建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2002年5月号〉

寄稿

横浜市における市営住宅整備のこれまでの変遷と、今後の取り組みについて

横浜市建築局 住宅部長 相原 正昭

相原 正昭 あいはら・まさあき
昭和24年3月26日生まれ
昭和49年3月日本大学大学院理工学研究科建築学専攻修士課程修了
昭和49年4月横浜市役所入庁
平成 3年6月建築局宅地指導課長
平成 5年5月建築局企画管理課長
平成 9年4月都市計画局みなとみらい21推進部長
平成12年4月建築局住宅部長
はじめに
横浜市では近年、市民の定住化傾向が進み、身近な生活環境への関心や良好な「住まい」に寄せる期待が大きく高まっています。
このような市民の期待に応えるため、総合計画「ゆめはま2010プラン」を上位計画とする住宅の基本計画として「横浜市住宅基本計画」を作成し、総合的かつ体系的な住宅施策を展開し、「住みたいまち、安心して住み続けられるまち…生活快適都市よこはま」の実現を目指しております。
そのなかで、市営住宅整備においては、少子化・高齢社会の到来、民間活力の活用など、社会経済状況の変化に対応しながら所得の低い住宅困窮者に的確な供給を進めております。
これまでの変遷
本市の市営住宅は大正8年に初めて南太田に建設して以来、戦災復興、高度成長に伴う人口急増に対応するため、昭和30年代前半までは6帖に4帖半それに台所と便所を設けたいわゆる2kの木造住宅の建設を進め、昭和40年代には、中層耐火構造の階段室型住宅を中心に、郊外には住宅戸数が1千戸を超す大規模団地を整備してきました。
昭和55年には、昭和20年から30年代に建設した木造住宅の居住水準の向上を図るために建替事業に着手し、平成13年度末までに24団地で実施し、5,724戸から8,898戸への建替を進めています。本市の最初の建替住宅である南台ハイツ(1,190戸)は、周辺住民とのコミュニティがつくられやすいよう、広場や住棟の配置を工夫するなど周辺環境を重視した新しい住まいづくりを実践し、その後の市営住宅計画の質的転換に大きな影響を与えました。また、大規模団地の一つである十日市場住宅の建替では、公団住宅等との相互乗り人れを図る「公共賃貸住宅総合再生事業」を活用し、世帯間の均衡を図り活力ある街づくりに取り組んでまいりました。
総合計画「ゆめはま2010プラン」に基づく市営住宅整備
市営住宅の整備は、平成6年に策定した「ゆめはま2010プラン基本計画」に基づき計画期間の最終年度である平成22年に30,600戸とすることを目標として定めております。この目標を達成するために平成9年度を初年度する第2次5ヵ年計画では、計画戸数を3,675戸とした他、高齢者・障害者住宅への取り組みの強化、借上型市営住宅の供給などを新たに盛り込みました。整備実績は、新設、建替に加え、借上型市営住宅を主に高齢者用住宅として高齢化率が高く、用地取得が困難な都心部を中心に2,326戸を供給し、計画戸数を上回る3,756戸を供給することができました。
高齢者・障害者用市営住宅の供給
横浜市の高齢化率は、平成12年の13.3%から、平成22年には17.5%となることが予想されています。そのため平成4年度から、国の「シルバーハウジング・プロジェクト」を適用した直接建設の高齢者用市営住宅とともに、借上型高齢者用市営住宅として「シニア・りぶいん」の供給を進め、平成13年度末で93団地2,225戸を供給しています。これらの住宅では、緊急通報システムの設置と福祉部局からlsa(巡回相談員)の派遣により、緊急時の対応や、高齢者への生活相談、安否の確認などを行っています。
また、車いすを使用する障害者が自立した生活ができるよう回転スペースなどを確保した車いす使用者向け住宅の整備を進めてきましたが、平成12年度から入居者の個々の身体状況に応じて手摺りの設置や設備面での配慮を行う車いすA型住宅の供給を進めております。
市営住宅の住戸改善事業への取り組み
市営住宅の維持管理や建替事業の基本的な方針である「横浜市営住宅管理基本計画」を平成11年4月に見直し、昭和35年代以前に建設されたものは「建替」、昭和35年以降昭和40年代までに建設されたものは「住戸改善」、昭和50年代以降に建設されたものは「維持管理」とする管理区分を設定いたしました。
住戸改善事業は既存建物の躯体を活かしたまま、住宅内部の設備や内装の更新、バリアフリー化対応を行う居住水準や設備水準の向上を図る手法であり、平成13年度には昭和39年から41年に建設された上飯田住宅(1,412戸)で着手し、既に160戸の工事が完了しています。上飯田住宅においては国のトータルリモデル事業を適用し、内部の改善のほか階段室型住戸へのエレベーター設置など、共用部分のバリアフリー化を進めております。
これからの取り組みについて
今後の市営住宅整備においてはますます、ストック重視や民間活力の活用が求められるものと考えております。そのため、建替事業や住戸改善事業による既存市営住宅の有効活用・長寿命化を推進するとともに、従来の新築住宅の借り上げに加え、既存の民間共同住宅の借り上げを進めてまいります。
平成14年度から始まる「ゆめはま2010プランの5ヵ年計画(素案)」において市営住宅は、市営住宅のセーフィティネットとしての役割を確保するため、建替、借上げなどにより3,300戸整備することとしており、厳しい財政状況の中、従来の枠にとらわれない新たな視点により整備を進めていきたいと考えております。

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