〈建設グラフ1999年9月号〉

寄稿

Corinsの紹介

Corins(工事実績情報サービス:Construction Records Information Service)

財団法人日本建設情報総合センター 研究第2部長 吉兼秀典 氏

吉兼 秀典 よしかね・ひでのり
昭和53年3月 東京大学土木工学科卒業
昭和53年4月 建設省入省
平成11年4月 現 職
はじめに(Jacicの紹介)

私ども(財)日本建設情報総合センター(Jacic)では、社会環境の変化に伴い、ますます複雑化・多様化する公共事業環境のもとで、建設サービスの向上が図られるよう、これまで蓄積した業務分析、システム構築、メンテナンス等のノウハウを活用しながら、建設分野の情報化を総合的に支援しています。
今回紹介いたします工事実績情報サービス(Corins)もその一つですが、その他にも測量調査設計業務実績サービス(tecris)、土木工事積算システム、gisなどの各種システムの研究、開発、運営を行っており、また、現在、建設分野で推進されている建設cals/ecにおいては、「建設cals/ecセンター」を設け、「cals/ec公共調達コンソーシアム」・「cadデータ交換標準開発コンソーシアム」を主宰するなど積極的に取り組んでいます。

Corinsの概要・経緯について

平成5年12月、公共工事の発注をめぐる不正行為の防止及び建設市場の国際化への対応を目的とした「公共工事の入札・契約制度の改革」に関する建議が、建設大臣の諮問機関である中央建設業審議会においてまとめられました。この改革は、公共工事の発注がそれまで指名競争入札を基本としていたものに対し、一般競争入札を基本とする発注方式へと大きく移行させるというもので、建議の冒頭にも述べられているように、入札・契約制度上“歴史的な改革”と位置づけられています。
公共工事の企業選定においては、各工事の地域性、特殊性、企業の技術的特性等を総合的に勘案評価するプロセスが必要となりますが、特に企業の実績・技術力評価に対しては、他の機関から発注された工事の実績をも合わせて評価する必要があり、前述の建議において、全国的規模での工事実績情報のデータベース構築及びその活用が求められました。Jacicにおいては、表−1に示すように中建審の建議に先立ち平成5年度から検討を開始し、建議を受けたのち短期間でCorinsが稼働できるよう、データの収集、システムの構築を進めてまいりました。
Jacicでは、全国の建設企業から寄せられる工事実績データの登録作業からデータベース管理、運営、建設企業及び発注機関に対する情報提供までを行っていますが、以下において登録及び活用に関して簡単に説明いたします。

表-1 Corins構築及び運用の経緯
平成5年5月 工事実績情報のデータベース化の検討開始
8月 データ収集の試行(関東地建管内の建設企業60社を対象)
11月 Corinsの名称決定
12月 中央建設業審議会の建議「公共工事に関する入札・契約制度の改革について」
平成6年1月 建設省直轄工事で、竣工時データのCorinsへの登録が義務付けされる。
3月 竣工時データの登録が開始される。
4月 国及び一部の地方自治体で、竣工時データのCorinsへの登録が義務づけされる
7〜10月 全ての都道府県・政令指定都市で、竣工時データのCorinsへの登録が義務付けされる。
10月 建設省でCorinsの活用が開始される。
     〃 Jacic-net上で、建設企業へのCorinsデータ提供サービスが開始される。
平成7年4月 受注時・途中変更時データの登録が開始される。
     〃 都道府県等の発注機関にオンラインによる検索サービスを開始する。
平成9年4月 全国で登録対象範囲が拡大される。(5,000万円以上→2,500万円以上)
6月 オンラインによる登録が開始される。
平成10年2月 中央建設業審議会の建議「建設市場の構造変化に対応した今後の建設業の目指すべき方向について」
9月 WEB版検索システムの提供が開始される。

Corinsへの登録について

現在、Corinsへの登録対象となる工事は、公共工事の発注機関から発注される2,500万円以上の公共建設工事です。各発注機関はそのような工事を発注する際、仕様書等で、その工事がCorinsへの登録が必要である旨を受注企業へ通知します。受注した企業は、仕様書に基づいて、Corinsへの登録データを作成し、Jacicへ登録します。具体的な登録の流れを図−1に示します。


一つの工事に対する登録は工事受注時と竣工時の2回は最低限必要となります。また、変更契約が行われた場合や工事を担当する技術者が変更となった場合には途中変更時登録がそれぞれ必要となります。
Corinsへは平成2年度からの工事データが収集されており、平成11年4月時点での登録数は約62万件に達しています。(表-2)

