建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2002年9月号〉

寄稿

青森市の下水道整備

―近年における取り組み─

青森市下水道部

▲積雪融雪処理槽築造工事
市の概況
青森市は、北緯40度、東経140度に位置し、世界的に見るとニューヨーク、北京、ローマ等とほぼ同緯度にある。青森県の県都として発展してきた本市は、人口約30万人、行政区域約692平方キロメートルであり、北は陸奥湾に臨み、南に八甲田連峰という豊かな自然に恵まれた都市である。気候は比較的温暖で四季がはっきりしており、最も暑い8月の平均気温は23℃前後、最も寒い1月の平均気温は-2℃前後となっている。
人口30万人規模の都市の中では「世界一の豪雪都市」といわれており、ひと冬の累計降雪量が10mを超える年もあり、そのため都市づくりを進める上で、雪対策は不可欠なものとなっている。
また、世界に誇る文化がある。その一つには国の史跡にも指定されている「三内丸山遺跡」や「小牧野遺跡」に代表される縄文文化、もう一つは、昭和55年に国の重要無形民俗文化財に指定されている世界に誇る「日本の火祭り」として名高い「青森ねぶた祭」がある。なお、世界的にも有名な版画家棟方志功の生まれ育った地でもある。
下水道整備の変遷
本市は、海岸平野に発達した街で、地表勾配も少なく、降雨、融雪による水害が頻繁に発生していたため、昭和27年に水害解消を主な目的として、当時の市街地を中心に合流式で事業認可(625ha)を受け、同年9月、事業に着手した。
その後、市民の要望が単なる水害解消から水洗化へと変化し始めたことから、本市の下水道事業も生活環境の改善と公共用水域の水質保全を主たる目標とし、処理施設である八重田浄化センターの建設を昭和43年に着手、昭和48年3月に供用を開始した。
また、合流式を対象にした面積は760haとなり、昭和57年で概ね整備は終了し、その後公共用水域の水質保全における下水道の役割に対する期待の高まりを背景に、合流区域背後地の整備については、分流式を採用している
整備の遅れていた西部地区を対象に、昭和57年度に新田浄化センターの建設に着手、昭和61年11月には供用を開始し、西部地区の整備も軌道に乗ったところである。
昭和27年から着手した下水道整備も、昭和63年までは、地盤沈下対策(遮集幹線布設等)や処理場、ポンプ場等の整備に費用と時間を要したこともあり、この間、処理人口普及率は37年間で35.7%と、年平均普及率の伸び率は約1%にとどまっていたが、平成元年から、(1)生活環境の改善と陸奥湾・河川等の公共用水域の水質保全、(2)克雪対策の積極的な取り組みと水洗化の一層の促進、(3)コンパクトシティを標榜し、魅力ある町づくりを志向しての下水道事業の推進─等を基本方針に最重点事業として位置づけ、より一層の整備促進を図ってきた結果、平成元年からは、年平均の普及率は2.2%で、平成13年度末において普及率は64.6%となったところである。
また本年は、本市が下水道事業に着手して以来、50年の節目を迎える年でもあり、この記念すべき年に処理人口普及率が全国平均を上回るところまできたことは、今後の整備推進に向けての弾みとなると考える。
近年における取り組み
1 下水道における雪対策
本市は、冒頭で述べたように国内外でも有数な多雪都市であることから、下水道事業においても積極的に雪処理対策に取り組んでいる。昭和60年に全国に先駆けて実施した「アメニティ下水道事業」をはじめとする処理水を活用した融・流雪溝の整備を計画的に進めた結果、平成13年度末までの整備延長は約6,060mに達している。
また、平成11年6月に国から「地域戦略プラン」の認定を受け、「きれいな・豊かな陸奥湾」をテーマに、本市を含めた沿岸14市町村が連携を図り継続的に陸奥湾の保全再生に取り組んでいる「陸奥湾保全・再生プラン」の中心的事業である下水処理水を活用した「積雪・融雪処理槽整備事業」を立ち上げ、「環境にやさしい雪処理の推進」に向け、現在処理槽の建設を進めている。
その進捗状況は、平成13年から始まった土木・建築工事が本年度で終了することとなっている。また本年度からは、機械、電気工事にも着手し、平成16年1月供用を目指している。

2 雨水対策
近年、全国各地において集中豪雨による都市型水害が発生し、本市においても平成12年7月に、青森地方気象台観測史上最高の集中豪雨(64mm/h)に見舞われ、合流式で整備された市街地中心部とその周辺地域において多くの浸水被害が発生した。
このことを踏まえ、平成12年度には降雨強度及び雨水流出係数の検証を行い、その検証結果に基づき、基本計画の見直し及び雨水流出抑制策等も含めた実施計画の策定を進めている。

3 合流式下水道の改善対策
本市の合流式下水道改善対策として、現在建設中の積雪・融雪処理槽に、冬期間以外、雨水貯留槽(貯留容量約9,000m3)の機能を持たせている。
また、国において、合流式下水道の改善を緊急的・総合的に進めるため、平成14年3月に「合流式下水道の改善策に関する調査報告書」がまとめられたことを受け、これらの内容を踏まえ検討することとしている。
平成14年度の主な建設事業
1 八重田浄化センター
先に述べたように、積雪・融雪処理槽土木建築に引き続き本年度、機械、電気工事に着手し、平成16年1月供用開始を目指す。
また、合流・分流の両施設を有する当浄化センターの汚泥脱水設備は、昭和48年及び昭和55年以来使用してきた2基の真空脱水機の老朽化が進んできたことから、本年度、新たな汚泥の脱水設備(汚泥脱水機)、及び補機設備等の更新に着手。

2 新田浄化センター
新田処理区の面整備拡大に伴う水処理2系列目土木、建築に引き続き本年度各機械、電気工事を行い、平成15年度の供用開始を目指す。
また、当浄化センターは、昭和61年供用開始以来、生脱水を行っているが、汚泥発生量が年々増大してきていることから、汚泥量の減少と質の安定化を図るため、本年度から汚泥消化設備及び、脱水設備の新設に着手。

3 ポンプ場
「浅虫、久栗坂、野内、矢田分区」等を受け持つ野内汚水中継ポンプ場は、現在暫定マンホールポンプで運転しているが、本格的なポンプ場の建設に向け、本年度から土木建築に着手。また、面整備の拡大に併せ、他3箇所の汚水中継ポンプ場のポンプ増設も図る。

4 幹線管渠
「油川、羽白分区」を受け持つ新田汚水3号幹線、「奥野、妙見分区」を受け持つ奥野汚水1号幹線、「三内、平岡、新城分区」等を受け持つ新田汚水2号幹線及び、「戸山分区」を受け持つ戸山汚水1号幹線等の整備を図る。
おわりに
現代は、環境の時代といわれているが、本市における下水道整備事業も「きれいな 豊かな陸奥湾を次世代へ」を最重点施策として整備を推進してきたところであり、陸奥湾内に面する14市町村の中で、本市はおよそ人口の7割、汚水発生量の8割を占めていることから、陸奥湾の水質保全はひとえに、本市の下水道整備の状況如何にかかっているといっても過言ではない。
今後においても、汚水整備を積極的に進めるとともに、ますます厳しくなる財政を見据え、これまで以上に費用対効果を高めながら緊急性の度合いや実効性を考慮し、新たな雨水対策や合流施設の改善等を含めた整備計画を立て、国・県の支援をいただきながら事業の推進を図りたいと考えている。

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