建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2002年7月号〉

寄稿

【連載特集・整備新幹線 北陸新幹線】

上越・富山間はフル規格、石動・金沢間はスーパー特急で整備

日本鉄道建設公団北陸新幹線第二建設局

日本鉄道建設公団 北陸新幹線第二建設局長 田代美樹男

田代 美樹男 たしろ・みきお
昭和23年9月10日生、富山県出身
昭和47年3月東京工業大学工学部土木工学科卒
平成元年3月日本鉄道建設公団新幹線部新幹線第二課総括補佐
平成 4年4月北陸新幹線建設局次長
平成 8年5月工務部工務第二課長
平成11年4月新幹線部新幹線第二課長
平成11年10月北陸新幹線第二建設局長
路線概要
北陸新幹線は、国民経済の発展及び国民生活領域の拡大並びに地域の振興を図るため、「全国新幹線鉄道整備法」に基づき建設される新幹線鉄道で、長野市付近、富山市付近、小浜市付近を経由して東京都と大阪市を結ぶ工事延長約600kmの路線です。このうち高崎・長野間は、種々の新技術を駆使して建設され、平成9年10月に開業しました。
▲黒部市全景
開業の効果
東京・長野間は、従来の約半分の1時間19分(最速)で結ばれ、沿線を訪れる観光客等が大幅に増加しています。東京・富山間が完成すると約2時間10分で結ばれる予定です。
また、新幹線は単位輸送当りのエネルギー消費量が、自家用乗用車の5分の1、航空機の3分の1、単位輸送当り二酸化炭素の排出量も自家用乗用車の8分の1、航空機の5分の1であり、地球温暖化にも負荷の少ない乗り物です。
建設の概要
北陸新幹線の建設については、東京方面から整備されてきており、現在は、平成10年3月に認可された長野・上越間及び、平成13年4月に認可された上越・富山間がフル規格で、平成4年8月に認可された石動・金沢間がスーパー特急方式で、建設を進めています。
工期については、長野・富山間が、平成13年4月から概ね12年強後の完了予定とされておりますが、スーパー特急方式で建設が進められている石動・金沢間については、平成15年完了予定の九州新幹線八代・西鹿児島間の完成後に、富山・金沢間を見直すこととされております。
北陸新幹線の建設を担当している地方機関は、長野市に事務所を置く北陸新幹線建設局、富山市に事務所を置く北陸新幹線第二建設局、大阪市に事務所を置く大阪支社の三機関であり、それぞれ、長野市から新潟県能生町まで、新潟県糸魚川市から石川県加賀市まで、福井県金津町から大阪市までの区間を担当しています。北陸新幹線第二建設局の担当範囲の概要は次のとおりです。

(1)糸魚川・富山間の概要と進捗状況
当建設局管内のルートは、日本海の海岸線とほぼ並行に進む形になっています。トンネルは、能生町と糸魚川市の境界付近、新潟富山県境付近、及び黒部市魚津市付近がトンネルです。また、駅は、現在の糸魚川駅の山側に2層高架橋の併設駅を設けて乗り入れ、次は、黒部川を橋りょうで渡った付近で、富山地方鉄道線の舌山駅付近で交差する手前に新駅として二面二線の新黒部駅(仮称)を設置します。富山駅は、南側に高架橋で併設駅を設置します。
この区間の構造物の延長及び構成比は表1のとおりです。
表1 糸魚川・富山間の構造物構成比率
切取盛土 橋りょう 橋りょう トンネル 合計
2.0km 8.7km 39.1km 32.7km 82.5km
2% 11% 47% 40% 100%
進捗状況は、平成5年9月にスーパー特急方式で認可されていた糸魚川・新黒部間の工事が進んできており、平成14年4月現在、区間延長82.5kmにおいて、路盤工事では、契約率48%、完成率25%に達しています。

(2)石動・金沢間の概要と進捗状況
路線は、北陸本線石動駅(富山県小矢部市)の約1km金沢方から南に分岐し、標高200〜300mの礪波山丘陵をトンネルで抜けて石川県に入ります。さらに、津幡・森本丘陵を大小八つのトンネル群で抜け金沢平野に入り、明かり区間となります。金沢駅手前約7qで北陸本線と並行して進み、現金沢駅に併設して新たに設置される金沢駅を経て北陸本線に取付きます。工事延長は約25kmの路線で、暫定整備計画により新幹線鉄道規格新線(スーパー特急)で建設しており、工期は認可の日から概ね十年となっています。この区間の構造物の延長及び構成比は、表2のとおりです。
表2 石動・金沢間の構造物構成比率
切取盛土 橋りょう 橋りょう トンネル 合計
2.0km 2.2km 9.0km 11.8km 25km
8% 9% 36% 47% 100%
進捗状況は、平成14年4月現在、路盤工事では、契約率86%、完成率81%に達しています。
特徴ある工事、構造等
1.トンネルエ事
新潟富山県境は、北アルプスが日本海に落込む断崖絶壁の地形を形作っており、この区間は数本のトンネルを施工しています。トンネルはnatm工法を基本に補助工法を併用しながら施工しています。地質の悪い箇所では二重支保工を実施した箇所もあります。
2.波形鋼板ウエブPC橋
黒部川橋りょうにおいて、鉄道橋として初めて波形鋼板ウエブPC桁を採用し、現在施工中です。採用にあたっては、疲労強度等の鉄道橋として問題点を整理し、各種試験を実施した結果等を設計施工に反映させています。
3.貯雪型高架橋
当建設局担当区間の明かり構造物は、雪対策として、駅部等一部例外区間を除いて高架橋上に雪を貯める貯雪型高架橋を採用しています。高架上に雪を貯めるために路盤コンクリートの高さを高くし、それを縦梁として構造部材に取入れた設計を行っています。
4.営業線近接施工
金沢市において、北陸本線と平行している区間が約7kmあり、営業線近接施工をしています。特に、北陸自動車道が北陸本線を跨いでいる箇所はその上を新幹線が行くことになり、営業線近接でなお且つ地上約20mの高所での作業となっています。
今後の事業展開
平成14年度の事業費は長野・富山間400億円、石動・金沢間50億円であり、長野・富山間はトンネル高架橋等の継続工事及び用地買収を進め、併せて明かり区間の工事に着手し、全体工事の進ちょくを、また石動・金沢間は高架橋等の継続工事を進め、全体工事の進ちょくを図る予定です。

■路線縦断概要図



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