建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2002年7月号〉

寄稿

【連載特集・整備新幹線 北陸新幹線】

長野・能生間の建設工事が本格化

日本鉄道建設公団北陸新幹線建設局

日本鉄道建設公団 北陸新幹線建設局長 剣持 三平

剣持 三平 けんもち・さんぺい
昭和24年7月22日生、東京都出身
昭和49年3月早稲田大学理工学研究科建設工学専攻修了
平成 2年3月日本鉄道建設公団関東支社工事第一部工事第三課長
平成 4年11月東京支社横浜建設所長
平成 7年6月北陸新幹線建設局次長
平成10年4月同調査役
同10年7月リニア実験線建設室長
平成11年3月関東支社工事第一部長
平成12年3月同計画部長
平成14年3月北陸新幹線建設局長
路線概要
北陸新幹線は東京駅を起点とし、高崎において上越新幹線から分岐し、長野市、上越市、金沢市を経由して大阪に至る、日本海廻りで結ぶ路線です。
このうち北陸新幹線建設局は、工事実施計画認可区間である高崎・富山間のうち、高崎・新潟県能生町までの約205q間の工事を行っていますが、そのうちの高崎・長野間(延長117q)は、平成9年10月に開業し、引き続き施設の保有主体として維持管理業務を行っています。
▲高田城(上越市)
開業の効果
高崎・長野間は、開業して以来5年目を迎え、東京都心と直結されたことによる速達性、利便性に優れ、それに安全性、環境にやさしい高速交通機関として沿線地域の産業経済の発展や観光に大きな役割を果たしています。特に佐久平駅周辺の大規模開発は周辺市街地の再編化が進展し、新たな街づくりに新幹線駅と一体的に整備が進められている状況にあり、新幹線開業が追い風となっているとの高い評価となっています。
長野・能生間の建設概要
当建設局では、長野・能生間の建設が本格的に進められており、そのうち、長野・上越間は、平成10年3月に工事実施計画の認可を得た区間で、長野市を起点とし、飯山市を経て上越市に至る延長約60q(工事延長約52q)の区間です。一方、上越以西については、昨年4月25日に上越・富山間(延長約110q)の工事実施計画認可となり、この区間のうち当建設局では、上越から新潟県能生町までの区間(延長約28q)で工事を行っております。駅は、長野駅(既設)、飯山駅、上越駅(仮称)の3駅が設置されます。また、工期は昨年4月25日の認可により、認可の日から概ね12年強とされています。
構造物の延長及び構成比は別表のとおりであります。
[別表]
切上盛土 高架橋 橋りょう トンネル
約1.0km 約3.7km 約18.4km 約56.5km
1% 5% 23% 71%
当区間はトンネルが大半を占めていますが、このうち代表的なトンネルとして長野・新潟県境の東頸城山地を貫く延長約22.2qの飯山トンネルをはじめ、中野市の立ヶ花地区と長丘地区の丘陵地帯を貫く延長約6.9qの高丘トンネル、同市の高社山西側中腹を貫いて赤岩地区から岩井東地区に至る延長約4.2qの高社山トンネル、さらに上越以西で上越市西部を貫く延長約6.7qの松ノ木トンネル、名立町から能生町に至る延長約7.1qの峰山トンネルなどがあります。また、明かり区間には第4千曲川橋りょう、第5千曲川橋りょうなどがあります。

(1)長野・上越間の工事状況
当区間では、平成10年3月の工事実施計画の認可後直ちに地元説明、測量、諸調査、設計協議に入るとともに、工事については、飯山トンネルを6工区に分割し、最初の工事として平成10年6月に「富倉工区」を着手して以来、平成12年3月までに残り5工区すべてを発注し、現在本坑掘削で約9.0qに達しております。また、高丘トンネル及び高社トンネルについては南北2工区に分割し、平成12年3月にそれぞれの北工区を、平成13年3月にはそれぞれの南工区を発注し、順調に施工しています。
次に、明かり工事については、平成13年3月に発注した第5千曲川橋りょう工事は、本格的には今年度の渇水期からの施工となります。また、同時期に発注した新潟県板倉町の下米沢高架橋及び中島新田高架橋工事についても、順調に施工しています。さらに、本年3月には、長野県中野市内で高架橋3工区、新潟県板倉町及び新井市内でそれぞれの高架橋1工区、上越市内では架道橋を1工区発注し、今後、本格的に高架橋、橋りょう工事を進めていきます。 (2)上越・能生間の工事概要
上越・能生間は、上越(仮称)駅を過ぎて高田平野の南西部にあたる標高約20mの平野部を高架橋または橋りょう等で通過し、その後、頸城山地東端部方より西方向に向い、6本のトンネルで通過し、能生町と糸魚川市の行政境に至る路線です。
この区間は、昨年4月25日に上越・富山間の工事実施計画の認可後直ちに、長野・上越間と同様に地元説明、測量、諸調査、設計協議を進めているところです。工事については、昨年10月に峰山トンネル(延長7.1q)東西を、今年1月には松ノ木トンネル(延長6.7q)東西を、また、今年3月には高田トンネル(延長2.8q)、高峰トンネル東(延長2.0q)がそれぞれ発注され、現在、峰山トンネル東西は、坑外設備等が整備され、近々に斜路掘削を施工するところです。その他のトンネルは、坑外設備等の施工を行うための準備段階です。
特徴ある工事、構造等
@長大トンネルエ事
飯山トンネル(延長22,225m)は、長野県側の飯山盆地と新潟県側の高田盆地の間に位置し、東頸城丘陵南端部の標高300m〜800mの山地を貫く長大トンネルです。トンネル施工はnatm(機械掘削)工法により施工しており、先進調査ボーリングによる地山性状の把握及び可燃性ガス、湧水等の事前調査を行いながら補助工法等を併用し、掘削を進めております。
A長大橋りよう
第5千曲川橋りょう(延長744m)は、雪害対策から上路形式とし、3径間連続箱桁を3連で構成された完全合成箱桁を採用しました。また、最大支間長が105mと鉄道橋では最大スパンとなったことから、多大な地震力に対して合理的な支承として水平力分散ゴム支承を適用する構造形式としております。

長野・能生間の今後の工事概要
当区間での本年度の事業計画については、長野・上越間では既着工のトンネル工事を引き続き推進していくとともに、明かり工事は、13年度からの継続工事である第5千曲川橋りょう、高架橋工事、それに新規の高架橋等工事について精力的に進める計画です。
次に、上越・能生間については、峰山トンネル、松ノ木トンネル、高田トンネル及び高峰トンネル東の各トンネル工区とも、新規に発注されてまもないが早期に地元等との協議を整え、順次に工事を本格的に着手する計画です。

■路線縦断概要図


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