建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2002年10月号〉

寄稿

総人口普及率96.1%

今後の展望を「合流改善事業」として、長期的には完全分流化を目指す

―普及活動として「下水道賞」受賞実績の数々

北見市企業局 下水道課長 田中 哲美

田中 哲美 たなか・てつみ
昭和24年 6月22日
北見市出身
昭和43年 北見市役所 奉職
平成 6年 都市計画課街路係長
平成 8年 下水道課計画係長
昭和12年 4月 下水道課長 現職
はじめに
北見市は、北海道の東部、網走支庁管内のほぼ中央に位置し、総面積421.08平方キロメートル、人口約11万人のオホーツク地域における産業、経済、文化の中心都市である。
気候は、内陰性気候で年間の降水量が少なく、全国有数の日照時間を有している。また、夏季の最高気温は30℃を超え、冬期の最低気温は−20℃以下となり、1年を通して寒暖の差が大きいことが特徴である。
明治30年に、高知より北光社移民団及び、屯田兵が入植して以来平成8年で開基100年を迎えた。
北見市の下水道の現状について
昭和37年より公共下水道に着手し、昭和38年より供用開始している。また平成4年度より特定環境保全公共下水道に着手し供用開始している。
排除方式については分流式一部合流式であるが、現在は分流式で整備を進めており、平成2年より合流区域の分流化を進めている。汚水の処理については、公共下水道、特定環境保全公共下水道ともに、北見市浄化センターにおいて、標準活性汚犯法により行っている。発生する汚泥の脱水ケーキ年間約6,800tについては、昭和57年より全量を農地に還元している。
平成13年度の整備状況は、認可面積3.809.2haのうち整備面積は3.079ha、浄化センターの処理能力1日当たり55,900立方メートルで普及率は96.1%に連している。
平成14年度の下水道事業としては、合流区域の分流化、浸水対策、普及対策、道道・街路・区画整理事業関連整俺等で、雨水管3.545m、汚水管5.410mの管渠布設工事を予定しております。また、浄化センターの整備については、水処理施設増設工事(初沈土木、管廊、放流管)を予定しており、平成19年供用開始を目指して工事を進めている。
また、当市の下水道事業の取り組みは、汚泥処理の消化ガスを都市ガスヘの原料として年間約70万m3供給し、平成4年度第1回「いきいき下水道賞」の建設大臣賞を受賞し、また、下水道資源の有効として汚水熱を引き出し、歩道及びバス停床面を暖める「暖かいバス停」の実施で平成7年度第4回「いきいき下水道賞」建設大臣賞を受賞している。さらに、失われた水辺空間の復活として平成4年度より水循環・再生下水道モデル事業を実施し、平成12年度建設大臣賞「甦る水100選」を受賞している。このように下水道事業を多くの市民に親しまれて、理解されるよう様々な機会を通じて取り組んでいる。
北見市の下水道の展望について
当市では、昭和63年の集中豪雨による浸水被害が生じたため、浸水対策及び公共用水域への影響の観点から平成元年度に「分流化基本計画書」を策定し、平成2年度に合流区域の分流化の認可を取得し、合流面積875haのうち平成13年度までに分流化面積178haを整備いたしました。
さらに、国土交通省では、公共用水域の水質改善に向け、平成14年度「合流式下水道緊急改善事業」が創設されたことから、当市においても平成14年度より3ヶ年で「合流式下水道緊急改善計画」を策定し事業実施に向けた計画的な合流対策を進める。初年度としては、基礎調査(資料収集)及び実態調査(降雨量・流量・水質調査)をし、現状における問題点の抽出をし、解析及びシミュレーションモデルの構築作業を行う。今後の具体的な合流改善対策として、事業量・費用を勘案し概ね10年で達成可能な当面の改善目標を設定して対策を実施する。
目標値としては、次の3項目について改善をする。
(1)汚濁負荷量:分流式下水道並み。
(2)公衆衛生上の課題:放流回数を半減させる。
(3)きょう雑物の対策:全ての吐きロできょう雑物の流出を極力防止する。
上記3項目の緊急改善をし、さらに長期的には完全分流化を目指して、合流改善事業を今後の下水道の展望として考えている。
最後に
下水道事業で様々な取り組みをしておりますが、北見市においては従来からの下水道の目的である雨水及び汚水の排除、処理を行うことによる浸水防止、河川、海、湖等公共用水域の水質保全、トイレの水洗化等を図るための整備はもちろんのこと、環境に対する社会の関心や、より豊かな生活環境の形成への人々の要求が高まっていること等を考慮し、限りある資源を有効に利用し、環境に対する負荷を小さくできる様な事業にも取り組んでいきたい。
■平成12年度建設大臣賞「甦る水100選」を受賞<
部門:下水道事業により水環境としてせせらぎなどを創出した
ホリカン川(延長2.9km)は、かつて幅1〜5mの堀込み水路であったが、流域の都市化に伴い浸水被害が発生するようになった。このため本市では、暗渠による雨水幹線整備を行い、平成5年度に完成した。
本事業は、暗渠整備により失われたホリカン川の創造的復元を目指して、雨水幹線上部のオープンスペースを有効活用し、せせらぎ水路、遊歩道、植栽などの整備による快適な水辺空間の創出を行った。
この事業では地元町内会代表を募った意見収集と、整備方針に関するアンケート調査により、地域住民の計画参加を果たした。これにより「自然的整備方針」とすることを行政と住民側の両者間において確認し、計画・設計を進めた。
このせせらぎ遊歩道は、散歩、ジョギング等の健康づくり、通学などを通して地域の方々に親しまれている。

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