建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2001年7月号〉

寄稿

富士川と山梨県内の道路を見つめ続けて

国土交通省 関東地方整備局 甲府工事事務所長 和田 一範 氏

和田 一範 わだ かずのり
昭和30年12月29日生 神奈川県出身
束京工業大学工学部土木工学卒
昭和53年4月建設省入省
昭和59年4月通産省資源エネルギー庁開発課長補佐
昭和63年4月建設省四国地方建設局企画部企画課長
平成 4年4月建設省高知工事事務所長
平成 6年4月建設省四国地方建設局河川調査官
平成 8年4月宮城県土木部河川課長
平成10年7月(財)国土技術研究センター調査第一部長
平成13年4月国土交通省甲府工事事務所長
はじめに

甲府工事事務所は、富士川の直轄改修事業の着手に伴い、大正10年4月1日に、内務省東京第二土木出張所富士川下流改修事務所が静岡県富士郡岩松村(現富士市岩松)に設置されたことにはじまり、その後昭和33年6月1日に、甲府工事事務所となり、今年で事務所設立80周年を迎えます。現在の業務は、河川事業と道路事業をあわせて担当し、河川事業では、富士川の改修工事、維持修繕その他の管理、水防警報を実施しています。道路事業では、一般国道20号、52号、138号、139号の改築および修繕工事、維持その他の管理、調査を行っています。

河川事業
河川概要
富士川は長野、山梨、静岡の3県にまたがり、古くより最上川、球磨川と並んで日本三大急流の一つに数えられています。流域面積は3,990k平方メートル、幹川流路延長は128kmの一級河川です。
甲府工事事務所は富士川本川及び釜無川、笛吹川等合わせて122.1kmを管理しています。しかしながら堤防延長に対する完成堤防の割合は29%と低く、河川整備が急がれます。
急流河川である富士川は、古来から大雨が降ると水が溢れ災害をもたらす「暴れ川」でした。近年の主な出水としては、昭和34年、57年、平成3年、10年の台風があり、多くの被害がありました。このように氾濫の多い富士川から人々を守るため古くより治水工事が行われています。
昔の代表的な治水技術としては、霞提の併用により甲府盆地を釜無川から守る信玄堤や水制、笛吹川の万力林に代表される水害防備林、流水のエネルギーを弱めるために気付いた雁堤などがあります。
1.安心して住める県土の実現
河川改修事業
浸水被害箇所の解消を目的とした用地取得を進めるとともに、富士川中流部の無堤部や弱小堤箇所の築堤護岸を整備します。
@南部町内船地区改修工事
当地区は、富士川中流左岸に位置し、昭和57年の洪水により浸水被害を受けた地区です。背後地には、老人・身障者福祉施設、保育所、小学校が建ち並び、主要地方道富士川・身延線が通る重要な地区となっています。今年度も引き続き築堤護岸工事を実施します。
A身延町大野地区改修工事
当地区は、富士川申流右岸に位置し、無堤部や計画の堤防に比べ高さが不足しており、重要水防箇所aランクの解消促進に向け、今年度より築堤護岸工事に着手します。
B中富町八日市場地区改修工事
当地区は、富士川中流域の生活や物流の生命線とも言える国道52号が堤防天端を走り、堤防が洗掘されると国道も通行不能となってしまいます。また、水衝部であり河岸が洗掘されています。今年度も引き続き護岸工事を実施します。
C鰍沢町自子地区改修工事
当地区は、富士川の最狭窄部となっている禹之瀬地区に位置し、川幅が極端に狭いため流下能力が小さく、昭和57年の洪水では対岸の船場地区とともに浸水被害を受けました。平成7年度より改修に着手し、直轄道路事業及び鰍沢町の土地区画整理事業と共同で事業を実施しています。今年度も引き続き護岸工事と用地取得を促進します。
D増穂町増穂地区改修工事
当地区は、大小複数の山地・平地河川が複雑に合流する箇所で、たびたび内水被害が起きているため、流入支川の流量規模を大きくしました。そのため、富士川への流大量が増加し、引堤工事が必要となり平成10年度より工事に着手しました。今年度は、築堤護岸工事と用地取得を促進します。
E白根町今諏訪地区改修工事
当地区は、釜無川右岸に位置し、堤防側に澪筋がよる水衝部であり、河岸が大きく洗掘されています。今年度は護岸工事を実施します。
F八田村下高砂地区改修工事
当地区は、釜無川右岸に位置し、堤防側に澪筋がよる水衝部であり、河岸が大きく洗掘されています。今年度は護岸工事を実施します。
G山梨市岩手地区改修工事
当地区は、笛吹川の直轄管理区間最上流部に位置し無堤地区であります。背後には埼玉と山梨を結ぶ国道140号が隣接し交通の要所であるとともに、市街地の地盤が低いためひとたび洪水氾濫が起きると甚大な被害が予想されます。平成11年度より築堤護岸工事に着手し、今年度は用地取得を促進します。

