建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2002年8月号〉

寄稿

庄内川のこれからを見つめ続ける

東海豪雨を契機として心新たに…

国土交通省 中部地方整備局 庄内川工事事務所長  小林 稔

小林 稔 こばやし・みのる
北海道出身
昭和63年4月建設省入省
平成5年9月中部地方建設局 豊橋工事事務所 調査課長
平成7年4月中部地方建設局 企画部 企画課長補佐
平成9年7月中部地方建設局 企画部 企画課長
平成10年4月河川局 砂防部 砂防課 課長補佐
平成13年1月中部地方整備局 庄内川工事事務所長
はじめに
庄内川は、源流を岐阜県恵那郡の夕立山(標高727m)に発し、岐阜県東濃地方の盆地を貫流し、濃尾平野を南下して伊勢湾に注ぐ一級河川である。なお、河川名は岐阜県内においては土岐川と呼ばれている。
流域内には名古屋市をはじめ、近年都市化の著しい春日井市、尾張旭市や陶都の瀬戸市、多治見市、土岐市などの諸都市を擁し、中部地方を代表する典型的な都市河川である。
庄内川工事事務所においては、庄内川における各種事業の実施、管理等を担当しており、以下にその概要を述べる。
▲庄内川出水状況(JR新幹線)
主要事業の概要
(1)河川激甚災害対策特別緊急事業(激特事業)
平成12年9月の東海豪雨は、庄内川流域をはじめとした愛知県下に大きな被害をもたらした。この水害により約29,000人の方々が避難を強いられたほか、18,000戸を越える住家が被災し、事業所の浸水被害を加えると約6,700億円におよぶ甚大な被害が発生した。
この東海豪雨災害を踏まえ、再び同様な規模の降雨に見舞われても被害を最小限にとどめることを目的に、庄内川及び破堤した新川(愛知県管理)において「河川激甚災害対策特別緊急事業(激特事業)」を実施している。庄内川における激特事業の内容は(図-1)のとおりである。
これまで緊急性の高い箇所や用地買収を必要としない箇所から順次事業を実施してきており、現在、洪水流下能力を向上させるための河道掘削を中心に事業を進めるとともに、非常に関係者が多数となっている用地買収に鋭意取り組んでいるところである。
■庄内川における激特事業(図-1)
・事業期間 平成12年度から平成16年度(5年間)
・総事業費 約320億円
・事業内容 (1)河道掘削(約140万立方メートル)、(2)築堤・堤防強化、(3)橋梁改築・補強、(4)洗堰嵩上げ(約1m嵩上げ)、(5)小田井遊水地機能向上(越流堤嵩上げ)、(6)水防拠点整備(2箇所)、(7)防災情報システム整備
(2)特定構造物改築事業(特構事業:国道1号一色大橋)
庄内川における流下能力上、現在最もネックとなっているのは、国道1号一色大橋である。
平成12年9月の東海豪雨の際にも、橋桁に流水がぶつかる状況となり国道1号線が通行止めとなったほか、一色大橋下流右岸において洪水が堤防を越水し、非常に危険な状態となった。そのため、この一色大橋の架け替えを「特定構造物改築事業(特構事業)」として平成12年度から着手している。
激特事業のメニューである洗堰の嵩上げを実施するためにも現橋がネックとなっており、激特期間中(平成16年度まで)には仮橋を設置し、現橋を撤去する必要があるため、現在、仮橋設置に向けて鋭意取り組んでいるところである。

(3)特定構造物改築事業(特構事業:JR新幹線・東海道線橋梁、県道枇杷島橋)
庄内川の枇杷島地区にはJRや県道等の橋梁が集中して架橋されているが、いずれも桁下が低く、平成12年9月の東海豪雨の際には洪水が溢れる寸前になるなど、洪水流下時のネック区間となっている。そのため、「特定構造物改築事業(特構事業)」としてJR新幹線橋梁、JR東海道線橋梁、県道枇杷島橋の3橋の架け替えに平成14年度から着手したところである。
事業期間は平成14年度から平成26年度までの予定で、総事業費約810億円の大事業となる見込みである。当面は、具体的な事業計画作成のための調査・検討、関係者協議を行っていく予定である。

(4)河川災害復旧等関連緊急事業(復緊事業)
平成11年6月の出水において、土岐市、瑞浪市に浸水被害が生じたことから、庄内川上流部(通称:土岐川)において「河川災害復旧等関連緊急事業(復緊事業)」を実施している。
復緊事業は、岐阜県が実施する災害復旧事業及び改良復旧事業と一体的な整備を行うことにより、再び同規模の降雨があった場合でも被害の発生を防止しようとするものである。
土岐川復緊事業の内容は(図-2)のとおりである。
これまで用地買収、河道掘削等を進めてきたところであるが、橋梁架け替えに時間を要するため、事業期間を1年間延長したところである。ただし、平成15年度出水期までには治水効果発現のために必要な事業は完了させるべく、鋭意取り組んでいるところである。
■土岐川復緊事業(図-2)
・事業期間 平成11年度から平成15年度(5年間)
・総事業費 約69億円
・事業内容 (1)河道掘削(約19万立方メートル)、(2)狭窄部引堤、(3)橋梁架け替え(2橋)
おわりに
当事務所では、東海豪雨等を契機とした再度災害防止対策を中心に事業を実施しており、期間を区切った重点的な対策を行っている。都市部における大規模な河川改修という性格上、用地買収をはじめとしてなかなか難しい問題もあるが、地域からの期待も大きく、計画通りの事業進捗のため、今後とも鋭意取り組んで行きたいと思う。
▲新川破堤箇所(左岸、名古屋市西区あし原町)

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