建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2002年7月号〉

寄稿

【特集:日本道路公団九州支社─part1─】

世界初の波形鋼板ウェブエクストラドーズドPC橋と、新工法「TWS」を積極的に活用

日本道路公団九州支社 長崎工事事務所長 河野 正博

河野 正博 かわの・まさひろ
昭和42年4月日本道路公団入社
平成8年4月福岡建設局技術第一課長
平成13年2月九州支社長崎工事事務所長
▲日見橋(仮称)完成予想図
一般概要
九州横断自動車道大分線は、長崎県長崎市を起点として、長崎、佐賀、福岡、大分の四県を横断して大分県大分市に至る総延長258qの高速道路である。当該路線のうち長崎県長崎市から佐賀県鳥栖市に至る延長約121qを長崎自動車道としており、昭和57年11月17日に長崎多良見〜大村間(17q)が長崎自動車道として初めて開通して以来、佐賀大和ICから九州縦貫道との接続部にあたる鳥栖jct間、武雄北方〜佐賀大和間と順次供用を開始し、平成2年1月26日の大村〜武雄北方間(39.1q)の開通により、延長約109qが供用に至っている。
九州横断自動車道の最後の未開通区間の長崎〜長崎多良見IC間については、平成3年12月3日の整備計画決定後、平成5年11月19日付けで建設大臣からjhに施行命令が下され、平成5年12月20日に設計協議を実施するために必要な共通経費の実施計画認可、さらに、平成6年9月20日付けで工事に要する実施計画変更が認可された。(当該路線は用地4車線、工事暫定2車線で施行)
長崎工事事務所は、上記区間の新設工事の施行並びに長崎自動車道、長崎バイパス、武雄佐世保道路の財産整理業務を所掌することとして、平成4年2月1日長崎バイパス工事事務所の組織改廃に伴い長崎市松山町に事務所を設置し、平成6年2月1日には諌早市貝津町に事務所を移して現在に至っている。
路線概要
長崎自動車道の延伸部である長崎〜長崎多良見の計画路線は長崎県南部に位置し、北に大村湾、南に橘湾を望む地域で長崎市の東部を通過している。当該路線の完成により、国道34号及び同長崎バイパスの混雑緩和と長崎市南部地域に対する交通アクセスの向上を図り、生活環境改善と地域活性化を推進することが出来る。
路線は、長崎市早坂町付近の長崎IC(仮称)で長崎県によって事業中の一般国道324号出島バイパス(『ながさき出島道路』)と連結し、これを九州横断自動車道長崎大分線の起点として北へ進み、同市芒塚西端の長崎日見IC(仮称)で一般国道34号と連結し、同市中里町地先において供用中の長崎多良見ICに接続する。当路線は大半がトンネル(4本:6.6q)及び橋梁・高架(8橋:1.7q)で占められており、構造物比率が74%と極めて高くなっている。

“耐久性と軽量化”を最大限に引き出す波形鋼板ウェブのエクストラドーズド橋
九州横断自動車道長崎大分線の起点となる長崎ICから約3qの地点にある「日見橋(仮称)」では、環境及び景観への調和を重視し、世界初の構造形式である波形鋼板ウェブのエクストラドーズド橋を採用した。
波形鋼板ウェブエクストラドーズド橋のキーワードは“耐久性と軽量化”で、従来、主桁の中に配置していたケーブルを主桁の外に出し、PC鋼材の偏心量を大きく取った構造を持つ。構造形式は、斜張橋と桁橋の適用支間の間を埋める構造で、一般に支間100m以上の桁橋と斜張橋の支間を補完する範囲で経済性を発揮する。一方、波形鋼板ウェブ橋は、プレストレストコンクリート橋のコンクリートウェブを波形形状に加工した鋼板に置き換えたコンクリートと鋼の複合構造で、(1)主桁自重の低減、(2)施工の合理化・工期短縮・工費の低減、(3)優れたアコーディオン効果、(4)高いせん断座屈耐力の4つの特徴がある。
日見橋(仮称)は、一般国道34号と同日見バイパスを跨ぐ環境条件にあり、まさに長崎の玄関口としてのランドマークとなる。
▲エクストラドーズド構造モデル
各装備をガントリータイプとして組み込んだ新工法「TWS工法」が活躍
長崎自動車道の「長崎トンネル工事」では、急速施工を目的とした多機能型全断面掘削機のトンネルワークステーション「TWS」を採用している。これは、掘削、コンクリート吹付、鋼アーチ支保工建込み、ロックボルト打設を連続的に行えるよう各装備をガントリータイプとして組み込み、併行作業が可能となるTWSを使用するというもの。従来のnatm工法の場合、削孔、発破、ずりだし、コンクリート吹付、鋼アーチ支保工建込み、ロックボルト打設の一連の作業の繰り返しにより施工が行われることから、トンネル坑内という作業スペースの制約により各々の作業がトンネル切羽を占有して、同時併行作業が不可能となると共に、施工に際しては必ず施工機械の入替が生じるため、掘進速度向上の妨げになっていた。また、同トンネルでは、TWSの急速施工性を阻害しない初期強度、初期耐力の高い支保構造となり、吹付後、短時間で高い強度を発現する材料の「瞬結吹付コンクリート」や、高い流動性と高い材料分離抵抗性といった相反する性状を有する「高流動性コンクリート(NTLコンクリート)」をそれぞれに採用している。
▲トンネルワークステーション(TWS)

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