建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2002年10月号〉

寄稿

有野工事事務所管内の工事概要

阪神高速道路北神戸線(東伸部)・神戸山手線の工事概要

―完成に向けて精力的に事業展開―

阪神高速道路公団神戸建設局 有野工事事務所長 榎元清治

榎元 清治 えのもと・せいじ
昭和41年4月阪神高速道路公団入社
平成 9年5月大阪第二建設部 池田工事事務所 副所長
平成11年5月(財)阪神高速道路管理技術センターへ出向(企画第一課長)
平成13年5月神戸建設局 有野工事事務所長
▲北神戸線(東伸部)位置図
管内概要
北神戸線(東伸部)は、六甲山系の北側に位置することから、急峻な山岳地帯や大小の沢部を通過することになるため、構造決定については、周辺の地山状況、橋脚位置、架設方法など周辺景観との調和などを総合的に考慮し決定している。その構造比率はトンネル区間が約50%、橋梁区間が約30%、土工区間が20%となっている。
このうち、トンネル区間では有馬北トンネル(東行:1,810m、西行:1,883m)をはじめ、尾谷山トンネル(東行:232m、西行:262m)、畑山トンネル(東行:575m、西行:792m)があり、natm方式による掘削を採用し、いずれもトンネル掘削、二次覆工及び舗装が完了している。
橋梁区間では、中野高架橋、釜ヶ尾高架橋、船坂高架橋、丸山高架橋(以上コンクリート橋梁)及び西宮山口ジャンクション中国道連絡橋(鋼橋)があり、全ての橋梁が架設を完了している。
土工区間では、約100万立方メートルの切土施工になるため、地層の状況を確認しながら切土を進め、ほぼ工事を完了している。
平成9年6月に有馬北トンネルに工事着手して以来、既に全体の90%の進捗をみており、平成15年春の工事完成を目指して現在、舗装工事や遮音壁工事、電気施設等の工事を急ピッチで進めているところである。

主要工事の概要
○有馬北工区(写真1)
有馬北工区は、北神戸線(東伸部)の最西端に位置し、そのほとんどがトンネル区間となっており、当管内では最長トンネル(東行:1,810m、西行:1,883m)である。地層としては西側の有馬層群と東側の神戸層群に大別され、それぞれの地質は、有馬層群が火山性の溶結凝灰岩や凝灰角礫岩などの中硬岩であり、神戸層群が淡水性の堆積岩で、凝灰質泥岩や礫岩などから成り立っている。掘削は、natm方式による掘削(爆破工法と機械掘削工法の併用)を採用し、工事途中の湧水もほとんどなく、総じて標準的な施工となったものである。現在、トンネル内舗装も完了し、概成の状態である。

○中野工区(写真2)
北神戸線(東伸部)のほぼ中央に位置する中野工区には、建設コストの縮減と施工の合理化を目的として、鋼とコンクリートの複合構造である「波形鋼板ウェブPC箱桁橋」を採用している。波形鋼板ウェブPC箱橋とは、プレストレストコンクリート(pc)橋のウェブを波形鋼板に置き換えたコンクリートと鋼の複合構造で、1980年代にフランスで開発された合理的な構造形式であり、(1)主桁自重の軽減による支間の長大化、(2)高いせん断座屈耐力を得ることから補剛材を必要としない、(3)軸力に抵抗しないアコーディオン効果によりコンクリート床版のみに効率よくプレストレスが導入できる、(4)従来のコンクリートウェブに比べて現場作業が少なくなり、施工の合理化及び工期の短縮が可能になる、などの特徴がある。
中野高架橋では、波形鋼板に耐候性鋼板を使用し、波形鋼板とコンクリート床版との接合にはパフォーボンドリブ接合によるct形鋼―スタッド併用方式を採用するなど、新しい技術を取り込んだ橋梁としている。

○山口工区(写真3)
山口工区には、西宮北部地域の重要な水源地である金仙寺湖があり、この湖内を釜ヶ尾高架橋と船板高架橋(共にPC箱桁橋)が横断している。これら橋梁の工事にあたっては、湖の水質に関する万全の配慮を実施し、常時水質監視を実施する等、工事管理については慎重に対応した工区である。

○下山口工区(写真4)
北神戸線(東伸部)の終点となる下山口工区では、中国縦貫自動車道に接続する西宮山口ジャンクション(仮称)中国道連絡橋がある。鋼桁であるこの連絡橋は無塗装耐候性鋼材の使用、開断面箱桁の採用、rc端横桁の採用など技術的な特徴を持ち、中国縦貫自動車道を横断する部分(ブロック長:76m、ブロック重量約300t)については、中国縦貫自動車道を通行止し、国内最大の1,200t吊りクレーンを用いた一括架設を実施している。

[写真1]有馬北トンネル [写真2]中野工区全景
[写真3]山口工区船坂高架橋 [写真4]下山口工区中国縦貫自動車道横断区間
結び
北神戸線(東伸部)が完成すれば、中国縦貫自動車道と第二神明道路が結ばれ、名神高速道路吹田ジャンクションを経由する播州臨海地区への交通は、名神高速から阪神高速3号神戸線を利用する南回りと、中国縦貫自動車道から阪神高速7号北神戸線を利用する北回りの両ルートの選択が可能となる。また、北回りルートの完成により、阪神高速3号神戸線の交通が分散し、渋滞の解消や併走する国道43号の沿道の環境改善が図られる。更に、神戸建設局内(山手工事事務所所管整備路線)で整備促進中である阪神高速神戸山手線が完成すると、新神戸トンネルや六甲北有料道路を含めて南北の充実したアクセスが実現され、地域社会の活性化や防災機能の強化等に貢献することとなる。
平成15年春の工事完成を目途に今後も工事は継続していきますが、関係職員及び施工業者一丸となって常に「安全第一」を念頭におき、さらに周辺環境にも配慮しながら実施してまいります。皆様のご協力を今一度お願いするものです。

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