〈建設グラフ1999年4月号〜5月号〉

寄稿

千葉国道工事事務所 高規格幹線道路網を積極的に推進

建設省関東地方建設局千葉国道工事事務所長 豊岡弘順 氏

豊岡 弘順 とよおか・ひろゆき
群馬県出身
昭和 48年 4月 建設省入省
62年 11月 近畿地方建設局奈良国道工事事務所長
平成 元年 5月 中国地方建設局道路部道路調査官
3年 11月 岡山県道路建設課長
6年 4月 (財)国土開発技術研究センター研究第二部長
8年 4月 現職
建設省千葉国道工事事務所は、首都圏の活力ある地域経済の発展を支援するための高速性、定時制に優れ、地域相互の連携強化を図る広域的な“交流ネットワーク”を形成する「高規格幹線道路」の整備を積極的に推進している。最近では、平成9年12月に開通した東京湾アクアラインと接続する「東京湾アクアライン連絡道」の整備、更には南房総に延びる「一般国道127号富津館山道路」の整備を進めている。
以下で、―般国道127号富津館山道路及び、東京湾アクアライン連絡道について紹介をする。
【一般国道127号富津館山道路】
(1)概要
一般国道127号富津館山道路は、富津市から富浦町に至る延長19.2mの自動車専用道路である。内房地区では、一般国道127号が唯一の幹線道路だが、気象状況に左右されやすく、また、狭小トンネル、線形不良箇所があり、年々交通渋滞が激しくなっている。
一般国道127号富津館山道路は、これらの諸問題を解消し、東京湾アクアライン・館山自動車道・首都圏中央連絡自動車道と一体となって、房総地域の安定した交通路を確保するとともに、ベイエリアの結びつきを強化することで南房総のリゾ−ト開発を促進し、産業・文化・流通面で地域活性化に寄与するものです。

標準断面図

土工部

橋梁部

トンネル部

■計画概要
路線名 一般国道127号(富津館山道路)
区間 自 富津市竹岡
至 安房郡富浦町深名
延長 19.2km
幅員 9m〜11m
構造規格 1種3級(自動車専用道路)
設計速度 80km/h

■連結位置および連結予定施設
インターチェンジ名 連結位置 連絡道路
富津竹岡IC 富津市竹岡 主要地方道竹岡インター線
富津金谷IC 富津市金谷 県道浜金谷停車場線
鋸南保田IC 鋸南町保田 主要地方道鴨川保田線
鋸南富山IC 鋸南町下佐久間 県道外野勝山線
富浦IC(仮称) 富浦町深名 一般国道127号

■通過市町村 (平成9年4月現在)
市町村名 延長(km) 人口(人)
富津市 約5.9 53,912
鋸南町 約6.3 10,894
富山町 約4.0 6,385
富浦町 約4.2 5,747
(2)事業の実施状況
一般国道127号富津館山道路は、昭和61年に用地、昭和62年に工事着手した。
JH日本道路公団が平成9年10月に―般有料道路事業許可を受け、建設省とJH日本道路公団の合併施行により整備を進めてきたところである。このうち、富津竹岡インターチェンジから鋸南富山インターチェンジの一部区間11.0qが平成11年3月開通する運びとなった。
なお、残り区間についても、早期完成を目指して鋭意事業を展開している。
また、富津館山道路は、房総丘陵地を貫いているため、橋梁やトンネル等の構造物が多く、道路延長にしめる割合は橋梁(36橋)で約18%、トンネル(16箇所)約41%となっている。
橋梁、トンネルを併せると全体延長に占める構造物の比率は、約60%になる。
そこで、構造物の設計・施工においては、コスト縮減に配慮するとともに積極的に新技術等を取り入れたものとなっている。
下の写真はその一例である。
■代表的な橋梁及びトンネル
【竹岡高架橋】 【芝崎川橋】 【金谷第二トンネル】
(延長) 125m (幅員) 11.0m
(橋梁形式) 5径間連続充腹アーチ橋
(特徴)
 竹岡高架橋は、5径間連続充腹アーチ橋で複数のアーチと左右の壁をコンクリートで作り、その中に土を入れるという独特の工法で伸縮継ぎ手がないため騒音や振動が少なく走行性にも優れています。
(延長) 35m (幅員) 11.25m
(橋梁形式) PC合成桁橋
(特徴) 芝崎川橋は、建設コスト縮減策としてpc合成桁橋を採用しています。PC合成桁橋は、従来のpc単純t桁橋に比べ主桁および中間横桁が少なくプレキャストpc板を使用することで架設時の足場、鉄筋加工の簡素化となり現場作業が減少し、工期短縮が図られ従来工法に比べ建設のコスト縮減が図られます。
(延長) 826m (幅員) 9.0m
(施工方法) 補助ベンチ付き全断面工法、NATM工法
(特徴) 金谷第二トンネルは、大型自由断面掘削機を導入した補助ベンチ付き全断面工法で坑内作業環境の改善と、作業効率を高めることができ、従来の工法に比べ坑内での重機の輻輳が回避され、工期の短縮が図られると共に、トンネル工事の安全性の向上が図られます。
(3)富津館山道路の整備効果
富津館山道路は、館山自動車道、東京湾アクアライン、首都圏中央連絡道路などの幹線道路と一体となり首都圏の広域的な道路網を形成し、沿線地域の皆さんのくらしを支え、経済・文化等の発展に大きく寄与するものと期待される。
具体的には以下の通りである。

