建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2002年7月号〉

寄稿

【連載特集・整備新幹線 北陸新幹線(2)】

朝日鉄道建設所管内の現況

日本鉄道建設公団 北陸新幹線第二建設局 朝日鉄道建設所長 朝倉 譲

朝倉 譲 あさくら・ゆずる
昭和 47年3月函館工業高等専門学校卒業
平成47年4月日本鉄道建設公団入社
平成13年11月北陸新幹線第二建設局 朝日鉄道建設所所長
はじめに
北陸新幹線(長野市・富山市間)のうち、当朝日鉄道建設所は新潟県の西南端青海町の一部から富山県黒部市までの約23.0qの範囲を担当しています。
管内のルートは、北アルプスの山並みが海岸べりまで張り出した親不知海岸に沿いながらトンネルで抜けたあと、新潟・富山県境の境川を橋りょうで横断し富山県に入り、引き続きトンネルとなります。この朝日トンネルを抜けると黒部川扇状地の東端に至ります。扇状地の朝日町・入善町の北陸自動車道南側を高架橋・橋りょうで併行しながら黒部川を横断します。黒部川の約2q先の北陸自動車道黒部icと富山地方鉄道舌山駅との間に新黒部駅(仮称)を新設します。
新黒部駅を出て、富山地方鉄道線を乗り越したのち、丘陵部をトンネル群で南西に抜けて、魚津市境の布施川を横断します。
このうち現在、境川・新黒部駅間が全面着工し、さらに昨年4月認可の新黒部駅・富山間についても第二黒部トンネル工事を発注し、全部でトンネル3工区と明り14工区(PC桁を含む)について着手・施工中です。
トンネルエ事の現況
朝日トンネルは、新親不知トンネルに続く延長約7,560mのトンネルで、東工区4,520m、西工区3,040mに分割して施工しています。
東工区は、平成6年よりnatmの発破によるタイヤ方式で施工し、朝日町境地区の坑口から2.6km付近で破砕帯と近接、膨張性地山と遭遇しましたが、補助工法を施し約1年半かけて突破しました。平成13年3月に掘削は完了しており、現在はインバートコンクリート等を施工中です。
西工区は、地元協議の遅延から平成12年3月に着工しました。朝日町竹ノ内地区の坑口より約100m間は、土被りが小さいため開削工法、それ以深は、北陸層群の地山強度が低い地質のため、機械掘削により施工しています。掘削土砂の搬出は、タイヤ方式の場合、排気ガス、粉塵、路盤の泥濘化等坑内環境の悪化が問題となるため、連続ベルトコンベア方式としました。
第二黒部トンネルと第三黒部トンネルは、1件工事として平成13年度末に発注し、準備が整い次第、第三黒部トンネルから着工の予定です。
高架橋工事の現況
この地域一帯は積雪量が多いため、雪に対する工夫が必要となります。そのため、高架橋の構造は、側方開床式貯雪型としました。線路の路床を従来よりも50cm高くして75cmとし、ラッセルした雪をスラブ上に貯めるスペースを確保するとともに、防音壁の外にパネルを建てて、貯雪能力を越える雪をロータリー式除雪車等により、このパネルに当てて防音壁との間の開床部から高架下に投雪する構造です。
工事は、約1q毎に分割発注し、平成14年度首では、朝日町で5工区、入善町で3工区、黒部市で2工区施工中となります。
橋りょう工事の現況
入善町と黒部市境を流れる黒部川とほぼ直角に横断する黒部川橋りょうは、長野・富山間では橋長761mと最長のPC連続箱型桁です。下部工は、平成11年10月からの渇水期に主に低水敷の橋脚を、平成12年10月からの渇水期には、低水敷及び高水敷の橋脚を施工し、合計16基の橋脚を完成させ平成13年6月にしゅん功しました。
上部工は、平成13年3月に着工しており、中央6径間延長344mの構造は、鉄道橋では初めての採用となる波形鋼板ウェブPC橋りょうとしました。
波形鋼板ウェブPC橋りょうの特徴として、
1.ウェブに軽量な波形鋼板を用いるため、主桁自重を軽減できます
2.鋼板を波形にすることにより高いせん断崖屈耐力が得られ、補剛材が不要となります
3.コンクリートウェブが不要となるため、施工の合理化、工期短縮、コスト縮減が可能となります
等のメリットがあります。
本工事は、平成13年10月から本格的に着工しており、平成14年6月までの渇水期に中央の6径聞を完成させる予定です。
また、入善町管内の道水路交差部のPC桁製作・架設工事も3件に分割し、平成14年3月に着手しました。

その他
鉄道事業の経営健全化のため、各部門が連携を図りながらコスト縮減に取組んでいます。
具体的には、豪雪地方を走る新幹線としては、雪対策が大きな課題となります。トンネル湧水があるところは散水方式、道路交差部等高架下に投雪できないところはパネル消雪方式としていますが、その外はランニングコストの小さい貯雪投雪方式を採用しています。
また、上述のように黒部川橋りょうは、PC箱型桁を波形鋼板ウェブ構造とすることで主桁の軽量化を図り、さらに、鋼材の材質を高耐候性鋼板として保守の軽減化を図っています。
一方、投雪パネルについては、地上からの足場による施工法を、高欄を利用した簡易な鋼製足場による施工法に変更しており、施工面でもコスト縮減を図っています。
このように、平成13年度末には、新潟県境の境川高架橋、新黒部駅高架橋及び魚津市境の第二黒部トンネル外を発注しており、これにより富山県東部の朝日町から黒部市間はほぼ全線にわたり着工することとなり、新幹線建設工事は最盛期を迎えることになります。

▲入善町小摺戸工区 側方開床式貯雪型高架橋 ▲小摺戸工区 側方開床式貯雪型高架橋
▲朝日トンネル(西)工区 ズリ出しベルコン ▲朝日トンネル(西)工区 機械掘削状況

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