建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2003年1月号〉

寄稿

環境と人に優しい道づくリ

国土交通省関東地方整備局 川崎国道事務所長 関口 利昭

関口 利昭 せきぐち・としあき
生年月日 昭和23年9月20日生
出 身 群馬県
昭和47年 日本大学 理工学部 土木工学科卒
昭和42年4月建設省入省
平成 5年10月横浜国道工事事務所 調査第二課長
平成 7年4月関東地方整備局 河川部 建設専門官
平成 9年4月八ツ場ダムエ事事務所 副所長
平成11年4月相武国道工事事務所 副所長
平成13年6月関東地方整備局 道路部 交通対策課長
平成14年4月現職
▲国道15号 蒲田駅周辺整備
はじめに
川崎国道事務所は、人口、産業集積の高い地域である首都圏西部・南部地域の国道15号、16号、246号、357号、409号などの幹線道路の整備とともに、南北に細長い川崎市の縦方向の交通需要に対応する川崎縦貫道路などの広域幹線道路網の調査を通じて、環境と人に優しい道づくりに取り組んでおります。
環境と人に優しい道づくリ(事業概要)
1.国道15号
蒲田駅周辺整備事業
国道15号と環状8号線が交差する南蒲田交差点は、東京都大田区の中心である蒲田地区に位置し、交差点容量の不足や、鉄道踏切によって慢性的な交通混雑が発生しており、生活道路への通過交通の進入など地域住民の生活環境に悪影響を及ぼすとともに、羽田空港へのアクセス性の低下も見られます。
このため京浜急行線の連続立体事業による鉄道踏切の除去とあわせ、南蒲田交差点の立体化を図ることで、交通混雑を緩和し、沿道環境の改善を図るとともに、蒲田駅の交通結節機能の向上を図ることを目的として、平成13年度に新規事業化を行い、平成14年3月20日に都市計画変更されました。
平成14年度は、前年度に引き続き、設計・用地買収を実施しています。
川崎15号環境整備
川崎市内の国道15号は、主要幹線道路で大型車交通量も多いため周辺環境に及ぼす影響も大きいことから、環境の改善を図ることが急務となっています。このため沿道住民及び沿道利用者の意見を取り入れるpi方式(パブリックインボルブメント)により、環境改善方針等の検討を行っているところです。
平成14年10月5日には、沿道住民も参加して「リニューアル着工式」を開催しました。今後は、環境改善方針にそって工事を進めていきます。
▲国道15号 川崎15号環境整備
完成予想パース
2.国道16号
町田立体(保土ヶ谷バイパス)
保土ヶ谷バイパスは、東名高速道路、横浜新道及び一般国道246号等の主要幹線道路を効果的に連絡するとともに、国道16号横浜市、町田市及びその周辺の交通混雑緩和を目的とした自動車専用道路です。
このうち、慢性的な交通渋滞を引き起こしていた、横浜市保土ヶ谷区今井町〜東京都町田市鶴間(東名横浜町田ic)までの延長10.8km区間についての6車線化が、平成9年12月26日までに供用しています。
東名横浜町田ICから八王子側約2.1km区間(町田立体)については、平成13年11月26日に都市計画変更が完了し、平成14年度新規事業化されました。
平成14年度は、測量・地質調査、道路設計、用地測量・調査を実施しています。
3.国道246号
新石川立体
新石川地区は、港北ニュータウンや横浜市北部地域の開発により首都圏近郊の住宅地として著しい発展をとげている地域です。
新石川立体事業は、一般国道246号と県道荏田綱島線が交差する新石川交差点を立体化し、交通の安全及び道路環境の改善を目的とした事業です。
平成13年度までに、一部取得済み用地を活用し、暫定的に下り車線に左折レーンを設け、渋滞対策を図りました。
平成14年度は、引き続き用地買収を進めるとともに、立体下部工に着手する予定です。
▲国道246号 新石川立体現況写真
江田市ヶ尾拡幅
江田市ヶ尾拡幅は、横浜市青葉区荏田西一丁目から横浜市青葉区市ヶ尾町に至る延長約1.1kmの区間で、日常化しつつある渋滞の緩和並びに快適な歩行空間の確保、大気・騒音等の環境改善を図ることを目的とした事業です。
平成14年度は引き続き拡幅工事を進めるとともに、擁壁工事や電線共同溝工事についても進めています。
4.国道357号
国道357号(東京湾岸道路)は、都心部で悪化する交通混雑の緩和と東京湾岸地域の発展に資するため、東京湾外周に沿って計画された道路であり、当事務所は、東京都江東区新木場(荒川右岸)から神奈川県川崎市東扇島地先(横浜市境)に至る28.4kmを担当しています。
東京港トンネル(一般部)
東京港トンネル区間は一般部の整備がなされておらず、自動車専用道路への交通集中による渋滞が著しい箇所です。一般部の整備により、渋滞を緩和するとともに内陸部から臨海部への交通転換をうながし、都心部の生活環境の改善等に資するものです。
平成14年度に新規事業化され、現在、調査・設計を進めています。
▲国道357号 東京港トンネル(一般部)
完成予想パース
臨海副都心地区
臨海副都心の有明地区では湾岸道路と都道環状2号線及び放射34号線との立体交差事業が計画され、東京都からの受託により平成11年度より立体化工事に着手しています。
平成14年度は、引き続き環状2号線の橋梁上部工事を推進するとともに、放射34号線においては、改良工事・擁壁工事等を実施しています。
低濃度説硝技術の開発
大都市圈においては、人口、産業、交通の過度な集中から自動車や工場等から排出される二酸化窒素等による大気汚染が環境問題における重要な課題になっています。このため道路トンネルの換気塔から排出される低濃度の脱硝技術の開発に平成7年度より取り組んでおり、一定の成果をあげているところでありますが、さらに実機適用を目指し、平成13年度より新たに吸着式低濃度脱硝実験及び吸収式低濃度脱硝実験設備を設置しました。
平成14年度は、稼働実験を開始しています。
▲低濃度脱硝実験設備
羽田共同溝
羽田空港旧B滑走路下の共同溝工事を平成13年度からの3年国債で発注しており、今年度は本体工に着手する予定です。
5.国道409号(川崎縦貫道路)
川崎縦貫道路は、東京湾アクアライン及び東京湾岸道路と接続し、南北に細長い川崎市の都市機能拠点を相互に連絡し市域を縦貫するなど業務核都市としての都市基盤の骨格となる道路です。
このうち東京湾岸道路の浮島ジャンクションから国道15号までの延長約8km間をT期事業として首都高速道路公団と一体となり事業を進めており、平成14年4月30日には、首都高速川崎縦貫線浮島〜殿町間3.5kmが供用したところです。
平成14年度は、引き続き首都公団において自動車専用部の工事を進めるとともに、自動車専用部の完了した区間については、引き続き当事務所において街路部の整備を進めています。
またU期区間(国道15号〜東名高速、約14.4km)については、川崎縦貫道路計画調整協議会」に於いて、川崎縦貫道路を取り巻く周辺環境に応じた計画等の再検討が必要であり、引き続きこれらの検討を進めていきます。
▲国道409号 川崎縦貫道路
おわりに
当事務所では、「環境と人に優しい道づくリ」をテーマに、PI手法を用いた沿道環境改善やバリアフリー等の地域密着型の施策を進めるとともに、活力とゆとり、潤いのある国土・地域づくりを進めるために「都市再生の支援」「広域交流と物流効率化の支援」といった広域的施策も行っており、21世紀の課題に対応した道路行政に取り組んでおります。

HOME