建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2002年9月号〉

寄稿

平成18年度までに「蘭東下水処理場」で市全域をフォロー

人口普及率95.9% ―室蘭岳南山麓と鍵状に突出した絵鞆半島から形成

室蘭市水道部 下水道建設課長 岩内 洋

岩内 洋 いわうち・ひろし
昭和26年6月30日生(51歳)
滝川市出身
室蘭工業大学土木工学科卒
昭和50年4月室蘭市役所入所(都市建設部土木課)
昭和60年4月都市建設部都市計画課公園緑地係長
平成10年4月市民生活部清掃管理課長補佐
平成12年4月西いぶり廃棄物処理広域連合施設課長補佐(派遣)
平成14年4月水道部下水道建設課長
はじめに
室蘭市は、北海道の南西部に位置し、室蘭岳南山麓とこれより西に向かってかぎ状に突出した絵鞆半島から形成されており、面積は約81km2である。北は、室蘭岳山稜から噴火湾に臨むチマイベツ川を境にして伊達市と、東は鷲別川を境にして登別市と接し、南東は室蘭港を含み太平洋に面している。
本市は、明治3年に入植が始まり、明治5年には室蘭港が開港され、近代的なまちづくりが開始されると共に、明治25年に室蘭・岩見沢間に鉄道が開通したのに続き、明治40年代に製鋼所や製鉄所が臨海部に次々と開設されて、港湾と工業のまちとしての基礎がつくられた。その後、大正11年に市制を施行し昭和に入り、大恐慌後の軍需による産業発展で人口は大きく伸びたが、戦争により大きな被害も受けた。戦後は、鉄のほかにセメントや石油精製の工場も立地して大きな発展を遂げたが、第一次オイルショック以降の産業構造の変化により基幹産業の鉄鋼・造船などにおいて、生産縮小や人員削減等の合理化が進み、人口は昭和45年をピークに減少を続けている。
しかし近年は、既存企業の新分野への展開や新規企業の立地など、経済構造の高度化・多角化をはじめとして、環状道路網を形成する白鳥大橋の完成に伴い、新たなまちづくりを推進しているところである。
下水道整備の概要
室蘭市の下水道整備は、健康で快適な生活環境を目指して昭和26年から調査を開始したが、本市の地形が馬蹄形状で起伏が激しく、一処理区として整備していくことが困難であるため、蘭西、蘭東、崎守の3地区に分割して段階的に整備を進めることとなった。
蘭西地区は、人口密度の高い祝津地区を対象に、昭和31年から蘭西下水ポンプ場の建設に着手し、昭和39年には蘭西下水処理場の運転開始に伴い、本市で初めての水洗便所が可能な処理区域となった。
蘭東地区については、本市における唯一の平坦地であり、都市開発の必要から、昭和31年に区画整理事業に着手した。しかしこの地区は、海面との高低差が少なく湿地帯であるため、雨水、汚水の排除が自然流下では困難で、降雨時には家屋の浸水及び汚水の停滞という劣悪な都市環境を惹き起こすことから下水道整備が強く望まれたため、昭和38年から中島地区を対象にして、雨水排除を主眼とした合流式下水道の整備に着手した。昭和44年の区画整理事業の完成を機に、地区内のポンプ場の運転開始により当該地区の都市環境が著しく改善された。
崎守地区(白鳥台地区)については、計画的に整備された良好な住宅地の確保を目的として、昭和41年に白鳥台ニュータウンの建設着手に併せて下水道整備も進められ、昭和43年に崎守処理場の運転を開始し、昭和46年度で管渠の布設を完了した。
下水道計画は、昭和43年6月の都市計画法の改正による市街化区域が、昭和45年12月に決定されたことから、道路、公園、下水道を都市計画における必要最小限の基盤的な施設として整備するため、市街化区域の内、臨海部を除く区域を下水道区域として見直し、昭和48年3月、計画区域は5処理区、2,492ha(計画人口279,000人)として決定を見た。
蘭東地区の雨水及び汚水は太平洋海域に放流しており、加えて中島地区の汚水も室蘭港に無処理で放流されていることから、漁業資源に多大な影響を与えると同時に、公共水域の汚濁防止の面からも蘭東処理区に下水処理場の早期建設が要望され、昭和49年度に日本下水道事業団に委託して蘭東下水処理場の建設に着手し、昭和53年9月から6系列の内2系列が稼動を開始した。
その後、昭和54年10月に市街化区域の変更に伴い、昭和55年10月、計画区域を3処理区とし、2,634ha(計画人口219,000人)に変更すると共に、排除方式も中島地区のみを合流式とし、他の地区については分流式を採用することとした。
その後、本市の基幹産業の低迷に伴う著しい人口の減少から、平成元年12月に計画区域2,637.3ha(計画人口139,000人)1処理区、1処理場に変更した。更に、平成8年3月には、計画区域を2,667haに変更し蘭再処理場を休止することとし、平成11年度には、室蘭市総合計画の計画行政人口に合わせて下水道事業基本計画を変更し、計画人口を平成30年で109,300人とした。また、蘭東下水処理場については、平成18年度までに汚泥処理施設、水処理施設等を増設して現在の48,000立方メートル/日から60,000立方メートル/日とする計画である。
平成14年度は、事業費に13億3,000万円を計上しており、事業概要としては、継続して整備を進めてきた八丁平・本輪西地区を完了すると共に、新たに幌萌・陣屋地区に着手し、蘭北汚水4号幹線をはじめとする汚水管渠延長約14kmを整備する。また、祝津汚水中継ポンプ場については、処理水量の増加に伴い、停電等緊急時に対応するため自家発電装置を設置する。さらに、蘭東下水処理場については、本年度より3ヵ年かけて日本下水道事業団に委託して汚泥処理施設の増設工事を行う。現在の予定では平成18年度までに、汚水管渠、崎守汚水中継ポンプ場等の施設整備を完了し、崎守下水処理場を廃止して室蘭市全域が蘭東下水処理場による1処理区になり、計画区域の整備を完了する。
今後の課題としては、計画区域の整備を完了後、中島地区を中心とする浸水対策を含む合流式下水道緊急改善計画の策定や、蘭東下水処理場及び各地区のポンプ場の老朽化施設の改築・更新、老朽管渠の更生、市街化区域に隣接する地区の管渠整備などに着手したいと考えている。
▲本輪西汚水中継ポンプ場 ▲蘭東下水処理場全景

HOME