している。

鉛製給水管の使用経過と対応
鉛管は、古くは古代ローマ時代の水道にも使用されていたといわれる。その後、日本を含む世界各国で使用されてきているが、東京都における鉛製給水管の使用経過は、明治31年12月の水道開始と同時に、給水管として鉛製給水管を採用してきたことに始まる。 しかし、昭和30年代以降、給水装置用材料として、管の接合が容易な硬質塩化ビニル管が普及しはじめたことに伴って、配水管からの給水管取り出し部分及びメータ前後を除いた部分での鉛製給水管の使用が減少した。平成4年11月には、既設の鉛製給水管の緊急修理以外使用を禁止し、さらに、平成7年3月31日には、全面使用禁止としている。
東京都は、漏水の原因の大部分を占めていた鉛製給水管の解消に向けて、昭和55年5月に、給水管取り出し部分から第一バルブまでの配管材料としてステンレス鋼管を指定した。給水管は、水道メータを除きお客さまの財産であり、お客さまが管理することとなっている。しかし、東京都は、昭和55年から漏水防止対策の一環として、老朽化した配水管布設替工事等に併せて、公道部の配水管取り出し部分からメータまでの給水管のステンレス化を局費により積極的に進めてきている。平成6年度には、ステンレス化の対象に私道部を含め、給水管が3本以上布設されている私道に配水管を布設し既設の鉛製給水管の解消を図るとともに、平成10年度からは、給水管2本の私道内布設鉛製給水管や、配水管から宅地内メータまでの鉛製給水管についても解消を図っている。平成11年度からは、乳幼児保育園、児童館、幼稚園、公園等の施設の鉛製給水管の取替えを優先的に実施してきているところである。
これまで公道部に埋設されている鉛製給水管については、配水管布設替及び漏水修理や道路管理者の舗装工事等にあわせて取り替え工事をおこなってきたが、平成12年度より平成14年度までの3ヵ年の計画で公道下の全ての鉛製給水管を解消すべくステンレス化の事業を進めており、平成12年度末現在のステンレス化率は約90%である。
これまで東京都は、お客さまに対して、「朝一番の水道水を使用する時」や「旅行などで長期間使用されなかった時」には、最初のバケツ一杯程度(約10リットル)の水を飲用以外の用途に使用することをお勧めするpr、鉛の水質基準についての説明、鉛製給水管使用の有無の問い合わせ先の紹介等を水道局の広報誌に掲載してきている。
また、お客さまから鉛製給水管使用有無の問合わせに対し、迅速に対応するため、平成12年度には、鉛製給水管使用状況の調査を実施した。この調査は、水道局が保管している宅地内の給水管図面約356万件の全数を対象とし、メータから蛇口までの間に鉛製給水管を使用しているお客さまを特定した。この結果、約68万件のお客さまが、図面上でメータから蛇口の間に鉛製給水管を使用していることが確認された。今後は、この結果を踏まえて、鉛製給水管を使用しているお客さまへの情報提供として、各々のお客さまに鉛製給水管使用延長、取り替えの検討のお願い、水道使用時の留意事項などについて早急にお知らせしていくこととした。
おわりに

東京の水道は、近代水道として発足以来100年を経過したが、その間、都民の生活と都市活動を支える重要な基幹施設として発展してきた。現在当局では、新世紀を迎え、「水道事業経営プラン2000」を策定し、新しい時代にふさわしい水道の実現を目指して事業を進めている。中でも、「生活に密着した水道サービス」という課題は、都民と水道との接点である給水設備に関するサービスを充実させ、都民の暮らしに一層の安心と豊かさをお届けすることを目標とする、最も重要な施策の一つである。
この施策を具体化するものとして、東京都は、公道下の鉛製給水管の解消を図って行くとともに、私道及び宅地内についても解消策を講じる。さらに、これまで行なってきた鉛溶出に関する調査や鉛抑制方法の検討などの鉛製給水管に関する調査を引き続き実施していくことにより、鉛製給水管の解消に向けた施策を積極的に取り組み、安全な水の供給に努力していく。


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