建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2002年5月号〉

寄稿

大阪の活性化と豊かな暮らしを支える 有料道路の整備

大阪府道路公社 専務理事 天野 暉正

天野 暉正 あまの・てるまさ
昭和19年3月生まれ
昭和41年3月大阪大学工学部卒
昭和41年4月大阪府入庁
昭和59年4月土木部道路課主幹
平成4年4月富田林土木事務所長
平成6年4月土木部副理事兼都市整備課長
平成8年4月土木部副理事兼道路課長
平成10年4月大阪府理事
平成12年4月大阪府道路公社専務理事
はじめに
大阪府では、定住時代にふさわしい大阪、地球時代にふさわしい大阪をめざして「レインボー21」計画を策定し、21世紀にふさわしい道路整備を進めています。
大阪府道路公社は、有料道路制度を活用し大阪府の幹線道路の整備を促進し、交通の円滑化を図り、もって府民の福祉の増進と地域の発展に寄与するため、昭和58年に発足しました。全国で34番目に設立した道路公社で比較的新しい組織です。
現在、府道大阪中央環状線の混雑緩和を目的とした鳥飼仁和寺有料道路(0.7km)、阪和自動車道と阪神高速道路湾岸線を結ぶ堺泉北有料道路(4.7km)、奈良県道路公社と共同で施行し大阪と奈良を結ぶ大動脈である第二阪奈有料道路(13.4km)の3路線、18.8kmを供用しています。
建設中の路線は、大阪南部と奈良県中南部を結ぶ南阪奈有料道路(4.6km)、第二名神と大阪市を結ぶ箕面有料道路(6.8km)の2路線であり、ここでは建設路線の概要を紹介します。
南阪奈有料道路(いにしえと未来を結ぶ道)
大阪と奈良県中南部を結ぶ主要な幹線道路は西名阪自動車道、国道165号、国道166号であるが、近年の地域開発により自動車交通の著しい増加を生じ、西名阪自動車道の日交通量が10万台を超える等日常的な交通渋滞が生じています。
このような交通環境の改善、大阪と奈良県中和地域との連携の強化、さらに関西国際空港への主要なアクセス道路として南阪奈道路が計画され、平成の竹内街道と呼ばれています。
南阪奈道路は、大阪府美原町から奈良県新庄町までの17kmの有料道路で、内4.6kmを大阪府道路公社が有料道路事業者となり、一般道路事業者との合併施工により整備を進めています。
南阪奈道路が通過する地域は、遺跡や古墳群などが多く、飛鳥時代の日本で初めての宮道である竹内街道に沿っており、南阪奈有料道路沿道の美原町、羽曳野市でも歴史を守るまちづくりが進められています。このような観点から南阪奈有料道路の設計に際して景観に配慮するとともに、丘陵部は盛土構造、市街地部は高架橋構造としました。
南阪奈有料道路の主な工事を紹介しますと、
[美原JCT架設工事]
南阪奈有料道路が阪和自動車道と直結する美原JCTでは、ランプ部(306t、321t)を高速自動車道上空に架設するため、高速自動車道の夜間通行止めを行い鋼床版箱桁橋を現地組み立ての上、1,200tクレーンで夜間一括架設を行います。(平成14年2月)
[羽曳が丘トンネルエ事]
羽曳が丘住宅開発地内の構造ついては、開発地の分断、供用後の騒音対策、土地の有効活用を考慮し、開削ボックス構造としました。
[中の池橋梁工事]
羽曳野市の農業用溜池「中の池」を横断する橋梁は、緑豊かな丘陵に架設するため、景観に配慮するとともに施工性、経済性を検討し、2径間連続エクストラドーズド橋としました。
南阪奈有料道路の構造物の進捗率は72%であり、今後、道路付属物工事、舗装工事、設備工事を進め、早期供用に向けて努力していきたいと考えております。
箕面有料道路
大阪府北部地域は、隣接する兵庫県南東部とともに阪神圏都市部への通勤圏にあり、これらの地域から発生する交通が国道176号に集約されるため、池田市中心部の交通渋滞は日常化しおります。
箕面有料道路は、このような交通混雑を緩和するため国道423号バイパスとして箕面市北部、豊能町、能勢町や京都府亀岡市から大阪都心部への主要路線として大阪府北部の幹線道路ネットワークを形成するとともに、箕面市北部丘陵で進められている「水と緑の健康都市」のアクセスとして機能します。さらに第二名神高速道路の箕面icに接続し大阪と全国を結ぶ広域ネットワークを形成し、大阪都市圏の活性化にも寄与すると考えています。
箕面有料道路は、新御堂筋を延伸し箕面山系をトンネルで貫き箕面市北部で国道423号に接続する7.3kmの道路で大阪府と合併施行で実施しており、大阪府道路公社は山岳トンネルを中心に6.8kmを担当しています。
この道路が完成すると第二名神高速道路の箕面icから新御堂筋まで8分で結ばれ25分短縮されることになります。
[箕面山岳トンネル]
箕面山岳トンネルは、標高200mから600mの箕面山系を貫く延長5.6kmの道路トンネルです。
現在「水と緑の健康都市」のまちびらきに供用目標をあわせ、暫定2車線で施工しており将来、交通量の増加を見定めた上4車線を考えています。
トンネルルートに分布する地質は、トンネル中央で2分されており、南側は中生代の丹波層群で砂岩、頁岩を主体とした堆積岩であり、北側は超丹波帯が分布しており大部分が砂岩で構成されています。有馬高槻構造線の北縁断層群、五月山断層群なども存在しており地質的、水理的にも留意しながら工事を進めています。
南坑ロ部は、新御堂筋からの流出入ランプが横断道路の関係からトンネル内に設置せざるを得なくなり、掘削断面積313平方メートルの超大断面となっています。また地質的にも未固結の大阪層群や破砕頁岩であり、fem解析による切羽の安定性などを評価し「トンネル研究会」(学識経験者)に諮った上でパイプルーフおよびサイロット工法を採用し施工することとしています。
おわりに
最近の経済情勢の下 利用交通量の伸び悩みなど有料道路事業を取り巻く環境は厳しいものがありますが、都市部にある大阪府道路公社は、全国的にみて実績は良い方だとおもっております。
大阪府道路公社でも更なる経営改善に向けて建設費、管理費のコスト縮減を行うとともに、ETC導入など利用者サービスの向上にむけて努力していきたいと考えています。
また、喫緊の課題である京阪神都市圏の活性化のため、大阪府と協力して有料道路制度を活用した都市基盤整備を進めていきたいと考えています。

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