建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2002年7月号〉

寄稿

彩の国・さいたまの社会基盤整備について

〜現況とこれからの課題〜

埼玉県 県土整備部長 佐藤 直樹

佐藤 直樹 さとう・なおき
本籍 北海道、昭和26年9月25日生
昭和49年3月北海道大学工学部土木工学科卒業
昭和49年4月1日建設技官に採用(中部地建道路部道路計画第一課)
昭和59年6月16日中部地建道路部道路計画第二課長
昭和60年11月16日中部地建道路部道路計画第一課長
昭和62年7月31日タイ(バンコク)派遣
平成元年8月7日道路局企画課長補佐
平成12月1日関東地建北首都国道工事事務所長
平成4年4月1日長崎県土木部道路建設課長
平成5年4月1日長崎県土木部次長
平成6年4月1日中国地建広島国道工事事務所長
平成8年4月1日本州四国連絡橋公団企画開発部審議役
平成8年7月1日本州四国連絡橋公団企画関発部企画課長
平成11年3月31日建設省大臣官房付
平成11年4月1日埼玉県土木部次長
平成12年4月1日埼玉県土木部長
平成13年4月1日埼玉県県土整備部長
はじめに
埼玉県は、約700万人の人口を有する若い県であり、関東平野の中心部に位置する地理的条件と東北、上信越地方を含む広大な交流圏域を背景に、首都機能の一翼を担う県として発展してきました。
また本県は、首都東京に隣接し、平坦な地形であり可住地面積が広いことから、高度経済成長期の急激な人口増加により市街地が急速に拡大し、道路、公園、下水道などの社会資本整備が追いつけない状況でありました。
これまでの社会基盤整備
このため、本県では、県民の皆様が真に豊かな生活をおくることができる、各種の社会基盤の整備・充実に積極的に取り組んでまいりました。
道路に関しては、「県内1時間道路網構想」を道路整備の目標に掲げ、他県に先駆けて「首都圏中央連絡自動車道」を開通させるなど、高速道路から生活道路に至るまでの体系的な道路整備を推進しております。
最近では、国道140号皆野寄居バイパスや国道463号越谷浦和パイパスなど地域交通の骨格となる重要路線が開通しました。
河川に関しては、総合治水対策事業や床上浸水対策事業などにより浸水区域は着実に減少しており、平成10年の台風5号により被害を受けた新河岸川などの河川激甚災害対策特別緊急事業については、本年の完成を目指しています。
このように、本県の社会資本は、日々充実してまいりましたが、都市部を中心とする慢性的な交通渋滞や交通事故は依然として十分には改善されず、集中豪雨などによる浸水被害などの発生を考えますと、本県の社会資本は未だ十分とは言えない状況にあります。
「環境優先」「生活重視」を基本理念に
本県では、少子・高齢化の進行、産業構造の変革、国際化の進展、本格的な高度情報化、地球環境問題の深刻化などの時代の大きな潮流を踏まえ、「環境優先」、「生活重視」、県政の基本理念とし、21世紀の豊かな彩の国づくりを進めていくこととしております。
具体的には、南北方向の東北自動車道や関越自動車道と東西方向の東京外かく環状道路や、現在整備を進めている首都圏中央連絡自動車道などにより格子状に整えられつつある道路網を基礎にして、さいたま新都心のあるさいたま市をはじめとする中枢都市圏や各地域の中心性の高い都市との連携を深め、それぞれが機能を補完し、県全体が有機的に結びついた、自立性の高い均衡のとれた県土づくりを目指すこととしております。
こうした中、昨年4月に土木部と住宅都市部を統合して発足しました県土整備部では、県政の基本理念のもと、21世紀の輝く彩の国を築くため、「豊かな環境を守り育てる県土づくり」、「安全で安心して生活できる県土づくり」、そして「個性と魅力あふれる元気な県土づくり」に向けて、今後とも社会基盤の整備を総合的・効果的に進めてまいりたいと考えております。
