建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2002年11月号〉

寄稿

安全な地域、快適な未来をめざします

国土交通省中部地方整備局 沼津工事事務所長 大野 昌仁

大野 昌仁 おおの・まさひと
愛媛県出身
平成元年4月建設省入省
平成7年4月中国地方建設局 岡山国道工事事務所 調査課長
平成10年1月中国地方建設局 道路部 道路計画課長
平成11年4月道路局 高速国道課 課長補佐
平成13年8月中部地方整備局 沼津工事事務所長
はじめに
沼津工事事務所は、静岡県東部・伊豆地域の社会資本整備を担当しており、治水事業関係として、狩野川の改修及び維持修繕工事、水防や巡視及び許認可などの管理業務、富士海岸の保全施設整備工事、狩野川上流部の砂防工事、道路事業関係として、伊豆縦貫自動車道、一般国道1号、138号および246号の改築工事を担当しています。
主要事業の概要
1.「河川事業は緑の復元による環境の創出も行います」狩野川事業
伊豆半島のほぼ中央部を南から北へ流下する狩野川は、流域の人々の生活、風上・文化の形成に密接に関わってきた「ふるさとの川」です。現在の狩野川は、その清らかな流れによって、アユ、アマゴ、ヤマセミ等が生息する優れた自然環境や、温泉群で知られる風光明媚な景勝地として、親しまれています。反面、狩野川は地形的な要因等からたびたび洪水を引き起こし、長い間、沿川の人々の生命や財産を脅かす存在でした。特に、昭和33年の狩野川台風では未曾有の大被害となりました。その後、地元の悲願であった狩野川放水路が昭和40年7月に完成し、堤防・護岸の整備とともに、流域の安全対策を進めてきました。また、平成10年8月・9月には深刻な浸水被害が支川来光川等で発生し、「河川災害復旧等関連緊急事業」として平成14年度の完成を目指し、現在取り組んでいます。特に本年は狩野川の直轄改修に着手して75周年になり、10月26日にはこれを記念した行事を行いました。
狩野川には、自然河川として全国に知られた柿田川に代表される緑豊かな河川環境がいまも残っています。この河川環境を保全し、後世に残していくために、地元環境保護団体や有識者等の意見を聞きながら、河川環境の保全・創出を目的とした「自然共生型事業」を実施していきます。
▲来光川、柿沢川の状況(h10.8.30) ▲柿田川環境護岸完成予想図
2.「美しい海岸は365日おだやかな海岸であって欲しいから」  富士海岸概要
富士海岸は、東は沼津市の沼津港西側から、西は庵原郡蒲原町堰沢までの約23kmにわたる海岸の総称で、日本でも最も深い海湾である駿河湾の奥に位置しています。
当海岸は、その地形的特性から太平洋の強大な波浪が直接侵入するために、これまでに幾度となく高波による被害を受けてきました。このため、直轄海岸事業が昭和42年から始められ、日本の海岸の中でも有数の高波浪から背後の人命・財産を守るため、高さ17mの堤防の整備を進めるとともに昭和30年代後半より進んだ海岸浸食に対しても離岸堤、消波堤を設置し、波のエネルギーを弱めることで対応してきました。
また、浸食対策として砂浜を自然な形に戻し、波の打ち上げを低減するための養浜工や局所的な浸食に対する工事を継続実施し、より快適で安全な富士海岸の整備を推進していきます。
▲駿河湾
3.「ハード&ソフトの総合対策で土砂災害を防ぎます」  狩野川砂防概要
砂防事業は、土石流などの土砂災害から人命、財産等を守るとともに、下流部への土砂流出による河床上昇にともなう氾濫防止のために、流出土砂の制御を目的として行うものです。当事務所の砂防事業は、昭和34年から狩野川の上流域である田方郡天城湯ヶ島町、中伊豆町、修善寺町の3町で実施しており、その計画区域は狩野川河口から約25kmの修善寺橋を起点とした上流側流域270平方キロメートルの範囲で砂防堰堤、床固工群等の施設整備を行っています。 4.「人中心の豊かな地域づくりのために」道路事業
人と車が共存する交通圏づくり、世界に開かれたネットワークづくり、地域の個性が生きる道路づくり、豊かで安定した生活を支える道づくりの4つの道路整備目標に沿って、伊豆縦貫自動車道、一般国道1号、138号及び246号の整備を進めています。その中でも、重点的な整備を進めている東駿河湾環状道路(延長15km)は、沼津・三島市域の交通混雑の緩和を図るとともに、伊豆縦貫自動車道の一部として、伊豆地域の発展に寄与する道路です。現在、用地取得は約9割に達しており、高架橋工事や改良工事を中心に事業を進めています。
▲梅木第4砂防堰堤

▲沢地川橋施工状況 ▲長泉JCT(仮称)完成イメージ
おわりに 豊かな自然と観光資源に恵まれた伊豆地域では、観光入れ込み客数が年々減少するなど、地域の活性化が喫緊の課題となっています。今後、住民の暮らしやすさに寄与する社会資本整備をいかに地域の発展に結びつけていくかが重要であり、地域の皆様の声を聞きながら地域と一体となって、また、自然との共生・調和をめざして伊豆地域の社会資本整備を進めたいと考えています。

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