Corinsに登録されるデータには、その工事の発注金額、発注機関、受注企業、工期、従事技術者、技術データ等があります。具体例を表-3に示します。


表-3 Corinsデータ項目
《 一般データ項目 》
0 受注時登録の有無 13 工事の分野
1 受注時登録番号 14 工事の種類
途中変更年月日 15 工種、工法型式等番号
2 登録義務の有無 16 施行場所
3 工事件名 17 施行地域
4 路線水系名 18 夜間工事の有無
5 発注者コード 19 工期
6 発注者名 20 技術者名・区分
7 担当事務所名 21 備考欄
8 担当者名 22 JV構成業者
9 受注形態
10 請負業者名
11 大臣・知事許可番号
12 請負金額

《 技術データ項目 》
77工種、131工法型式毎に作成。
(項目例)
工  種: トンネル工事
工法型式: 密閉型シールド
収集項目: 
1 地盤
 1)切羽土質
 2)土質条件
 3)最大切羽水頭
2 種別
3 構造規模
 1)施工延長  6)最小土被り/D
 2)全延長  7)平面最小曲率半径
 3)シールド外径  8)R/D
 4)断面形状  9)縦断勾配
 5)最小土被り
4 施工
 1)湧水量  3)補助工法
 2)施工の自動化
5 新工法、新技術

Corinsの活用について

発注機関に対するCorinsの情報提供サービスは現在、2種類のシステムで運営されています。1つはCorinsデータそのものを発注機関側へ提供し、発注機関内にデータベース自体を構築してもらう方式です(直接提供方式)。2つめは、Jacic内に構築されているデータベースに対して、電話回線経由でアクセスしてもらい必要な情報を検索し、取り出してもらう方式です(検索提供方式)。これらのサービスはJacicが単独で運営していますが、もう一つ、Jacicと財団法人建設業技術者センター(ce財団)とが、各々の保有するデータを組み合わせ、協同で提供するサービスを運営しています。こちらの運営はJacic-ce協議会という体制で実施しており、Jacicが保有する工事実績情報とce財団が保有する4つの情報(管理技術者資格者証情報、建設業許可情報、経営事項審査情報、前払金保証契約情報)を併せて示すことにより、不良不適格業者の排除を進めるために必要な情報が提供されます。→「発注者支援データベースシステム(jcis)」
平成11年7月時点でCorinsデータの提供を受け、企業選定時に活用している機関数は表−4のとおりです。
また、受注企業に対するCorins情報は、Jacicが運営している会員制ネットワーク(Jacic-net)上で提供しており、自社実績や全国の登録工事の一覧等が入手可能です。

表-4 Corins活用状況 平成11年7月現在

直接提供 検索提供 合  計
国の機関・公団等 17 7 24
-10 -10
都道府県・政令市 9 9 18
-31 -31
市 区 町 村 等 1 1 2
-4 -4
合     計 27 62 89
※カッコ内の数値は、Jacicと(財)建設業技術者センターとが協同で運営しているシステム(発注者支援データベースシステム)を導入している機関数を表す。

Corinsを取り巻く状勢と今後について

昨年2月に公表された中央建設業審議会の建議や、今年の7月に建設省より公表された「建設産業再生プログラム」等に示されているように、財政構造改革に絡む公共工事のコスト縮減化の推進、建設市場の本格的な国際化への対応など大きな構造変化に直面している日本の建設市場においては、技術と経営に優れた企業が伸びられるという透明で競争性の高い市場環境の整備が着々と進められています。
行政サイドに対しても種々の課題が示されています。その一つとして、前述した発注者支援データベースシステム等を積極的に活用し、建設業法に定められている技術者専任制度の徹底を図り、市場の競争性向上の妨げとなる不良不適格業者の排除をより一層押し進めていく必要性が挙げられています。また、技術と経営に優れた企業を適正に評価するため、各工事の成績評価や企業評価の手法をできるだけ統一し、かつその内容を一般公開することにより企業選別における一層の透明性確保及びコスト縮減を推進することも必要とされています。
現在、Corinsにおいては発注者及び受注者の要望を踏まえ、企業の技術力評価の適正化を目指し、工事難易度評価に必要なデータ項目の追加等、技術データの充実化に向けたシステムの改良を進めています。また、今までは、建設省直轄工事に対してのみ詳細な技術データが必要でしたが、改良後は発注者の区別なく全ての工事に対して詳細な技術データが得られることになります。このように工事内容を全国的規模で客観的に把握することにより、企業の技術力を適正に評価することが可能になりますが一方、登録されたデータ自体の正確性・信憑性をより一層向上させることも必要であり、そのための方策、例えば、データ登録時に発注者にお願いしているデータ内容の確認を確実にかつシステム的に行うことなどについても検討を進めています。

おわりに

透明性、客観性並びに競争性が確保された建設市場の整備に併せて、Corinsの重要性は今後ますます高まっていくものと考えます。
関係各位の皆様におかれましては、Corinsの内容と主旨についてご理解いただき、その活用に対して一層の御協力をいただきますようお願いいたします。

財団法人 日本建設情報総合センター
(Jacic)
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