建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2002年9月号〉

寄稿

名古屋市の下水道事業の概要について

名古屋市上下水道局 下水道本部 下水道建設部計画課長 木村 三郎

木村 三郎 きむら・さぶろう
昭和49年名古屋市下水道局入所
昭和62年日本下水道事業団計画部出向
平成10年名古屋市下水道局主幹(汚泥処理処分担当)
平成13年名古屋市上下水道局下水道本部下水道建設部計画課長
名古屋市は、市域面積約326平方キロメートル、人口約217万人であり、地形は東部の丘陵地を除いておおむね平坦である。中部地方の代表的都市として古くから産業、交通の要所として、行政、経済面などさまざまな機能が集積している。
名古屋市の下水道の概要
名古屋市の下水道は、明治41年に創設工事に着手して、昭和5年には堀留、熱田(日本最初の活性汚泥法による高級処理施設)の両下水処理場の運転を開始している。その後も、市域の拡大に伴って順次施設整備を進め、平成13年度末現在で下水処理場15箇所、雨水ポンプ所39箇所、管きょ延長的7,260kmとなっている。人口普及率は97.1%であり、市街化区域の面積普及率は90.1%である。
▲掘留下水処理場(上部を公園に利用)
名古屋市における事業の取組み
平成12年9月11日から12日にかけて襲った東海豪雨は、日最大時間降水量97mm、最大日降水量428mm、総降水量566.5mmという驚異的な降雨により市内の約4割の地区が浸水し、伊勢湾台風以来の浸水被害が発生した。
このため、上下水道局では従来から進めている1時間50mmの降雨に対する雨水整備事業を一層推進していくとともに、東海豪雨を検証し、おおむね5年間の整備期間で、浸水安全度の向上に向けた新しい事業として「緊急雨水整備計画」を策定した。この計画は、貯留施設19箇所、ポンプ増強10箇所、管きょ増強等を整備内容としており、原則として1時間60mmの降雨に対応できるようにレベルアップを図り、同様な豪雨においても被害を最小限にとどめることができるように努めることとしている。
本市は、下水道計画区域のうち約6割が合流式で整備をしている。この合流式下水道の雨天時越流水は、水環境に与える影響が大きく、その改善を下水処理場における高度処理とともに取り組んでいくこととしている。
また、本市の下水道施設は、事業の歴史が長いことから耐用年数を超えたものが多く、改築更新、つまりリフレッシュ事業にも取り組んでいくこととしている。
さらに、下水道資源・資産の有効利用についても積極的に取り組んでいるところである。現在、下水汚泥焼却灰は陶管の原材料や土質改良材として有効利用を図っており、利用率は平成13年度で約75%となっている。併せて、下水管きょ内の空間利用として、管理用光ファイバーケーブルの布設も進めており、一層の下水道資源・資産の活用を図っていくこととしている。
▲東海豪雨による浸水被害のようす

■緊急雨水整備計画

▲汚泥焼却灰の有効利用(土質改良材) ▲光ファイバーケーブルの布設
今年度事業の概要
今年度の下水道事業は475億円を計上し、その目的別内訳としては、普及促進に71億円、従来からの浸水対策事業に158億円、緊急雨水整備事業に135億円、リフレッシュ事業に98億円、水環境の向上事業に13億円を予定している。
普及促進事業としては、庄内川西部、志段味、桶狭間等の地区を対象として面的整備約180haの普及拡大を図るとともに、志段味汚水幹線等の建設を予定している。
従来からの浸水対策事業としては、戸田ポンプ所、大曽根雨水調整池等の建設を継続するとともに、楠雨水準幹線等の建設を予定している。
また、緊急雨水整備事業としては、丸新、中坪、小田井の雨水調整池の建設を継続するとともに、汐田ポンプ所などの建設も予定している。
リフレッシュ事業としては、江川幹線の管更生工法による管きょの更新や堀留処理場の電気設備、鳴海処理場の汚水ポンプ設備の設備更新事業を継続するとともに、八剣ポンプ所の雨水ポンプ等の設備更新を新規に予定している。
最後に水環境の向上事業としては、山崎川右岸及び戸田雨水滞水池の合流式下水道改善施設の建設を継続するとともに、水里雨水滞水池の新規着工と併せて、中川運河沿い雨水吐室のろ過スクリーンの設置も予定している。また、柴田下水処理場では窒素・りん対応型の高度処理施設の建設も予定している。
▲ろ過スクリーンの様子▼ ▲戸田ポンプ所(工事中)
▲戸田滞水池(工事中) ▲中坪雨水調整池(工事中) ▲中坪雨水調整池(工事中)
おわりに
21世紀の下水道は、浸水対策の充実、合流式下水道の改善や高度処理による水環境の向上、管きょ内光ファイバーケーブルを利用した高度情報化社会構築などの役割が大きく期待されており、市民が安全に安心して暮らすことができきる「誇りと愛着のもてる名古屋」を下水道として目指していく考えである。

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