建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2002年11月号〉

寄稿

安全で快適な、そして魅力ある地域づくりを

国土交通省中部地方整備局 多治見工事事務所長 後藤 宏二

後藤 宏二 ごとう・こうじ
静岡県出身
昭和56年4月建設省入省
昭和62年4月中部地方建設局 天竜川上流工事事務所 砂防調査課長
平成 3年4月関東地方建設局 企画部 電算情報課長
平成 4年10月大臣官房 監察官
平成 6年11月河川局 傾斜地保全課 課長補佐
平成 7年4月河川局 防災課 災害査定官
平成 9年4月沖縄開発庁 沖縄総合事務局 開発建設部 技術管理官
平成11年4月中村市 助役
平成14年4月中部地方整備局 多治見工事事務所長
はじめに
多治見工事務所は、岐阜県東濃地域の中心都市である多治見市に所在し、岐阜・長野両県にまたがる木曽川流域(中津川市、上松町、大桑村、南木曾町、山口村)と、庄内川流域(多治見市、土岐市、笠原町)における砂防事業及び一般国道19号、21号の改築・管理、高規格幹線道路である東海環状自動車道の改築事業を担当しています。
事務所の沿革は、昭和12年に旧内務省名古屋土木出張所土岐川砂防工場及び中津川砂防工場として発足し、中津川・落合川・庄内川流域における砂防事業に着手したことに始まり、その後、昭和23年に建設省中部地方建設局(現国土交通省中部地方整備局)多治見工事事務所に改称され、現在に至っています。
その間、昭和31年より一般国道19号の一次改築工事に着手するとともに、昭和36年からは一般国道21号の管理・改築も併せて担当することとなりました。また、平成元年には名古屋市の周辺30〜40km圏に位置する諸都市を環状に連絡する東海環状自動車道の建設に着手しています。一方、砂防事業においても昭和53年に、これまでの中津川・落合川・庄内川流域に加えて木曽川上流域(長野県域)を、直轄施工区域としています。
1.砂防事業の概要
(1)木曽川流域の砂防事業
木曽川は、長野県木曽郡木祖村鉢盛山(標高2,446m)を源とし、古来から木材の産地として名高い木曽谷を流れ下り、落合川・中津川・阿木川・飛騨川等の諸河川を合わせた後、濃尾平野に出て伊勢湾に注ぐ、流域面積5,275平方キロメートル、幹線流路延長227kmの一級河川です。
木曽川流域における直轄施工区域は、長野県の木曽谷から岐阜県中津川市に至る木曽川の左岸側に位置し、南北約42km、東西約10km、流域面積約538.0kmの流域であり、木曽山脈(中央アルプス)の木曽駒ヶ岳、空木岳から東南端に位置する恵那山に連なる標高1,500〜3,000m級の山々に囲まれた山岳地帯です。
当該流域は、地形が急峻であることに加え、地質的にも風化の著しい花崗岩地帯であり、断層も多く存在していることから土砂の生産が活発な地域となっています。このため、昭和7年の四ツ目川の大災害、昭和28年の南木曾町蛇抜け(土石流)災害、昭和40年・41年連年しての南木曾災害など、度重なる土砂災害を被ってきました。
流域内には、中津川市を初めとする市街地・集落が開けるとともに、重要交通網である一般国道19号、jr中央西線が通過しており、これらを土砂災害から保全する基幹的砂防施設を整備するとともに、多数存在する土石流危険渓流対策を鋭意進めています。現在建設中の主要施設としては、北股沢床固工群(上松町滑川)、浦川第3砂防堰堤(大桑村伊那川)、四ツ目川遊砂工(中津川市四ツ目川)等が挙げられます。
