建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2002年8月号〉

寄稿

魅力ある道南の地域づくり

北海道 函館土木現業所長 佐々木 真

佐々木 真 ささき・まこと
70年北大工卒
93年空港港湾課主幹、札幌土現企画調整室長
97年帯広土現事業部長
99年砂防災害課長
2000年都市環境課長
はじめに
函館土木現業所管内は、東は噴火湾及び太平洋に、南は津軽海峡を挟んで青森県と向かい合い、西は日本海に面し、中央部を南北に縦断する山脈を境界として、東側が渡島地方、西側が檜山地方に分かれて、渡島平野など一部地域を除いて山地が海岸まで迫る厳しい地形となっています。
渡島地方は、総面積3,715平方キロメートルで、全道の約4.5%を占め、埼玉県の広さにほぼ匹敵しており、中央部には、重点観測火山駒ヶ岳があり、山麓の大沼・小沼を含む一帯は大沼国定公園に指定されています。このほか「松前・矢越」、「恵山」の2つの道立自然公園があり風光明媚な自然環境を形造っています。檜山地方は、総面積2,850平方キロメートルで、仝道の約3.4%を占め、佐賀県の広さにほぼ匹敵し、狩場茂津多道立自然公園、檜山道立自然公園があり、すべての町に温泉が湧き出て多くの観光客に親しまれています。
道南圏は、北海道の中でも早くから拓け、本州との交流拠点などとして本道発展に大きな役割を果たしてきました。北前船に見られるように古くから関西方面との文化交流もあり発展してきたところです。こうした歴史によって築かれた遺産が数多く残っており、地域における基盤整備においてもこの特色を生かした整備に取り組んでおります。
平成14年度事業について
道路事業では、道南地方の産業・経済の中心都市である函館市と水産業の町として知られる南茅部町とを結ぶ主要道道函館南茅部線において、川汲トンネルを含む改良工事に着手しております。この路線は水産物の輸送ルートとして、また買い物、医療、通学などの生活支援として、更に常時観測火山に指定されている駒ヶ岳の火山活動が続いていることから、避難路として極めて重要な路線となっています。
街路事業では、江差町において、地域の特色を生かし住民意見を反映して中心市街地の活性化を図るため、3.5.8姥神津花通と3.5.9中歌姥神通の道路整備を実施しています。江差町は、北海道の中でも最も早く開港した港町の一つで、歴史的建造物や史跡が数多く残されており、北海道新長期総合計画において、この2つの沿道地区が、「歴史を生かす街並整備モデル地区」に指定されています。現在この地域づくりの一環として事業の促進を図っています。
空港整備事業として奥尻空港の整備を実施しています。奥尻空港は、昭和49年に滑走路800mを有する第三種空港として、供用が開始され、昭和52年からは函館との定期便が通年運行となり、奥尻島民の生居基盤を支える交通手段として、平成5年発生の北海道南西沖地震においては、緊急医療基地として、重要な役割を果たしております。近年観光等の旅客数の増加に伴う航空機の大型化に対応し、奥尻町の水産業・観光資源の発展を図るために、平成11年度に滑走路を800mから1,500mへ延長する拡張工事に着手しております。現在平成15年度末に800mを暫定供用させ、平成17年度には1,500mを完成させるよう事業を促進しております。
ダム建設事業として上ノ国町で実施しております上ノ国ダムは、同町の天の川水系目名川の洪水調整や目名地区のかんがい用水の供給、及び江差町の水道用水の供給を目的とした多目的ダムとして平成元年度に着工し、平成12年10月に本体コンクリートの打設が終了し、平成13年度に試験湛水を実施したところであり、平成14年度の供用開始を予定しております。
河川事業では、北檜山町で太櫓川広域基幹河川改修事業を今年度より着手しております。太櫓川は遊楽部岳に源を発し、二俣川、濁川を合流して北檜山町若松市街を貫流し、河口直前で小川と合流して日本海に注いでいる流域面積198.6平方キロメートル、流路延長28.5kmの2級河川です。流域の90%が山地であり、沿川は主に水田や畑として利用されています。これまでも昭和39年〜56年において災害復旧工事や局部改良工事を行ってきておりますが、近年の豪雨による災害が、毎年のように発生している状況から河川改修を実施するものです。
▲上ノ国ダム整備事業 ▲奥尻空港整備事業写真図
おわりに
今日、財政状況が低迷している中で、構造改革の一環として公共事業に対する見方は益々厳しいものとなってきており、公共事業への予算配分については、重点配分など、従来とは違ったものとなってきております。社会資本の整備にあたっては、低コストで効果を早期に発現する整備が求められており、このような効率の良い社会資本整備を地域との連携のもとに実施し、魅力ある道南の地域づくりのために努力していきたいと考えています。

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