建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2002年5月号〉

寄稿

道立学校の施設整備について

北海道教育庁 企画総務部長 太田 博

太田 博 おおた・ひろし
昭和22年11月3日生、北海道苫小牧市
昭和46年3月北海道大学法学部卒業
昭和46年4月胆振教育局勤務
昭和49年8月管理部総務課勤務
平成2年4月上川支庁地方部振興課長
平成4年4月総務部人事課主幹
平成5年4月総務部人事課長補佐
平成6年4月総務部参事小樽市派遣(小樽市企画部長)
平成8年4月総務部行政管理室参事
平成9年6月総務部人事課長
平成10年4月総務部行政管理室長
平成11年5月総合企画部政策室次長
平成12年4月総合企画部次長
平成13年4月教育庁企画総務部長

道立学校の建設に当たっては、これまでも機能性や快適性はもとより、文化性にも配慮した施設づくりに努めてきたところであるが、近年、様々な環境問題の解決が社会的な課題となっていることから、学校施設においても自然エネルギーの利用や省エネなど環境保全に配慮した施設づくり、あるいは、生涯学習の観点等から開かれた公共施設として障害者や高齢者等に配慮した施設づくりが求められている。
このようなことから、施設整備に当たっての基本的指針を北海道教育長期総合計画に位置付け、

機能性、快適性、安全性の配慮
(1)多目的スペース
合同授業などの多様な学習活動の場であったり、児童・生徒のいこいの場、談話の場等として、あるいは、作品展示場として活用されるなど「ゆとり」と「うるおい」をもたらす場として整備している。
(2)体育館暖房
冬期間の学校における体育活動や諸行事を円滑に行うため、遠赤外線方式による暖房化を、暖房化施設整備事業をはじめ校舎等改築や防災対策緊急整備事業などにも導入し計画的に整備を進めており、平成13年度末には278館の屋体のうち214館(77%)の暖房化が終了する。
(3)シックハウス症候群対策
現代の住宅は機密性が高いため、新築・改築で使用された建材・内装材から放散される化学物質等により室内空気が汚染され、居住者に様々な健康上の問題が生じているところであり、学校の施設においてもその対応が求められている。
学校建築におけるシックハウス症候群の対策としては、合板類等は、ホルムアルデヒドの放散量が日本農林規格(jas)で定めるfc0等級レベルまでのものを使用すること、接着剤・塗料は、ホルムアルデヒド不使用のもので、トルエン、キシレンの放散量が極力少ないものを使用すること、さらに、これらの施工に当たっては十分に養生期間を設けることとしている。
地域の風土、景観と調和した文化性の配慮
近年、これまでの物質的豊かさから、「うるおい」や「ゆとり」といった心の豊かさが求められており、今まで以上に生活や地域に密着した文化的環境づくりが重要なものとなっている。
学校施設においても、人間性豊かな児童・生徒の育成には文化的環境づくりが重要であることから、画一的とならないよう地域の風土や環境、周辺の景観と学校施設との調和を図りながら創意工夫するいわゆる「文化的味つけ」に努めている。
環境教育の身近な教材としての施設
今日の環境問題は、ごく身近なゴミ問題から地球温暖化や酸性雨など地球規模の問題まで多種多様化しており、環境重視型社会の構築が必要となっている。
学校施設は、エネルギー消費量も膨大であり、環境に与える影響が大きいだけでなく未来を託す児童生徒の活動の場であることから、環境への負荷を低減する施設や環境教育の実践の場とするエコスクール(「エコロジー」と「スクール」を合わせた造語であり、「生態環境を考慮に入れた環境と調和した学校」という意味である)の取り組みが必要である。
このことから、施設整備に当たっては、 などの取り組みに配慮して可能なものから進めている。
校地内の緑化の推進
学校は公共建築物の中でも大きな敷地を有し、その緑環境は、学校のみならず周辺地域や市街地に与える影響も大きく、また、豊かな緑環境に対する社会的ニーズも高まっていることから、地域や都市的な視野での位置付けが必要となってきている。
そのため、現在校地内に残されている自然や緑をできる限り保全していくとともに、樹木・草花による学校緑化への取り組みを進めている。
高齢者や障害のある人々に配慮した施設
学校施設のバリアフリー化については、これまでも、「北海道福祉のまちづくり条例」などの考え方や、学校開放を積極的に進める観点から、高齢者や障害のある方などに配慮した施設整備を進めてきており、玄関スロープや障害者用トイレ、エレベーターなどの計画的な整備に努めてきている。
整備状況は平成12年度末現在で、玄関スロープや障害者用トイレは、整備率で85.2%、エレベーターは15校の整備となっている。
これからの学校施設は、急激に進行している情報通信の高速化、高度化に対応した施設づくりや、多様化する教育方法に対応できる高機能でより多目的に活用できる施設づくりが必要であり、また、社会の変化に柔軟に対応できる心豊かな人間性を育むうるおいのある施設づくりを進めていくことが必要であると考えている。

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