建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2002年9月号〉

寄稿

我が国の下水道整備の現状と課題

最近における協会の取組み

(社)日本下水道協会会長・青森市長 佐々木 誠造

佐々木 誠造 ささき・せいぞう
生年月日 昭和7年10月30日
昭和31年早稲田大学第一理工学部工業経営学科卒業
昭和44年4月青森三菱自動車販売且謦役社長(〜平成元年4月)
昭和59年4月青森商工会議所副会頭(〜平成元年4月)
昭和60年12月青森県公安委員会委員(〜平成元年3月)
平成元年5月青森市長(平成13年5月四選現在に至る)
平成元年11月青森県市長会会長(現在に至る)
平成 2年6月全国市長会副会長(〜平成3年7月)
平成 4年2月青森県国民健康保険団体連合会理事長(現在に至る)
平成12年6月日本下水道協会会長(現在に至る)
平成13年1月男女共同参画会議議員(現在に至る)
はじめに
本協会は、戦後、短い停滞の時期はあったものの、経済が順調に回復し、産業活動の活発化等に伴うさまざまな要因が生活環境の悪化や公共用水域の汚濁をもたらし、社会問題となりはじめた昭和39年4月に設立されました。
当時の下水道普及率は8%と現在の62%(平成13年3月末)に比較すると非常に低い状況でしたが、昭和30年代から始まった河川の汚濁は、全国主要都市内から近郊河川にまで広がりを見せている時期でした。以来、本協会は、立ち後れている下水道事業の急速な普及と健全な発達を図り、公共用水域の水質保全に資し、もって国民生活の向上に寄与することを目的に各種事業を行ってきました。
ここでは、紙面の関係上、本年度の主要事業項目を中心に紹介させていただきます。
平成14年度事業計画の主要項目
●今後の下水道事業推進に向けての課題等の調査検討
我が国の下水道利用人口は、全国的には半数を超えたものの、総都市数3,228市町村のうち、85.9%の5万人未満の2,773市町村は、27%と整備が著しく遅れている状況にあります。
一方、大都市等下水道の先進都市においては、施設の老朽化に伴う改築・更新を始め、都市内浸水対策及び合流式下水道の越流対策等の問題を抱えています。
このため、下水道事業を実施する地方公共団体の立場から、今後の下水道事業整備推進上の諸問題や維持管理を含めた経営のあり方等の課題について「経営委員会」において調査検討を行うこととしています。
また、地球規模的に高まりを見せている環境問題の一端を担うべく、下水汚泥の再資源化、環境ホルモン等への対応や下水道施設の設計指針や維持管理指針の規定等、下水道事業を実施するうえでの技術的諸問題について「技術委員会」において調査検討を行うこととしています。
「経営委員会」、「技術委員会」以外については、それぞれの目的に応じた調査検討等を行うこととしています。

●下水道事業推進のための施策の実現及び財源確保等の活動
下水道事業の推進にあたっては、前述のとおり、整備の遅れている中小市町村の整備促進とともに、整備の進んだ大都市等における施設の改築・更新を始め、高度情報化や循環型社会といった時代の要請に対する対応等の課題を抱えていることから、国の予算編成に合わせ、概算要求時点から年末にかけて、状況の推移を勘案しながら、機動的かつ弾力的に要望活動を行うこととしています。

●下水道事業推進に向けての広報活動の積極的展開と支援
下水道は、生活に密着した環境インフラであり、身近な環境問題を理解していただくうえで大変有効な施設であるにもかかわらず、施設の多くは地中に埋設されていたり、街中から離れたところにあることから目立たない社会資本であるといえます。広報活動は、見えにくい下水道を見えるようにするため、広く住民の理解を求め、下水道事業への支持を得る上において重要な活動と位置づけられます。本協会では、例年、9月10日に国土交通・環境両省主唱のもと、下水道整備促進を目的として全国的にさまざまな行事が展開されている「下水道の日」を側面から支援するとともに、下水道事業が円滑に推進されるよう、正会員である地方公共団体等の要望に基づき、長期的な視野に立ちつつ、次のような各種広報活動を行っています。

(1)下水道広報のあり方等の検討
近年、下水道の普及に伴い、下水道事業を実施する地方公共団体の規模や普及率等の程度により広報の手法や手段が異なりますが、いずれの場合においても広報は欠くことのできないものであることから、「下水道広報委員会」を設置し、広報のあり方や手法について調査審議を進め、「下水道広報マニュアル」や小学生を対象とした「下水道副読本」等を発刊し、配布しております。

(2)インターネットでの情報交換等
一般の方々に広く下水道を知っていただき、下水道に対する理解と関心を得るとともに、会員との情報交換の有効な通信手段としてホームページを開設し、各種の情報を提供するなど、インターネットの利便性を使った広報・広聴活動を推進しています。

(3)その他の活動
下水道事業の整備促進等に資する各種パンフレット、漫画、ビデオ・dvd等を制作し、会員に活用していただくとともに、一般紙やラジオ、小学生新聞等を使ってpr活動を行っております。また、下水道に関する幅広い分野の最新の技術、機器等を一堂に会し、展示・紹介する下水道展とともに、下水道関係者の情報交換や交流の場となるよう、下水道研究発表会を毎年開催しています。
▲下水道の日ポスター ▲下水道整備促進全国大会 ▲経営委員会
おわりに
以上、これまで紹介させていただいた事業の他、下水道用資器材にかかる認定工場制度による検査事業を始め、各種出版物の発刊、国際化に伴う活動等、広範囲の活動を行っています。
社会・経済情勢は、地方分権、規制緩和及び行財政改革、グローバル化など、大きな変貌を遂げています。
また、国民による情報公開と説明責任に対する要望の高まりなど、今までにない激変といえる時代を迎えています。こうした社会情勢の変化に伴い、下水道や本協会に求められるものが何かを的確にとらえ、下水道事業の整備促進に努めてまいります。

HOME