移動時間が大幅に短縮、南房総へのアクセスが向上
 富津館山道路の今回開通区間を利用することにより移動時間(館山市〜千葉県庁)が約15分短縮される。さらに残る区間と館山自動車道(木更津〜富津)が開通すると(館山市〜千葉県庁)が約70分短縮されることになる。
 ■富津館山道路の開通に伴い内房地域に年間200億円の整備効果がもたらされる
 富津館山道路が整備されることによって内房地域の輸送条件が改善される。
 富津館山道路が全線開通すれば、走行経費や移動時間の短縮により年間約200億円の整備効果が見込まれる。また、1年間に消費する燃料が約190万リットル節約できる。
 ■信頼性の高い安心して住める地域を実現
 内房地域では一般国道127号が唯一の幹線道路であるが、急峻な地形のため異常気象時は度々交通止めとなっていた。しかし、信頼性の高い富津館山道路の開通により安定した交通が確保されることになる。


【―般国道409号東京湾アクアライン連絡道】
(1)概要
東京湾アクアライン連絡道は、木更津と川崎を結ぶ延長約15kmの東京湾アクアラインと館山自動車道、首都圏中央連絡道路等を連絡するアクセス道路である。
この道路は、東京湾アクアラインヘのアクセス機能を向上させ、館山自動車道、―般国道16号等の幹線道路と一体となって広域的な道路網を形成し首都圏の交通の円滑な導入を図るとともに、周辺市街地の交通混雑を解消し、房総地域の地域活性化等に寄与するものである。
東京湾アクアライン連絡道は、木更津市中島地先から木更津市菅生地先間約7.1kmで専用部(4車線)と―般部(4車線)から構成されている。このうち約3.9kmが直轄事業区間となっている。

(2)事業の実施状況
東京湾アクアライン連絡道は、平成2年度にJH日本道路公団が有料道路認可を受け、平成3年度より建設省とJH日本道路公団の合併施行により事業を進めてきたところである。
平成8年3月に専用部の袖ヶ浦ICから木更津jct間を供用開始し、平成9年12月に、東京湾アクアライン供用と同時に木更津金田ICから袖ヶ浦IC間3.9kmの専用部及び―般部の一部区間を供用した。
現在、―般部の未供用区間について事業を促進している。


(3)東京湾アクアライン連絡道の整備効果
東京湾アクアライン連絡道は、東京湾アクアライン、館山自動車道、首都圏中央連絡道路等と一体となり首都圏のバランスある発展に貢献するとともに、東京湾の高速道路を結ぶことで東京湾周辺の交通をスムーズにし、首都圏の慢性的な交通渋滞を緩和する。
また、産地から東京都心など消費地への輸送時間が短縮され、千葉県内からの生鮮食品がより新鮮なうちに運ばれ、市場が拡大する事となる。
東京湾アクアライン及び連絡道の開通後の平成10年1月から8月までの観光客の千葉県への入り込み数は、92,447千人で、昨年同期実績を138万人(1.5%)上回った。
特に、神奈川県と直結された安房、君津地域では伸びが目立っており、安房地域が前年同期より12.9%、君津地域が15.7%増加しており、アクアラインの効果が顕著に現れている。
また、県内観光地への利用交通機関としては、アクアラインを利用する観光バスが17.7%増となっている。

