建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2002年3月号〉

寄稿

大和川下流流域下水道の現況と課題

大阪府 南部流域下水道事務所長 寺道 敬宇

寺道 敬宇 てらみち・けいう
昭和19年8月24日生、大阪府出身大阪府河内長野市在住
昭和43年3月京都大学工学部衛生工学科卒
同年4月水資源開発公団奉職、中津川建設所勤務
46年4月水資源開発公団試験所勤務
50年1月大阪府奉職、下水道課勤務
54年5月寝屋川北部広域下水道組合出向、管理課長
57年4月大阪府下水道課主査
58年8月下水道課施設係長
61年4月下水道課事業係長
平成元年4月柏原市出向、下水道部理事
平成3年5月大阪府土木監理課主幹兼電子計算係長
平成5年4月下水道課主幹
平成7年5月南大阪湾岸流域下水道事務所工務課長
平成9年4月八尾土木事務所次長
平成11年5月日本下水道事業団大阪湾工事事務所長
平成13年4月南部流域下水道事務所 所長
趣味:意志薄弱なダイエット、ドライブと露天風呂巡り
目標:公平な行政、座右名:自然体
1.はじめに
大阪府南部流域下水道事務所は、一級河川大和川以南の南河内地域を中心とする10市3町1村、計画区域面積約19,000haの大和川下流流域下水道事業を所管しています。
大和川下流流域下水道は、今池、大井及び狭山の三処理区からなります。排除方式は分流式で、全体の計画人口は126万6,000人で、104万1,000立方メートル/日の汚水処理と今池処理区の一部で雨水排水をする計画です。
2.整備状況
1)今池処理区
今池処理区は、昭和45年に大和川下流西部流域下水道として都市計画決定され、同年度に事業着手しています。計画区域は西除川や東除川流域などの8市1町を対象とし、計画排水面積は約6,300ha、計画処理水量は52万2,000立方メートル/日です。
今池処理場は、昭和52年度に工事着手し、昭和60年に処理能力4万立方メートル/日で供用開始、その後平成3年及び12年にそれぞれ3万立方メートル/日を増設し、現在10万立方メートル/日の処理能力を有しています。処理方式は、標準活性汚泥法を採用しています。
現在、「嫌気・無酸素・好気法」による三系水処理施設と砂ろ過施設の建設を進めています。
雨水事業は、西除川下流部の松原市、堺市、大阪市及び美原町の計画排水面積1,662haを対象区域にしています。昭和57年の大和川大水害を契機に、今井戸川系雨水ポンプ場(排水能力15.3立方メートル/秒)の事業に緊急的に着手して、昭和61年に供用しました。
また、今井戸系雨水ポンプ場は平成8年に供用開始し、平成12年に計画排水能力40.2立方メートル/秒の整備が完了しました。
幹線管渠は西除川左岸幹線など10幹線で、計画延長51.9kmのうち平成12年度末までに46.2kmが整備済で、89.1%の進捗です。現在、今井戸東除川幹線の平成13年度未完成に向け工事を進めています。
2)大井処理区
大井処理区は、昭和46年に大和川下流東部流域下水道として都市計画決定され、計画区域は石川流域などの5市3町1村を対象とし、計画排水面積は7,400ha、計画処理水量は32万6,000立方メートル/日です,
昭和49年度に処理場用地買収から事業に掛かりましたが、建設工事を着手するにあたって、大和川下流流域下水道事業の全体の効率的事業執行を図る観点から、当初は、大井処理区の汚水を今池処理場で暫定処理する事業計画としました。
そこで昭和54年度より大井処理場の放流幹線、調整池、ポンプ場などの工事を進め、昭和61年に暫定供用を始めました。その後処理施設の建設を進めて、平成8年に2万5,000立方メートル/日の水処理施設を本格稼働させました。また、平成10年に2万5,000立方メートル/日の能力増強を行い、現在5万立方メートル/日の処理能力を有しています。
処理方式は、当流域で初めて「嫌気・無酸素・好気法+砂ろ過」の高度処理を導入したことが大きな特色で、良好な水質が得られています。
幹線管渠は石川左岸幹線など9幹線で計画延長62.9kmのうち平成12年度末までに51.4kmが整備済で、81.7%の進捗率となっています。
3)狭山処理区
狭山処理区は、昭和46年に大和川下流南部流域下水道として都市計画決定され、計画区域は西除川や石川の上流域の3市を対象とし、計画排水面積は5,200ha、計画処理水量は19万3,000立方メートル/日です。
狭山処理場は、当初、昭和42年に公共下水道金剛処理場として1万立方メートル/日で供用開始されていました。流域下水道事業としては、昭和48年より増設工事に着手し、昭和55年に既設を含めて3万立方メートル/日に拡充し供用開始して、現在に至っています。
また、大井処理区と同様、狭山処理区においても、汚水の一部を平成元年から今池処理場で暫定処理していますが、この暫定措置を解消すべく平成9年から第二期施設の建設に着手しています。
幹線管渠は河内長野幹線など4幹線で、計画延長26.8kmのうち平成12年度末までに15.3kmが整備済で、57.1%の進捗です。引き続き河内長野幹線、天野川幹線の延伸を進める他、長野中継ポンプ場についても、14年度末完成を目指し鋭意工事進捗に努めています。
3.重点事業
当事務所においては、大和川下流流域下水道の早期供用をめざして、今池処理場を中心とする三処理区一括暫定処理を実施し、当初の目的を達成してきました。
今日では、第二段階として21コスモス計画を基に、普及率の向上を重点目標に置き、公共下水道の受け皿としての流域下水道幹線の早期延伸と処理区毎の処理体制の整備拡充に努めています。
これまで、平成8年の大井処理区暫定処理解消と平成9年の大和川下流流域関連全都市供用開始の実現を果してきましたが、今後は、狭山処理区における暫定処理の早期解消をめざして、狭山処理場拡張事業の建設促進が重要となっています。
狭山処理場第二期施設は、平成9年度に懸案の用地買収完了に伴い建設工事に着手し、現在、平成14年度内の供用開始を目指し、水処理・汚泥処理施設の設備工事に重点的に歌り組んでいます。
新たな事業としては、「親しまれる下水道」施策として、大井処理場水処理施設の上部空間(約9,000平方メートル)を「ふれあいランド」として整備し、平成9年より府民に開放しています。今池処理場でも、周辺緑地を順次、開放しています。今後も、貴重な都市空間として活用できるように整備を進めてまいります。
また、下水道資源リサイクルについては、平成7年より狭山処理場の汚泥焼却灰を材料として焼成レンガ「アシュレン」を製造販売しています。処理水については、供給施設「q水くん」を平成9年度までに三処理場全てに設置し活用を図っています。
焼成レンガ「アシュレン」と施工例
4.おわりに
府内の下水道普及率は80%を越えるまでに整備が進んできましたが、南河内地域は、56%程度と他の地域に比べ依熱として低い状況てす。また、大和川の水質も年々改善されているとはいえ、依然全国ワースト1・2位を争う不名誉な状況になっています。
当事務所としましては、現在策定中の「二一世紀の大阪府下水道整備基本計画」を踏まえ、大和川流域の水環境の保全と生活環境の改善を目指し、根幹となる大和川下流流域下水道事業を関係都市と連携してより一層推進してまいりたいと考えています。
今後とも関係の皆様方のご支援とご協力をお願い申し上げます。

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