2.よりよい生活環境の確保
河川環境整備事業
河川環境整備事業は、水と緑のオープンスペースとしての河川空間をより良好なものとし、川に親しめる場所の整備を行うことを目的としています。
●双葉町環境整備事業
双葉町下今井地区は、釜無川と支川の防沢川が合流する自然豊かな場所です。また、この箇所は武田信玄が御勅使川を付け替え、御勅使川の流れを岩に当てて勢いを弱めたことでも知られている高岩が間近に見学できる所でもあります。整備に当たっては、町のビオトープ整備計画構想と河川環境管理計画で整合を図りつつ、富士川の歴史・自然を一体とした河川愛護の精神を育む場、人と自然のふれあいの場として整備をします。
▲市川大門町禹之瀬地区河道修正 ▲南部町内船地区改修工事 ▲身延町大野地区改良工事 ▲白根町今諏訪地区改良工事
▲八田町大高砂地区改良工事 ▲山梨市岩手地区改良工事 ▲双葉町環境整備事業

道路事業

山梨県内の一般国道は12路線で総延長が594kmあり、甲府工事事務所はこのうち国道20・52・138・139号の4路線、総延長244.5kmを管理しています。
平成13年度は、新道路整備五箇年計画の4年度目にあたり、我が国経済を新生させ、豊かで活力のある経済社会を構築し、活力とゆとり・うるおいのある国土・地域づくりと生活空間の創造を図るため、引き続き社会・経済・生活活動の一層効果的、効率的な展開に向けて、幹線道路網の整備、渋滞区間の解消、沿道環境の改善、防災工事等、より快適で安全な道路を整備します。また道路を常に良好な状態に保守し、安全で円滑に通行できるよう維持修繕、交通安全対策、その他の管理を行うほか、積雪寒冷地対策等の事業を実施します。

1.連携・交流の促進を図り、活力ある地域づくりの支援
@国道52号身延バイパス
平成9年度までに供用のバイパス区間(L=3.7km)に引き続き進めてきた甲府側道路線形改良、法面防災部(L=0.5km)の工事を完成させ事業を完了します。
A国道20号大月バイパス
一般国道20号大月バイパスは大月市街の交通渋滞解消等を目的に計画したバイパスで、大月市駒橋〜坂瀬1.7km間について整備を促進しているところです。今年度は、引き続き用地取得、改良工事の促進を図ります。
B一般国道20号竜王拡幅
一般国道20号の竜王町〜韮崎市内(L≒6.7km)の交通渋滞緩和及び交通安全確保を目的とした道路拡幅事業で、今年度は竜王町〜双葉町間(L≒2.6km)の用地取得の推進を図ります。
C一般国道52号甲西道路(中部横断自動車関連)
甲西道路については鰍沢町〜双葉町18.2kmのうち、平成12年度までに増穂町〜白根間9.2kmを供用しています。
今年度は、鰍沢町〜増穂町間(L≒3.0km)において、用地取得、文化財調査、改良・舗装工事、戸川橋等橋梁工事の促進を図ります。また、白根町〜双葉町問(l≒6.0km)間においては用地取得、文化財調査、改良工事を促進し、釜無川に架かる新双田橋上部工事に着手します。
また、日本道路公団から受託して、中部横断自動車道の増穂I.C(仮称)〜若草櫛形I.C(仮称)の一部区間について高架橋上下部工事を引き続き実施します。
D一般国道139号都留バイパス
一般国道139号都留バイパスは、都留市街の交通渋滞解消を目的に計画したバイパスで、平成5年までに市道天神通り線〜県道戸沢谷村線問2.4kmを供用し、その後県道戸沢谷村線〜県道四日市場上野原綿間(L≒2.5km)について整備を進めているところです。今年度は引き続き、用地買収の促進を図ります。
2.よりよい生活環境の確保
@一般国道52号寿町拡幅
甲府市寿町地区(L≒0.5km)の一般国道52号の交通渋滞緩和及び交通安全の確保を目的とした道路拡幅事業で、今年度は残用地の取得を進め工事に着手する予定です。また、合わせて電線類の地中化、景観整備を進めます。
A一般国道52号富沢町楮根の拡幅事業
―般国道52号の富沢町檜根区の交通安全の確保を目的とした道路拡幅事業で、今年度は用地取得を促進し、改良工事に着手します。また、一部区間の供用を図る予定です。
▲大月バイパス ▲竜王拡幅 ▲甲西道路・甲西工業団地付近
▲都留バイパス ▲寿町拡幅 ▲甲西道路、中部横断自動車道併走区間

HOME