■東京湾アクアライン連絡道関連工事
【小櫃川第一橋梁上部第7工事】 【岩根高架橋下部第6工事】

【最後に】
本格的な高齢化社会の到来を目の前に控え、21世紀を見据え、社会・経済・生活活動が一層、効果的、効率的に展開されるよう、物流の効率化、市街地の活性化、渋滞対策等の緊急課題に対応した道路整備に努めることとしている。
実施に当たっては、コスト縮減や費用対効果分祈の活用を含む事業評価の推進などによる事業の効率化、透明性を進める。
今後とも、活力ある地域経済の発展、地域産業の活性化を促進し、経済構造改革を支援するため「国土、都市、地域づくり等」の基盤となる道路整備を積極的に推進することとしている。

【主な工事】

金谷第1高架橋上部工事
工  期:H9.10.2〜H11.1.29
工事場所:千葉県富津市金谷地先
架設工法:張出架設工法
橋梁形式:PC2径間連続箱桁ラーメン橋
延  長:141.0m(上下線共)
平均幅員:11.0m(有効幅員)
縦断勾配:3.0%
定着工法:フレシネー工法(主ケーブル)
金谷改良第5工事
工  期:H10.2.7〜H10.12.23
工事場所:千葉県富津市金谷地先
工事概要:本工事は高規格127号線富津館山道路の一環であり、金谷ICの切盛土工事を主体とした工事である。
@道路土工
 掘削工 159,900m3
 路体盛土工 95,799m3
 路床盛土工 5,990m3
 法面整形 14,830m2
A法面工
 厚層基材吹付工 4,480m2
 植生ネット 10,500m2
B擁壁工
 重力式擁壁工 76m
 コンクリートブロック積工 1,784m2
 コンクリートブロック張工 139m2
C小型水路工
 U型側溝工(PU300〜450)1,521m
 自由勾配側溝工 80m
 管渠工 67m
 集水桝 42基
 小段コンクリート 892m
中佐久間舗装工事
工  期:H10.3.10〜H11.3.25
工事内容:舗装工(排水性) 8,400m2
橋面舗装(排水性) 830m2
道路土工 1式
路面排水工 1式
情報管理工 1式
道路付属施設工 1式
鋸山トンネル他監査路設置工事
工  期:H9.3.20〜H9.10.15
路線名:高規格127号 富津・館山道路
工事場所:千葉県安房郡鋸南町中佐久間〜千葉県富津市金谷
工事概要:トンネル延長(T工区)中佐久間トンネル424.0m、大吉
トンネル322.3m、吉浜トンネル136.0m、大帷子トンネル481.0m
@(掘削工)土砂掘削 仮置場に運搬敷均し-中佐久間トンネル1,200.0m3、大吉トンネル780.0m3、吉浜
トンネル250.0m3、大帷子トンネル900.0m3
A(監査路工)標準部-中佐久間トンネル821.0m、大吉トンネル621.2m、吉浜トンネル247.7m、
坑口スロープ(ヶ所)-中佐久間トンネル15.0m(4)、大吉トンネル15.0m(4)、吉浜トンネル
15.0m(4)
昇降ステップ(ヶ所)-中佐久間トンネル4.4m(11)、大吉トンネル0.8m(2)、吉浜トンネル1.6m(4)
B(排水工)円形水路工-中佐久間トンネル831.8m、大吉トンネル633.8m、吉浜トンネル268.4m、大帷子
トンネル945.8m、
集水桝工-中佐久間トンネル18.0基、大吉トンネル12.0基、吉浜トンネル4.0基、大帷子トンネル
18.0基
横断排水工(ヶ所)-中佐久間トンネル64.0m(8)
中央排水工-中佐久間トンネル412.0m
C路盤工-中佐久間トンネル3,430.0m2、大吉トンネル2,610.0m2、吉浜トンネル1,100.0m2、大帷子トンネル3,900.0m2
佐久間川橋Eランプ橋上部第2工事
工  期:H10.3.27〜H11.3.21
工事場所:千葉県安房郡鋸南町中佐久間地先
工事概要:橋梁拡幅工事(拡幅幅6.6m〜0、拡幅延長48.5m)
架設工法-固定式架設工法
橋梁形式-2経間連続PC中空床版桁
縦断勾配-2.5%
定着工法-フレシネー工法
金谷道路改良第3工事
路線名:高規格127号富津館山道路
工  期:H10.3.26〜H11.1.19
施工場所:千葉県富津市金谷地先
施工区域:市街地地域
工事概要:Dランプ盛土工
山田川付替工
金谷第2高架橋桁下整備工

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