また、自然環境豊かな地域であることから砂防施設の建設にあたっては、自然環境調査を実施すると同時に、環境や景観を配慮した施設の整備に努めています。
砂防施設の整備を進める一方、雨量計、土石流センサーや監視カメラの設置等、迅速かつ的確な気象・防災情報の収集と伝達を目的としたソフト対策も進めており、ハード対策とソフト対策の両面より、土砂災害に対し安全な地域づくりを目指しています。 (2)庄内川流域の砂防事業
庄内川は、岐阜県恵那郡山岡町夕立山(標高727m)を源とし、幾つかの支流を合わせて流下し、名古屋市の北西部を貫流し伊勢湾に注ぐ、流域面積1,010平方キロメートル、幹線流路延長96kmの一級河川です。
庄内川流域における直轄施工区域は、多治見市、土岐市、笠原町にまたがる7河川(肥田川、妻木川、生田川、笠原川、市之倉川、高田川、大原川)、流域面積にして149.7平方キロメートルの流域において実施しています。
当該流域は、陶土に適した土岐口陶土層が分布することから、古くから美濃焼の里として知られており、全国でも有数の陶磁器産業地域として発展してきました。そのため、長期間にわたって陶磁器生産のための陶土採掘や燃料としての山林伐採が盛んに行われ、広範囲に禿げ山化が進行し、少量の降雨によっても容易に土砂流出が起こるなど、土砂災害を頻発させてきました。国直轄による砂防事業は昭和12年度より着手され、これまでに、多くの砂防堰堤、床固工群、渓流保全工等を施工してきました。特に、昭和27年より施工された団子山山腹工では、我が国における最初の等高線壕工法を採用するなど、禿げ山の緑化に向けての取組みが行われてきました。
流域内は名古屋市のベットタウンとして、急速に宅地化が進行している地域でもあることから、多数存在する土石流危険渓流対策を重点的に進めるとともに、地域プロジェクトとの連携や環境・景観に配慮した施設の整備に努めています。また、市街地に隣接する山麓斜面を一連の緑地帯として保全・創出し、緑豊かな都市環境と景観を創り出すことを目的に土岐川流域グリーンベルト構想の検討を進めており、その一環として、山腹工として整備した笠原の森(森下山腹工)の再整備を、笠原中学校と協働で行っています。
2.道路事業の概要
(1)一般国道19号
一般国道19号は、名古屋市を起点とし、岐阜県東濃地方を通り、木曽谷を経て長野市に至る延長266.6kmの主要幹線道路で、この内、多治見工事事務所は岐阜県下の55.5kmを管理しています。
一般国道19号の一次改築は昭和31年から着手し、昭和41年には管内全区間の2車線化が完了しました。しかし、その後の交通需要の増大に伴う交通渋滞が各所で発生し、幹線道路としての機能を維持することが急務となり、昭和36年よりバイパス建設を中心とした2次改築に着手しています。これまでに、内津(平成6年供用開始)、多治見(昭和49年供用開始)、土岐(昭和51年供用開始)、瑞浪(平成11年供用開始)バイパスの4車線化が完了しており、現在、恵那、中津川バイパス(暫定2車線で供用中)の4車線化及び恵那〜中津川間の現道拡幅工事を進めています。
一般国道19号沿線は、古くは中山道として栄え、近年では多治見、土岐、瑞浪市及び笠原町の東濃西部地域では、東濃研究学園都市構想をもとに先端技術開発の中心拠点としての発展を、また、恵那、中津川市を中心とする東濃東部地域は、恵那テクノパーク、中津川中核工業団地に見られるように自然と共生を図った田園工業都市づくりを目指しており、一般国道19号は幹線道路として地域振興の支援のため、更なる、整備推進が求められています。

