〈建設グラフ2000年4月号〉

寄稿

千葉県の都市河川事業について

千葉県土木部 都市河川課長 角山義信 氏

角山義信 つのやま・よしのぶ
昭和42年4月 千葉県採用
平成 3年4月 土木部河川課 課長補佐
平成 8年4月 真間川改修事務所 所長
平成10年4月 大原土木事務所 所長
平成11年4月 土木部都市河川課 課長
1.都市河川の概要
千葉県は、首都圏の東側に位置し、東西約100q、南北約134q、面積5,156km2で、一部が太平洋に突き出た半島からなり、四方を海と川に囲まれ、水と緑の豊かな自然に恵まれている。
このうち、首都圏整備法における近郊整備地帯に係る河川を都市河川、その他を一般河川と分類し、県内224河川(一級河川88、二級河川137)のうち、都市河川は117河川である。
これは、県内80市町村のうち、21市7町2村にわたり、総面積は県土のおよそ半分、人口は県人口約590万人の約8割を占めている。
2.千葉県の川づくりの進め方
千葉県では、21世紀に向けて、豊かで安心して暮らせる社会を願う「安心」の視点、自然と共存した社会を願う「自然」視点、自由で個性豊かに暮らせる社会を願う「地域」の視点から川づくりを進めている。
3.都市河川の現状との課題
流域における開発や都市化の進行は顕著であり、不浸透域の拡大に伴う洪水流量の増大、生活雑排水の増加に伴う河川水質の悪化など、様々な影響が現れている。
@水害の度重なる発生
当面の整備目標として、1時間雨量50oの降雨に対する安全を確保するため、河道改修、調節池等の整備を図っている。更に、都市化の著しい流域においては、水害に強い県土づくりを目指し、河川改修の他、流域における保水・遊水機能の向上を図るための総合的な流域対策が求められている。
今後は、さらに治水対策を進め、流域の将来動向を的確に把握し、まちづくりと連携した対応が重要と考える。
A河川水質の汚濁
都市域においては、河川に生活汚濁水が流入し、また、平常時流量の減少と相まって水質が悪化している。
こうした汚れた水は、汚濁源における対策とともに、河川・水路における水質浄化のための対応が必要となっている。
B地域における河川
河道改修による人工的な護岸や都市化による水質悪化により、人々は水辺に近寄りがたいものと成り、かつての親しんだ変化に富んだ美しい河川風景が失われてきた。地域や人々が河川に顔を向け、まちづくりの中で積極的に水辺空間を取り入れ、地域に根ざした多自然型川づくりが課題である。
C防災対策の充実
「阪神・淡路大震災」クラスの地震が発生した場合、堤防の決壊等による被害のみならず、当該被災地と同様な類焼による大火災等が予想される。その中で、河川空間は、火災の延焼遮断地帯としての機能のほか、消火用水の供給源としての機能を合わせ持っていることから、防災対策を考慮した河川の整備が求められている。

高校のテニスコートの下を
有効活用した春木川地下貯留地
真間川
都市域の貴重な水辺空間に配慮し、コンクリート護岸を見えなくなるように蔦を生やしている
4.都市河川の整備
@治水対策
当面の目標である1時間に50mmの降雨に対する安全度を確保するため、真間川や春木川等において河川改修や調節池等の建設を進めている。特に床上浸水被害が頻発している大柏川等の地域については、21世紀初頭を目途にこれを解消するための整備を行っている。
また、都市化により、治水安全度の低下が著しい真間川流域では、土地利用の誘導や雨水浸透施設の設置など総合的な治水対策を進めている。
A環境対策
水質汚濁の著しい坂川等において浄化施設の建設、底泥浚渫等を進めている。水質汚濁が著しい手賀沼においては、底泥浚渫で発生した高含水土砂を高圧薄層脱水システムにより、土木用材として処理し、再利用することにより、コスト縮減を図っている。
また、河川改修においては可能な限り多様な生物が棲息できる多自然型川づくりの整備を行っている。
B親水施設
水辺は、貴重な水と緑の空間であるため、まちづくりと一体となって親水施設や遊歩道等の整備を根木名川や大柏川第一調節池等で進めている。
C防災対策
旧江戸川では、耐震対策としての堤防強化、都川等では、河川水を緊急時の消火用水等として利用できるような河川施設の整備を行っている。
D水循環系再生計画
水循環系が変化し、洪水が頻発したり、平常時水量の減少、水質汚濁等の問題が発生した地域について、健全な水循環系の再生するために、行政だけでなく、市民・企業と連携・協働し、流域全体で再生を進めている。現在、海老川流域がモデル指定され、計画を推進している。

高圧薄層脱水機
手賀沼では、12,000立方メートルの浚渫底泥を1日約380立方メートルのペースで脱水処理を行います

大柏川第一調節池整備イメージ図
5.おわりに
本県の都市河川においては、雨水流出増や平常時水量の減少など、川づくりの抱える課題は多い。新しい時代に向け、河川を流域全体の問題としてとらえることにより、安心して暮らせる県土、自然の豊かさを大切にした社会、そして地域に住む人々が、河川を生かしながら活気と魅力あふれる地域社会を創る。このため、川づくりにおいては、これまで以上に地域の声を反映させるとともに、河川を活かした交流を促進し、地域の文化に根ざした個性的な川づくりを進めてまいりたい。

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