建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2003年4月号〉

寄稿

山陰地方の広域高速ネットワークの一翼を担う

国土交通省中国地方整備局 倉吉工事事務所長 矢田 光夫

矢田 光夫 やた・みつお
生年 昭和24年
平成 3年4月中国地方建設局鳥取工事事務所 鳥取南国道出張所長
平成 5年4月中国地方建設局倉吉工事事務所 工務第二課長
平成 7年4月中国地方建設局 道路部道路計画第一課長補佐
平成10年4月中国地方建設局松江国道工事事務所 副所長
平成12年4月中国地方建設局企両部技術管理課長
平成14年4月中国地方整備局倉吉工事事務所長
青谷羽合道路
〔路線の概要〕
一般国道9号は、京都市を起点に鳥取県・島根県の日本海沿岸を縦断し、山口県下関市に至る総延長670.1kmの主要幹線道路であり、特に自動車への依存度が高い山陰地方にあっては、産業・経済・日常生活を支える重要な役割を担っている。
鳥取県内の国道9号は、昭和28年度に道路改良工事に着手し、43年度に一次改築工事を完了したが、その後も交通需要の増加や車両の大型化に対応して各所でバイパスや現道拡幅が計画的に整備されてきた。
しかし、阪神淡路大震災以降の長距離大型車両の急増など、近年の交通量の増加は著しく、東西に細長い鳥取県内においては、東の県都鳥取市と西の商都米子市を結ぶ唯一の生命線として、安全で円滑な道路交通の確保と時間距離の短縮が強く望まれている。

〔事業区間の概要〕
青谷町から羽合町にかけての国道9号は、日本海に山地部が迫る狭陰な地形を通過している。このため、急カーブ・急勾配部が多く、特に冬季における円滑な道路交通の確保が課題となっているほか、東郷湖羽合臨海公園に接していることから、夏期には海水浴客で大変混雑する状況となっている。
そこで、これらの課題を解決するため、昭和61年度に泊村から羽合町に至る延長5.4km区間のバイパス事業に着手した。
しかし、その後山陰自動車道が国土開発幹線自動車道として位置づけられたことから、その機能も担える一般国道の自動車専用道路として活用するため、平成元年度に都市計画変更を行った。また、平成4年度には青谷町から泊村にかけての延伸区間についても同様に、一般国道の自動車専用道路として事業に着手した。
▽起終点=鳥取県気高郡青谷町〜東伯郡羽合町▽延長=13.2km▽幅員=23.5m(4車線)▽構造規格=第1種第2級▽設計速度=100km/h

▲石脇第2高架橋
〔工事の概要〕
平成15年3月の暫定2車線供用に向けて、いよいよ工事の最終段階を迎えている。
当該道路は、海岸線から1km程度追い込んだ山地部を通っているため、構造物比率が約50%と比較的高く、整備効果の早期発現のためには、そのコスト縮減と工期の短縮が必須命題となることから、様々な新技術・新工法を採用している。
石脇第2高架橋(延長159m)では、4径間連続pcコンポを採用し、従来工法に比べて約14%のコスト縮減と工期短縮を図ったほか、園高架橋(延長382m)では、飯桁に安定さび生成処理を施した海浜・海岸耐候性鋼材を採用し、塗り替え費用等の低減によるライフサイクルコストの縮減を図った。また、泊高架橋(延長1020m)の うち485m区間においては、PRC中空床版橋を採用することで、従来工法に比べて約7%のコスト縮減を図った。
その他土工区間においても、発生材を活用したマサ土コンクリートによる法尻部の防草処理など、コスト縮減と資源の有効活用に配慮した施工を行っている。
▲工事の進む泊工区を望む H13年5月現在
〔整備効果〕
日本海国土軸の形成に向けた広域高速ネットワークの機能を担う道路として、山陰地方の地域連携はもとより、広域交流による地域産業の振興や冬季の安全で安心な道路交通の確保など様々な効果が期待され、地域の活性化と生産性の高い国土構造を支えます。

1.安全で安心な生活の確保
線形不良個所の回避による安全で快適な高速走行が確保され、災害や事故の発生時も代替路が確保されることで、緊急車両の出動や安定した社会経済活動を支えます。

2.広域交流の促進
交通隘路の解消と時間距離の短縮で、地域間の人・物・情報の交流を促進し、交流機会や交流範囲が拡大します。

3.地域の振興
観光地の連携強化による観光客の増加や、生鮮品出荷範囲の拡大、産業立地条件の向上など、地域の活性化に寄与します。

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