建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2001年7月号〉

寄稿

常陸の国に暮らす人々の「快適な暮らし」実現のために

国土交通省 関東地方整備局 常陸工事事務所長 衛門 久明 氏

衛門 久明 えもん ひさあき
昭和29年10月7日生 兵庫県出身
信州大学大学院卒
昭和55年 4月建設省入省
平成 3年 7月建設省河川局海岸課長補佐
平成 4年12月建設省近畿地方建設局淀川ダム統合管理事務所長
平成 6年 4月建設省四国地方建設局江の川総合開発工事事務所長
平成10年 4月建設省建設経済局建築振興課建設専門官
平成12年 4月国土交通省関東地方建設局常陸工事事務所長 (現職)
管内の全体的な概要
当事務所では、茨城県内の直轄国道である6号、50号、51号の3路線について、改築と管理を担当しております。
なお、当事務所は、河川事業も行っており、那珂川水系、久慈川水系の2河川の延長101.5kmの河川改修や維持修繕等も行っております。
もともとは昭和13年5月に現在の常陸太田市に久慈川改修事務所が設置されたのが始まりですので、今年で62年ほど経っていることになります。
河川事業
はじめに
那珂川は、栃木県の那須岳(標高1,917m)を源とする流域面積3,270平方キロメートル、幹川延長150km、河川総延1,485kmの一級河川である。源流の那須山地から栃木県大田原市や黒磯市などの平地を流下し、中流部の茨城県と栃木県の県境で渓谷となり、下流部の水戸市、ひたちなか市では田園と市街化された地域が混在する中を蛇行しながら流れ、太平洋に注ぐ一級河川です。
流域には約86万人の人々が生活しており、関東地方の河川としては比較的多くの自然が残り、また鮎や鮭が遡上する川としても知られています。


1.那珂川の河川整備
那珂川の堤防整備率は非常に低く、沿川には無堤や弱小堤が多く存在し、近年だけみても昭和57年、昭和61年、平成3年、平成10年、平成11年と幾度となく洪水による浸水被害を受けました。このため、常陸工事事務所では「水害につよい川づくり」、「自然に優しい川づくり」、「人に潤いと安らぎを与える川づくり」を目指し、那珂川の無堤、弱小堤の解消を図るための堤防整備、及び流入河川の合流点処理等を環境に配慮しつつ河川整備を進めています。

2.平成10年8月洪水以降の大改修
今年は、平成10年8月末の豪雨災害から四年目の年となります。
近年の那珂川は、幾度となく大水害に見舞われており、中でも昭和61年8月洪水は、戦後最大規模に相当する洪水となり、那珂川全川で未曾有の大水害となりました。この洪水から12年後の平成10年8月末、再び大洪水が那珂川を襲いました。この洪水では那珂川流域で記録的な大雨が降り、流域に大きな浸水被害をもたらしました。直轄管理区間全川でも、いたるところで大きな被害が発生し、特に最下流部に位置する茨城県水戸市及びひたちなか市では甚大な浸水被害を受けました。
直轄管理区間での被害は、浸水面積l,726ha、床上浸水436戸、床下浸水575戸の計l,011戸に及び、当時、河口からl2.4km上流に位置する「水府橋」付近の氾濫状況を伝えるテレビ中継は記憶に新しいところであります。
このため、平成10年8月洪水以降、次の6つの基本方針をもって事業を推進しております。
1.那珂川の緊急改修・床上改修事業の促進
2.河川管理施設の災害復旧
3.JR常磐線(河口から約9km)より上流の無堤部、弱小堤、支川処理の改修促進
4.JR常磐線下流区間の改修促進
5.安全を高める対策としての遊水地整備
6.JR水郡線那珂川橋梁の改築
下流部の水戸市地区は昭和61年洪水後、「激甚災害対策特別緊急事業(激特事業)」が採択され、これにより河道掘削・築堤及び水門が施工されました。これより、当該激特事業区間は、計画高水位(hwl)を上回る平成10年8月洪水の浸水被害からこの地域を守ることができました。その後、激特事業区間より下流を緊急改修事業区間と位置付け、集中投資を行い無堤部の解消に向けた改修を進めてまいりました。更に平成七年度より「床上浸水対策特別緊急事業(床上事業)」が採択され、緊急改修事業と合わせ、一層緊急的な改修が促進されました。
一方災害復旧事業は、護岸や河岸などの河川管理施設の被災による87箇所に及ぶ復旧工事と共に、無堤部や、弱小堤部からの氾濫及び那珂川本川から流入支川への逆流による再度災害(浸水被害)を防止するため、堤防の整備及び支川処理として、合流点に水門・樋門等が設置されました。
約二ヶ年で整備された堤防延長は約18km、水門・樋門等は20箇所に達し、堤防整備率(hwl以上の堤防)は被災前の約40%から約50%と他の河川では例を見ないスピードで飛躍的に向上しました。

