建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2003年4月号〉

寄稿

名古屋都市圏と三河地域の発展のために

国土交通省中部地方整備局 名四国道事務所長 辻 保人

辻  保人 つじ・やすと
出身地 愛知県
昭和62年4月建設省 入省
平成5年7月北陸地方建設局 新潟国道工事事務所 調査課長
平成7年11月北陸地方建設局 道路部 道路計画第一課長
平成11年10月道路局 路政課長補佐
平成13年4月中部地方整備局 名四国道工事事務所長
はじめに
▲東海環状自動車道・猿投グリーンロード橋付近
名四国道事務所は、名古屋と四日市を結ぶ国道23号「名四国道」を建設するため、昭和34年に設置された事務所ですが、現在は、23号名豊道路(名古屋〜豊橋)や東海環状自動車道の豊田〜瀬戸間のほか、主に愛知県三河地域の幹線国道の建設事業を担当しています。
以下、主な事業について概要をご紹介します。
三河地域の快速道路「名豊道路」
国道23号名豊道路は、名古屋と豊橋を結ぶ延長73kmの地域高規格道路であり、知立バイパス、岡崎バイパス、蒲郡バイパス、豊橋バイパス、豊橋東バイパスからなっています。名豊道路は、国道1号を走る通過交通のバイパスとして機能するとともに、名古屋港、衣浦港、三河港及び中部新国際空港の交通・物流拠点を相互に連結し、東名高速道路や第二東名と連結する国際交流機能を果たします。
同時に、全体延長73kmに30箇所以上、つまり、およそ2kmに1箇所の間隔でインターチェンジがあり、沿線の都市を効率よく結び、日常の地域の足としても便利な、いわば「三河地域の快速道路」として機能する道路です。そして、今まで周辺の生活道路に入り込んでいた交通の相当部分が名豊道路に乗ることによって、生活道路の安全性や環境が向上するとともに、歩行者・自転車利用者を重視した生活道路の再生もしやすくなることが期待されます。
名豊道路は全体延長73kmのうち、開通区間は34km(46%)、事業費ベースでの進捗率は約3分の2程度となっています。現在、岡崎バイパス(西尾東〜家武)及び豊橋バイパス(大崎〜野依)を15年度末開通を目標に工事を進めています。また、昨年2月には豊橋バイパスの神野新田交差点の立体化、10月には知立バイパス(豊明〜上重厚)の4車線化が完成し、連日発生していた数キロに及ぶ渋滞が大幅に緩和しました。全線開通までには、まだまだ多くの費用と年月を要する事業ですが、今後も地域の皆様のご理解、ご協力をいただきながら、一日も早い全線開通及び渋滞区間の4車線化等に取り組んでいきたいと思います。
名古屋圏の大動脈「東海環状自動車道」
東海環状自動車道(愛称MAGロード)は、名古屋市の周辺30〜40km圏に位置する愛知・岐阜・三重3県の豊田・瀬戸・土岐・関・岐阜・大垣・四日市等の諸都市を環状に連絡し、第二東名・第二名神高速道路、東名・名神高速道路や中央自動車道・東海北陸自動車道等と広域的なネットワークを形成する延長約160kmの高規格幹線道路です。
これにより、沿線都市の連携強化や周辺地域との交流を促進するとともに、都市内の通過交通と都市の内々・内外交通の機能を純化して交通混雑の緩和を図るなど、名古屋圏が産業・経済・文化等の中核圏域として発展していくための基盤として大きな役割を果たすことが期待されています。
2005年の開通に向けて
東海環状自動車道約160kmのうち、現在、第二東名に接続する豊田東JCTから東海北陸道に接続する美濃・関JCTまでの73km区間を重点的に整備を進めています。この区間は2005年に開港予定の中部新国際空港や国際博覧会「愛・地球博」のアクセス道路としての機能も有することから、2005年までの開通を目標として工事を進めています。この73km区間の整備は、中部地方整備局の4事務所及び日本道路公団が分担して工事を進めていますが、当事務所では愛知県の豊田〜瀬戸地域を担当しています。昨年10月には、豊田・瀬戸市境の猿投山トンネル(4.4km)が貫通しましたが、愛知県内では最長、全国でも12番目の長大トンネルとなります。 2005年の開通まで2年余りと残り少ない時間の中、事務所を挙げてトンネル、橋梁及び改良工事を進めています。