(2)一般国道21号
一般国道21号は、瑞浪市を起点とし、岐阜市を経て滋賀県米原町に至る延長96.8kmの主要幹線道路で、この内、多治見工事事務所は瑞浪市〜可児市間の18.9km(重複区間除く)を管理しています。
一般国道21号の一次改築は昭和38年度より着手し、昭和41年度には管内全区間の2車線化が完了しました。その後、中央自動車道土岐インターの開通に合わせて、一般国道19号との接続点までの拡幅や登坂車線の設置等を完了させるとともに、昭和57年度からは可児改良工事に着手し、平成8年度に全線4車線化にて供用を開始しています。
一般国道21号は、一般国道19号と同じく、古くから東京と京都を結ぶ中山道として利用されてきました。沿線地域は名古屋圏の背後地として、大規模な住宅団地や工業団地が形成されており、地方の中核都市として発展を続けております。
現在は、交通混雑の緩和と活力ある地域づくりを支援し、さらに、東海環境自動車道へのアクセス道路としても機能する可児・御嵩バイパスの建設を推進しています。

(3)東海環状自動車道
東海環状自動車道は、名古屋市の周辺30〜40km圏に位置する愛知・岐阜・三重3県の豊田・瀬戸、土岐、美濃加茂、岐阜、大垣、四日市などの諸都市を相互に連絡する、延長約160kmの高規格幹線道路です。伊勢湾岸自動車道と一体となって環状道路を形成するとともに、東名高速道路、名神高速道路、中央自動車道、東海北陸自動車道、東名阪自動車道や名古屋圏の自動車専用道路などと連絡し、広域的なネットワークを形成する自動車専用道路として整備が進められています。
この内、第二東名高速道路と接続する豊田東jctから東海北陸自動車道と接続する美濃・関jct間の約73kmについては、愛知万博、中部国際空港を支援する重要路線であり、2005年春の供用を目指して鋭意建設を進めており、多治見工事事務所においては、笠原町〜八百津町間の約19kmの建設を担当しています。
笠原町〜八百津町間は、岐阜県東濃地方の丘陵地帯を通過することより、主要構造物として7箇所のトンネルと橋梁(橋長50m以上)が18橋あります。この内、木曽川と土岐川を渡河する橋梁は延長150mを越えるアーチ橋であり、また、白山・瀬田・大平トンネルの3トンネルは、延長が1,300mを超すものとなっています。施工区間中のトンネル延長の占める割合が約3割、橋梁延長の占める割合が約2割となっており、当事務所施工区間の大きな特徴となっています。また、当区間には、土岐南IC(仮称)、可児・御嵩IC(仮称)及び中央高速自動車道との接続のため土岐jctが設置されます。

▲中津川バイパス ▲可児・御嵩バイパス完成予想図
(東海環状自動車道可児・御嵩IC(仮称)付近)

▲土岐南IC(仮称)付近 ▲土岐JCT(仮称)付近
▲木曽川橋(仮称)付近
3.広報活動の積極的な展開
当事務所では、地域住民の方々に国土交通省が実施する事業の必要性・重要性を正しく理解していただくため、広報活動を積極的に展開しています。
その内のいくつかをご紹介いたします。
開放講座「水と街道」は、年間10回(5月〜2月、各月1回)の講座を開催し、砂防事業、道路事業の紹介を行うと同時に、地域の自然、歴史、文化についても知って頂くことを目的として、平成11年度より実施しており、今年度で4期目となっています。
「砂防講演会」は、昭和7年に発生した四ツ目川大災害を祈念して、昭和53年度より毎年、災害発生の日、8月26日に実施されている講演会で、防災意識の啓蒙・普及を目的としたものです。今年は、四ツ目川災害から70年の節目の年にあたり、「四ツ目川災害から70年/土砂災害のない地域をめざして」と題して実施しました。
その他、6月の土砂災害防止月間では、小学生を対象にした「砂防教室」や8月の道路ふれあい月間では、親子を対象にした「道路工事ふれあい見学会」などの多くの広報活動を実施しています。
▲開放講座
おわりに
多治見工事事務所では、東濃地方及び木曽南部地方の社会基盤整備の一端を、砂防事業・道路事業を通じて行っています。今後も地域の方々とのコミュニケーションを大切にし、安全で快適な、そして魅力ある地域づくりを目指していきたいと考えています。

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