建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2002年4月号〉

寄稿

心身ともに市民を力強くバックアップする新たなる港湾病院

横浜市立港湾病院 管理部
港湾病院再整備担当課長 小谷 與志郎

横浜市立港湾病院は、横浜開港百周年記念事業の一環として、昭和37年に4診療科、 122床で開院しました。その後の増床を経て、現在は14診療科、300床の総合的な病院となっています。
開院後約40年が経過し、施設の老朽化が進むとともに、狭隘なスペースでは時代の流れに対応した医療機能の提供や、快適な療養環境及び患者サービスの充実が図れなくなって来ました。
このため、公立病院として地域に不足する医療機能を確保し、医療水準の向上を図るため病院施設を一新し、病床規模を634床として医療機能の拡充と患者サービスの向上を図り、地域医療の中核を担う病院となるよう再整備することとなりました。
そして、現病院に隣接した土地を確保し、平成12年12月に新病院施設の建設工事に着手するとともに、新病院の運営マニュアルの策定や医療情報システム、医療機器等の整備の準備を進めており、平成15年度末の開院をめざしています。

再整備後の病院の医療機能の特徴としては、急性期の患者への対応を基本とし、三大生活習慣病(心疾患、がん、脳血管疾患)に対する診断・治療機能の充実を図ります。
また、救急患者及び地域の診療所からの紹介患者や、他の疾患を併せ持つ精神科患者及び老人性痴呆疾患患者に対応します。
そのため、バイオクリーンの1室を含む11室の手術室を設置するほか、icu・ccu・hcuなどの集中治療室や、総合リハビリテーション施設の基準に適合したリハビリテーション施設を整備します。
外来部門は、外来患者の動線に配慮し、できるだけ建物の1階、2階に集約して、患者の移動する距離が短くなるようにしています。受診する患者のプライバシー確保のために診察室を個室化するとともに、医療情報システムの導入により待ち時間を極力なくします。また、総合相談室を設置し、患者・家族のさまざまな相談に対応するとともに、地域の医療機関との患者の紹介や受け入れ等についても一層の連携が図れるようにします。
病棟は病室を原則個室と4床室とし、最近の患者のニーズに対応して個室の比率を高くしました。4床室は「個室的多床室」といわれているもので、廊下側のベッドにも外を見ることができる窓があり、ベッド間を離して設置し、プライバシーが確保できるレイアウトとしています。
なお、外来、病棟とも車椅子を使用する患者が支障なく利用できるよう、施設・設備面について配慮しております。
さらに内科・外科・小児科を中心とした、24時間365日の救急診療を行うこととし、そのための救急外来、救急病棟を設置するほか、精神科救急や、合併症のある精神科患者及び老人性痴呆疾患患者にも対応します。

その他、緩和ケア病棟を設置し、手術等の積極的な治療の効果が見込めないがん末期患者等に対し、疼痛の緩和と精神的ケアを中心とする緩和ケア医療にも取り組みます。
なお、横浜市の施設では初めて免震構法を採用し、病院施設の基盤の下に免震層を設けるとともに、屋上に緊急離着陸用のヘリポートを設置し、非常用電源の燃料(7日分)、水(7日分)、食糧(3日分)を備蓄するなど、阪神淡路大震災のような大規模地震が横浜で発生した場合にも、医療機能を確保できるようにしています。


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