建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2001年8月号〉

寄稿

人が真ん中の道づくり

国土交通省 関東地方整備局 東京国道工事事務所長 大石 龍太郎 氏

大石 龍太郎 おおいし りゅうたろう
昭和55年 京大院(土木)卒
平成 8年4月松江国道工事事務所所長
平成11年4月関東地建 道路企画官
平成12年4月大臣官房 政策企画官
平成13年4月現職
東京国道工事事務所の事業概要

東京国道工事事務所は、東京都区部の国道10路線、約161.3qの管理を担当している。当事務所は、人、モノ、情報などさまざまな機能が集中する巨大都市・東京の都市基盤を支え、快適でより豊かな暮らしに資するため「ゆとりある生活と魅力ある都市をめざして」を道づくりの基本コンセプトとして、「人」が中心の活力あふれる道づくり、良好な環境の道づくり、安全と信頼の道づくりに取り組んでいるところである。
また、平成11年5月には、架橋88周年に花を添えるように日本橋が国道の道路橋として初めて重要文化財に指定された。

T.主な事業
[活力あふれる道づくり]
・新宿南口地区基盤整備事業
一般国道20号(甲州街道)の新宿跨線橋の架替事業及びそれに伴う新宿南口地区基盤整備事業を推進する。昨年度は、迂回道路の工事に着手したところである。
・共同溝整備事業
地震災害に強い首都圈づくりをめざして、共同溝のネットワーク化を図っており、現在、環状方向・河川分断部の整備を推進している。計画延長の65%、約105qの本体を完成させている。

[良好な環境の道づくり]

・電線共同溝整備事業
都市景観の向上、歩行者空間の拡充、災害時の緊急輸送路の確保、電気・通信の信頼性向上等を目的として、電線類の地中化を推進している。計画延長の38%、約81qを完成させている。
・バリアフリー
歩行者、自転車、高齢者や障害のある方など、だれにとっても、安全で利用しやすい道路空間づくりに取り組んでいる。既設歩道の段差や勾配の改善、スロープ付き・昇降装置付き立体横断施設の整備を推進していく。
・地下空間の有効利用
共同溝や地下鉄等の施工空間を利用し、地下駐車場や地下駐輪場の整備を推進していく。
・環境対策事業
低騒音舗装の敷設、遮音壁等の設置を進めている。また、「幹線道路の沿道の整備に関する法律(沿道法)」により、国道4号5.1q、国道254号8.7qが沿道整備道路に指定されており、防音工事助成及び緩衝建築物の建築費一部負担を行っている。
[安心と信頼の道づくり]
・道路の維持管理
国民の皆様方の道路管理に対する信頼の向上に努めていく。
・道の相談室
平成10年10月に東京23区を対象に、各関係機関が連携して道路に関する意見や相談を総合的に受け付けており、平成12年度は、2,589件の相談が寄せられている。
・路上工事の削減
年末、年度末における交通渋滞の緩和を目的に「東京都区部路上工事縮減五箇年計画」により、路上工事の縮減を図っているところであるが、平成12年度の工事件数は54%減(平成4年度比)となり、今後もさらなる縮減を推進していく。
U.具体的な事業例
1.新宿駅南口地区基盤整備事業
新宿駅南口地区基盤整備事業は、老朽化の激しい一般国道20号(甲州街道)の新宿跨線橋(大正十四年架橋)の架け替え事業とあわせ、交通が輻輳する新宿駅南口において交通混雑の解消と交通結節点としての利便性の向上を図ることを目的として実施している。
本事業は公共駐車場やJR新駅ビルなどの整備を一体的に行うものであり、これにより、単独で整備する場合に比べ約百億円の事業費の低減が見込まれる。また、JR線路上空に整備する1haの人工地盤には、通常の約三倍規模までの建設が可能となる。
主な施設は次のとおりである。
(1)開発面積 (敷地面積約1ha)
(2)公共駐車場(約100台)
(3)一般車乗降場(約15台)
(4)タクシー乗降場(約5バース)  高速バス関連施設(約10バース)
(5)JR新駅ビル
本事業は、着手してから約一年間が経過したところであり、事業の早期完成に向け引き続き整備を進めていくものである。
2.赤坂公共駐車場・赤坂地下歩道 (エスプラナード・エトワール)
一般国道246号(青山通り)と外堀通りなどが交差する赤坂見附交差点周辺は、都内でも有数の商業・業務地区をひかえ、また、地下鉄赤坂見附駅が隣接していることもあり、一日に約6万人が通行していた。しかし、駐車場の不足による違法路上駐車が慢性化し、横断歩行者も多いことから、交通渋滞や交通事故、商業・業務活動の低下など社会間題化していた。
このため、渋滞の緩和、事故の防止、歩行者の利便性向上を目的として、赤坂見附交差点に地下駐車場および地下歩道を整備した。
地下駐車場は、道路空間の有効利用の観点から共同溝工事の作業ヤード跡地を活用し、平成10年6月に供用開始したところ赤坂見附交差点を中心とした半径100m以内の乗用車の路上駐車台数が半減した。
地下歩道は平成11年3月に開通し、営団地下鉄赤坂見附駅と直結しており、歩行者が安全に横断することが可能となった。また出入口にはエレベーター・エスカレーターが設置され、お年寄りや身障者の方々にもやさしい施設となっている。
3.渋谷歩道橋(仮称)
国道246号の渋谷区道玄坂付近は、国道の横断箇所の間隔が約600mと長く、国道を横断するための歩道橋が切望されていた。このため、当事務所と東急電鉄鰍ェ協力してエレベーターを備えた横断歩道橋を設置し、本年の3月30日に供用開始したところである。
▲新宿駅南口整備イメージ ▲赤坂公共駐車場・赤坂地下歩道 ▲渋谷歩道橋(仮称)

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