▲東海環状自動車道・猿投高架橋
(瀬戸側から豊田側を望む)
東海環状自動車道の自然環境保全施策
東海環状自動車道は愛知高原国定公園等の自然豊かな地域を通過することから、自然環境への負荷を極力抑制し、生態系を保全するため、様々な取り組みを行っています。地域の自然環境に詳しい専門家にご参加いただき、現在進めているホタル護岸、表土の活用方法などについてアドバイスをいただきながら工事を進めています。また、土工部ののり面の一部を郷土種であるコナラ林への復元をめざし、地元小中学校のみなさんの育てたドングリをのり面に植樹する「ふれあい緑化」事業を進めています。
その他の主要事業
当事務所では、名豊道路及び東海環状自動車道のほかにも、以下のような三河地域の幹線国道の建設事業を進めています。
23号名四バイパス(共和〜豊明)は、現在4車線による暫定供用(完成6車線)となっていますが、10万台/日超える交通量が通過し、交通容量不足となっています。今年3月に開通予定の第二東名と重複する区間の6車線化及び環境施設帯や遮音壁設置などの環境整備を進めています。
153号足助バイパスは、足助町の中心を通過する現道が幅員狭小と線形不良のため、近年の自動車を中心とする交通体系に対応できず、また、紅葉の名所である香嵐渓の見物客をはじめ行楽シーズンに集中する交通による渋滞が著しいことから、道路交通の安全確保、円滑化のために計画された延長4kmのバイパスです。平成6年に現道拡幅部400mを供用し、現在、橋梁工事及びトンネル着工のための改良工事を進めています。
155号豊田南バイパスは、豊田市を中心とする急激な都市化の発展に伴う交通混雑、交通事故の多発を抜本的に解決するために計画された延長約13kmのバイパスで、平成2年度までに一部暫定2車線開通しました。現在、豊田刈谷線〜東名豊田IC線間の整備を進めています。
道づくりとコミュニケーション
私たちの仕事は、地域に密着した事業を、地域とコミュニケーションを重ねながら進めていくものです。それぞれの事業が地域住民やユーザーから十分な理解を得られるように、そして地域の道づくりに関して多くの方々と価値観を共有することができるように努める必要があります。
このような観点から、名四国道では、地域住民やユーザーとのコミュニケーションを深めるための取り組みを進めています。名豊道路沿線地域では、もっとface-to-faceに、双方向で、いろんな情報を共有しながら、車座集会的にコミュニケーションを図ろうということで、平成8年から「楽・学・倶楽部」において地域のオピニオンリーダーの方々と率直な意見交換を実施しています。
昨年10月の23号知立バイパス(豊明〜上重原)の4車線化が完成した際には、名豊道路をはじめ今後の三河地域の道づくりについて、住民の方々と一緒に考える機会として、記念フォーラム「三河の魅力と地域づくり」を開催し、率直な意見交換が行われました。
また、平成13年3月には東海環状自動車道の役割など楽しみながら学べる施設として、豊田市鞍ケ池公園内に「magロード館」をオープンし、現在までに10万入超のご利用をいただいています。
▲MAGロード館・入場者10万人達成 ▲知立バイパス4車線化フォーラム
=パネルディスカッションの様子
おわりに
今後とも、地域の文化、自然を尊重し、住民やユーザーの多様な価値観を吸収してこれらの事業に取り込むと同時に、事業の執行にあたっては、市町村をはじめ多くの関係機関並びに工事の設計や施工を担当する企業とのパートナーシップのもと地域に貢献できるよう職員一同努めていきたいと思います。

HOME