3.復緊事業
上流域での堤防整備の進捗により、今まで氾濫していた洪水流が河道に集められることによる下流での流出増に伴う被害をなくすため、平成10年度に「直轄河川災害復旧等関連緊急事業(復緊事業)」が創設されました。この事業は、平成11年度を初年度とする概ね3ヵ年の予定で、無堤部であるJR常磐線より下流の左右岸合わせて4,000mの築堤、水門・樋門等の治水施設の整備を実施するものであり、現在、鋭意事業実施中であります。

4.遊水地・特構事業
那珂川の中流部では、一時的に洪水を貯溜させ、下流への洪水流を低減することを目的とする「遊水地」を設けることとし、現在、事業実施に向けた調整を進めております。
また、洪水流の流下に支障となっているJR水郡線那珂川橋梁の架け替えを平成11年度より、平成18年度完成を目指して「特定構造物改築事業(特構事業)」として事業実施しています。
おわりに
以上の様な各種事業は、現在、県、地元市町村の協力はもとより、地域住民、土地所有者の方々の深いご理解とご協力を頂きながら実施中であります。今後は水害に強く自然に優しい川、人に潤いと安らぎを与える川づくりを目指して、住み良い地域づくりに寄与できるよう取り組んで参りたいと考えております。
▲昭和61年8月の台風第10号による出水で那珂川が氾濫し、水戸市水府町及びひたちなか市が浸水した ▲平成10年8月末豪雨 那珂川左岸(水戸市 青柳地先) ▲水戸市飯富・岩根町付近
▲水戸市三の丸地区(12.0km右岸付近) ▲那珂川から逆流した中丸川 ▲JR水郡線那珂川鉄橋
▲千代田バイパス ▲榊橋
道路事業
主要路線の計画と進捗状況
1.高規格道路の事業は、北関東自動車道の(仮称)岩瀬IC関連の1箇所で行っています。
北関東自動車道の(仮称)岩瀬IC関連については、平成11年度に事業化され、現在、用地幅杭設置、用地測量が完了し、平成13年度より用地買収に着手する予定です。
2.地域高規格道路事業は、千代田石岡バイパスがあります。平成10年度に事業化され、現在、文化財の試掘調査、道路設計が実施済みです。今年度、地元設計説明会を開催し、用地幅杭設置、用地測量を実施し、用地買収の準備を行う予定です。
3.一般国道の二次改築としては、6号で榊橋、日立バイパス50号で下館バイパス、内原バイパス、51号で鹿嶋バイパスを行つています。
日立バイパスは、日立市街地が南北に細長い低地に分布していることから、海岸部に路線を計画し、平成2年度から工事に着手しております。終点側の本宮アクセスから東滑川町地先の国道6号間の延長約16kmを暫定2車線で平成13年3月24日に暫定2車線で供用したところです。また、本宮アクセス以南についても、滝の上川高架橋の上部工事などを実施中であります。
鹿嶋バイパスは鹿嶋市内の渋滞対策および交通安全対策から計画されたもので、平成4年度から工事に着手しております。現在は、平成14年6月に予定されているサッカーのワールドカップに間に合わせるべく平成13年度内の全線完成(暫定)を目指して、鋭意事業を促進しております。
最後に
管内には、日立バイパスや鹿嶋バイパスなど大規模なバイパスを抱えており、地元からの早期整備要望も強いものがあります。鹿嶋バイパスは平成14年6月に開催されるサッカーワールドカップの輸送計画に位置付けられており、目標に向かって進めて行かなければいけない箇所であります。また、地域の皆様の道路に対する意見、要望等を大切にしていきたいと考えております。
最後に、今後も効率的な事業執行を行い、良好な道路環境の確保に努めるなど、皆様のご期待に添えるよう努力して参りたいと思います。
▲日立バイパス ▲鹿嶋バイパス ▲新神宮橋
▲岡芹高架橋上空付近から協和町方面をみた下館バイパス ▲水戸市加倉井町(終点側)付近より友部町方向(起点側)を望む

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