建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2004年11月号〉

寄稿

人・もの・情報が円滑に流れるまちづくりに貢献する
都市再生プロジェクト「淀川左岸線」

阪神高速道路公団 大阪建設局此花工事事務所 深川慎一

深川 慎一 ふかがわ・しんいち
昭和42年4月阪神高速道路公団入社
平成13年5月大阪管理部 保全第二課長
平成15年5月神戸管理部 神戸第二維持事務所長
平成16年6月大阪建設局 此花工事事務所長
管内概要
淀川左岸線は、大和川線などと共に都市再生環状道路の一部として位置づけられている。このうち、淀川左岸線(1期)は、阪神高速5号湾岸線(北港ジャンクション)と阪神高速3号神戸線(海老江ジャンクション【仮称】)とを結ぶ、延長5.7kmの自動車専用道路であり、淀川左岸線(2期)と併せて臨海部と大阪都心北部地域が連結し、都心部の渋滞緩和や沿線環境の改善に取り組み、さらなる都市の活性化へと繋げている。
当事務所の管内は大きく3つの工区に分かれている。
島屋工区では延長670mの地中連続型(smw)による大規模開削トンネルを施工中である。現在は一部掘削が完了し、トンネル函体の床版などを施工しているところだ。また、工区の中間には換気所の設置を計画している。
正蓮寺川工区は、大阪府・大阪市・阪神高速道路公団による正蓮寺川総合整備計画の一部として覆蓋構造による道路整備を進めている。現在までに右岸部の陸地化が完了し、河川代替施設である河川ボックスを埋設している。将来的には道路の覆蓋化によって生まれる連続した上部空間が正蓮寺川公園として総合的に整備され、歩行者専用道も設けられる予定となっている。
大開・高見工区ではU型擁壁87.6m、橋台及び高架部232.8mを施工中である。本工区は大阪市の一般道路事業淀川南岸線と一体として整備を進めているところである。

<島屋工区>
島屋工区は淀川左岸線の西端に位置しており、このうち此花区北港(北港jct)から島屋出口までの1.3kmは供用中である。本工事は大阪市道桜島守口線(北港通)を中央占用しながらの施工となっているが、周辺が工場地帯であることに加えて、usjの開業により交通量も増加している状況にある。さらに周辺部は河川に囲まれた臨海部であることから、沖積粘土層下の砂礫層では被圧水が高く、掘削に伴って盤ぶくれの発生が懸念されるため、リリーフウェルによる揚水を実施している。また、沖積粘土層は非常に鋭敏比が高く、練り返しによる強度低下が著しいため、トラフィカビリティー確保を目的としたセメント改良を行っている。
正蓮寺川までの一部区間では建設コスト縮減として土留壁芯材(h形鋼)を本体の一部として利用する合成土留壁を採用している。h形鋼には機械式継手があらかじめ取り付けてあるため、damシステムにより削孔精度及び傾斜計による芯材建て込み精度の向上を図る。当該区間では現在、中間杭打設・地盤改良等を施工している。

<正蓮寺川工区>
正蓮寺川は淀川からの取水により維持されている流域を持たない一級河川である。平成4年より工事が開始され、鋼管で締め切った右岸側の陸地化が完了している。
右岸側の陸地化においてはセメント系固化材を用いた機械攪拌を行ったため、施工中の臭気のほか、地盤体積の増加による工費増を招いた。このため左岸側の陸地化にあたっては固化処理工法についての実証実験を行い、超高圧フィルタープレスによる脱水固化工法を採用した。これは浚渫した河川底質からゴミ・砂分を分離した後、4mpaの超高圧フィルタープレスにより脱水・固化し埋め戻す工法で当初の約半分の体積に減容できる。平成11年に河川底質から汚染物質が検出されたため、学識経験者から成る環境監視委員会が設置され、10mg/kg以上のpcbによる汚染土については高速道路土留壁・セメント系遮水壁・覆土等を周囲に設けた6面封じ込めが必要とされた。平成15年12月からは恩貴島橋より下流側から浚渫・脱水固化を開始している。このように汚染物質を取り扱うことから「正蓮寺川総合整備事業」に係る環境監視委員会を設置し、審議を行いながら慎重に事業を進めている。また周辺環境への影響を監視するため河川水質・大気質・地下水調査などを定期的に実施している。

<大開・高見工区>
大関工区のU型擁壁部は側面埋め戻しを残すのみで、高欄打設も完了し、今後事業の進捗により路体部の施工に入る予定である。本工区の大部分はphc杭による擁壁部となっているが、一部区間において鋼矢板による液状化対策を採用したという特徴がある。また高見工区とともに旧河川内であったことより、捨石護岸等の障害物の撤去に苦慮した。
高見工区は5基の鋼製橋脚工事を進めており、一部橋脚は柱架設まで完了している。下部工事においては鋼管杭の外周に現地で固化体(ソイルセメント)を施工し一体とした合成杭である鋼管ソイルセメント杭工法(scp)を採用している。長所としては支持力が高く、地震時の変形に対しては高いじん性を発揮し、同一径では鋼管杭に比べて経済的である。また、施工に伴う騒音・振動が比較的少なく、周囲に与える影響が軽減出来ることから都市内では有利になる。コスト縮減としては脚と桁の合成構造や支圧板方式によるアンカーフレームを積極的に採用している。また近年の隅角部溶接ひび割れにも配慮した設計を実施している。

<おわりに>
事業実施に際しては沿道住民の皆様方のご理解ご協力のもと、大阪府、大阪市などの関係機関と、環境対策及びそれぞれとの事業調整などについて緊密に連携を図ることとしております。
来年度中には民営化も控えておりますが、引き続き工事はコスト削減に取り組みながら実施いたします。
今後とも関係職員一丸となって工事の安全と周辺環境への配慮を第一に考え、施工を進めてまいります。皆様方のご協力を今一度お願いするものです。

関西都市圏の高速交通ネットワークを構築

【大阪建設局 此花工事事務所 管内工事】
●島屋第2工区下部(U期)エ事(その2) ●島屋第3工区下部(U期)エ事(その2)
 三井住友・竹中土木建設工事共同企業体  熊谷・青木あすなろ建設工事共同企業体
●島屋第4工区開削トンネルエ事 ●島屋第5工区土留壁設置工事(その2)
 前田・勝村建設工事共同企業体  鹿島・鴻池建設工事共同企業体
●正蓮寺川工区基盤整備工事(その2) ●正蓮寺川第1工区土留壁設置その他工事
 戸田・東洋・JFE工建建設工事共同企業体  東亜・白石建設工事共同企業体
●正蓮寺川第2工区土留壁設置工事(その2) ●正蓮寺川第3工区土留壁設置工事(その2)
 清水・中林建設工事共同企業体  西松・壺山建設工事共同企業体
●正蓮寺川第4工区土留壁設置工事(その2) ●大開第4工区下部工事(その2)
 奥村・矢作建設工事共同企業体  ヤマトエ業株式会社
●高見工区下部工事 ●高見工区鋼製橋脚工事
 大本・佐伯建設工事共同企業体  横河・川鉄建設工事共同企業体

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