建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2003年2月号〉

寄稿

活力ある県央地域の実現を目指して

新潟県 三条土木事務所長 桑原 始

桑原 始 くわばら・はじめ
昭和45年3月新潟大学農学部卒業
昭和45年4月新潟県入庁(六日町土木事務所)
平成 9年4月土木部技術管理課課長補佐
平成 1年4月土木部監理課企画主幹
平成 3年4月三条土木事務所長

三条土木事務所の管内は、新潟県のほぼ中央(県央地域)に位置し、三条市・加茂市・栄町・田上町・下田村の2市2町1村で構成され、面積約600平方キロメートル、人口約15万7千人の地域である。
産業は、稲作を中心とした果樹・野菜・花木等の農業をはじめ、古来から「ものづくり」が盛んな地域で、特に三条の金物、加茂の桐ダンスは全国有数の地場産地として知られる。しかし近年、安価な外国製品との競合による需要の減少、産業の空洞化等の深刻な問題を抱え、グローバル化による厳しい経済環境に適応するため、新技術・新製品の開発や製品の高付加価値化といった生産性の向上に地域をあげて取り組んでいる。

交通網は、北陸自動車道・上越新幹線の高速交通網と国道8号・403号、信越本線が平野部を縦貫し、これを補う形で国道289号・290号の2本の国道と、主要地方道・一般県道が道路網を形成している。また、三条市では新幹線の駅と高速道路のインターが隣接し、交通の要所として今後の発展が期待されている。
主要な道路事業は、国道289号の交通不能区間(新潟県下田村〜福島県只見町、延長約20.8km)の工事が北陸地方整備局・福島県・新潟県の3者で急ピッチに進められ、平成13年8月には県境トンネル(延長約3.2km、北陸地方整備局工事区間)に着手した。工事が完成すると、南会津地方や広く北関東地方との交流により、当地域の社会経済活動の活性化に繋がるものと大きな期待が寄せられている。

また、渋滞対策と地域づくり基盤として、国道403号のバイパス工事を「三条北バイパス(延長8.3km)」と「小須戸・田上バイパス(延長7.8km)」の2工区で進めており、この路線は、信濃川右岸の三条市・加茂市・田上町の産業経済活動の動脈であると共に、通勤・通学等の生活道路としても重要な役割を果たしているが、現道は幅員が狭く沿道に人家が密集し、歩道未整備区間が多いことから、拡幅工事が難しいとされていた。それらを受けて大規模なバイパス計画としたもので、現在までに「三条北バイパス工区」の2.8kmを供用している。一方、国道8号と国道403号を結ぶ最短ルートとなる主要地方道長岡栃尾巻線の「加茂市〜白根市」間では、延長約3.9kmのバイパス事業を進めているが、この区間は同路線の中でも交通量が多く、特に五反田橋は通勤・通学による渋滞が恒常的に発生するため、平成7年にバイパス事業に着手した。現在、道路部の暫定盛土、加茂信濃川大橋(仮称、延長505.8m)の下部工事を実施中で、平成20年完成を目指し工事を進めている。
治水事業は、平成12年7月の豪雨により田上町の才歩川・山田川流域で発生した、住宅・農地の大きな浸水被害対策として、平成14年度に「床上浸水対策特別緊急事業」が採択され、現在、用地・物件補償を進めている。この河川は、河積が狭小かつ一部天井川であるため毎年のように浸水被害が発生しており、地元住民からも早期改修を要望されてきたが、5年後には改修が完了する予定である。

他にも、バリアフリーまちづくり事業として、公共公益施設を利用する交通弱者の安全確保を目的とした歩道整備や中心市街地活性化に向けた街路事業、火山砂防事業などの幅広い分野で様々な事業を実施している。
現在、効率・効果的な行政運営の観点から、市町村合併を視野に入れた広域行政が議論されているが、一方では地方分権が着実に推進されており、21世紀は地域間競争の時代になると思われる。この地域間競争を優位に展開するためのキーワードは“連携”と“交流”で、これを支える「道路ネットワーク」整備を着実に進め、安全・安心な活力のある県央地域づくりに向け努力して行きたいと考えている。


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