道路・街路事業
まず、道路・街路事業については、「人と自然にやさしい道づくり」を基本理念に、「県内1時間道路網構想」の実現を目標に整備を進めておりますが、県土の骨格となる高速道路網については、圏央道の関越道から東北道までの区間、外かん道の三郷ic以南や首都高速道新都心西出ロから第二産業道路間の整備を図ることとしております。さらに、東北道岩槻icへのアクセス道路となる国道122号蓮田岩槻バイパス、関越道(仮称)小川嵐山icの新設に対応した県道熊谷小川秩父線、2004年の埼玉国体開催に向けて整備を進めている県道冑山熊谷線の久下橋などで事業を進め、また、外かん道へのアクセス道路となる都市計画道路草加三郷線、jr浦和駅周辺の鉄道高架化事業など街路事業を進め、交通利便性の向上と魅力ある都市空間の確保に努めてまいります。
さらに、バリアフリーに配慮した段差のない広幅員の歩道の整備、交差点への右折レーンの設置を行い、安全で快適な道路空間の確保や交通渋滞の緩和並びに交通事故の防止に努めてまいります。
河川・砂防事業
次に、河川・砂防事業では、「災害に強い地域づくり」を目標に、氾濫を防ぐ治水対策として新河岸川・鴻沼川の河川激甚災害対策特別緊急事業を進めるほか、鴻沼川・東川の床上浸水対策特別緊急事業、新河岸川、中川・綾瀬川流域の総合治水対策特定河川事業、地すべり対策事業や急傾斜地崩壊対策事業を進め、水害、土砂災害に強い地域づくりを進めてまいります。
また、「自然や人にやさしい川づくり」として、綾瀬川・芝川・不老川などの河川浄化事業や周辺の自然環境に配慮した河川・砂防事業なども進めてまいります。
ワールドカップサッカー開催に向けて
さて、いよいよ本年5月31日に日韓共同開催によるワールドカッブサッカー大会が開幕しますが、準決勝戦、日本代表初戦など4試合が行われる埼玉スタジアム2002の周辺では、昨年11月浦和東部・岩槻南部地域の土地区画整理事業が着工し、埼玉高速鉄道線浦和美園駅やスタジアムを核に、水と緑が調和した魅力ある都市づくりがスタートいたしました。
また、平成12年5月の街びらきから3年目を迎え、関東の都として成長しているさいたま新都心については、関連街路の整備や、にぎわいの創出を進めるとともに、平成16年春の開業を目指して着工された上越新幹線本庄新駅周辺の本庄新都心地区についても鋭意整備するなど、21世紀の彩の国を彩る自立性の高い埼玉の新しい拠点づくりの実現に努めてまいります。
さらに、土地区画整理事業や再開発事業による市街地の整備、快適でうるおいのある生活環境を実現する公園や下水道の整備、住みやすく質の高い住宅の供給などにより、良好な環境を有し、魅力と風格のある彩の国まちづくりに取り組んでまいります。
併せて、特に、県南を中心とした地域では、災害に弱い市街地のリノベーションを進め、安心して暮らせる、安全で質の高い都市空間を創造するほか、歩道、自転車道、公園など各種の生活基盤の整備や公共建築物の建設にあたっては、高齢者、障害者などの利用者の視点に基づいたユニバーサルデザインを取り入れ、誰にも優しいまちづくりを進めてまいります。
▲埼玉スタジアム
おわりに
現在、本県においては、依然として厳しい財政状況が続いており、平成14年度を初年度とする「新たな5か年計画」の策定と併せ「新たな行財政改革プラン」についても策定を進めるなど、新たな時代に対応した県行政の枠組みづくりを進めております。
県土整備部では、厳しい財政状況を十分踏まえ、県民生活に直結し、本県の将来にとって真に必要な事業に重点化を図り、これら社会基盤の整備に取り組んでまいりますので、引き続き皆様方の御理解、御支援をお願いいたします。

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