建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2002年3月号〉

寄稿

富山の明日を築く社会資本整備

国土交通省北陸地方整備局 富山工事事務所長 久保田 勝

久保田 勝 くぼた・まさる
昭和28年12月22日生、大阪府
昭和53年3月京都大学大学院卒
昭和53年4月大臣官房採用(和歌山県土木部河川課技師)
昭和55年4月関東地建 荒川上流 開発工務課 係長
昭和59年7月九州地建 宮崎工事 調査第一課長
昭和62年6月九州地建 企画部 企画課長
昭和64年1月河川局 治水課長補佐
平成 3年4月九州地建 遠賀川工事事務所長
平成 5年10月関東地建 京浜工事事務所長
平成 7年7月水資源開発公団 企画部 計画課長
平成10年4月河川局 河川環境課 都市河川室長
平成12年4月現職
事務所の概要
富山工事事務所は、一級河川常願寺川、神通川、庄川、小矢部川の改修工事、環境整備、維持修繕、管理、調査を担当し、並びに一般国道8号、41号、156号、160号の改築、維持修繕、交通安全事業及びその他の管理と359号の改築を実施しています。さらに高規格幹線道路である一般国道470号能越自動車道の新設工事を実施しています。
河川事業
1. 常願寺川 改修計画概要 北アルプスの北ノ又岳(標高2,661m)を水源として、わずか56kmで日本海へ流れ出るという我が国屈指の急流河川です。そのための上流部の非常にもろい地盤条件と相まって、上流から流れ出す土砂の量が非常に多いという特徴があり、下流部においては川底が両岸の土地より高いという天井川を形成しています。
1.1 急流河川における河岸浸食への対応
上流域からの供給土砂の減少等から河床低下が進行し、一部の既設護岸の根入れが不足しています。特に左岸中流域の水衝部となって河岸浸食が著しい富山市大島地区において、根継ぎ護岸及び根固水制工を継続促進します。
1.2 破堤の原因となる護岸裏の空洞化を防ぐ
一部の堤防護岸では、雨水の浸透による堤体土砂の流出が原因と考えられる護岸裏の空洞化が発生しています。空洞化位置や破堤ポテンシャルの高い立山町日置地区において、護岸及び雨水浸透対策を継続促進します。

2. 神通川 改修計画概要

岐阜県の川上岳(標高1,626m)を水源として、飛騨地方から富山県の中央部を通って日本海にそそぐ長さ約120kmの一級河川です。上流部が日本有数の多雨地帯であるため、古くから度々洪水を引き起こしました。
2.1 河川改修と道路整備の連携
神通川支川井田川上流域の八尾町井田地区は、現況流下能力が低い上、堤防背後地は住宅密集地で治水上重要な箇所です。今回、八尾町都市計画道路事業と連携して、築堤と道路が兼用区間になる箇所を合併事業として取り組みます。
2.2 弱小堤区間に対する継続的な築堤促進
神通川支川井田川下流域の婦中町富川地区の堤防は、高さ不足及び天端幅不足の弱小堤区間であり流下能力が著しく不足しています。堤内地の県営ほ場整備事業と連携して、築堤を継続促進します。 3. 庄川 改修計画概要
岐阜県の烏帽子岳(標高1,625m)を水源として、飛騨山地から数々の支川を併せて富山県に入り、砺波市、高岡市を経て新湊市から日本海へそそぐ長さ約115kmの一級河川です。流域には砺波平野が広がり、越中米やチューリップなど、多くの特産物を生み出しています。
3.1 みんなが安心して暮らせる地域づくりの支援
庄川下流域の大門町柳町地区は、庄川唯一の無堤区間であり、流下能力が大きく不足しています。背後地に住宅密集地を抱える地区であることから、地域整備に配慮しながら築堤のための用地補償を促進します。 4. 小矢部川 改修計画概要 富山県の大門山(標高1,572m)を水源とし、小矢部市、高岡市を経て、新湊市から日本海へそそぐ長さ約68kmの一級河川です。急勾配の河川の多い富山県においては、比較的穏やかな川ですが、かつて庄川の支川として合流していたころは、庄川の出水のたびに逆流が生じ、大きな被害が起こっていました。
4.1 合流点の改修促進
小矢部川中流域の高岡市四日市地区で合流する広谷川は、富山県の改修により流下能力の向上が図られてきましたが、小矢部川合流点について富山県と進度調整を図り、合流点の改修を促進します。
4.2 小矢部川水辺の楽校プロジェクト
小矢部川上流域茄子島地先の右岸で平成11年度から着手しています。この事業は、河川環境整備事業で整備を行っているもので、その目的は川の持つ豊かな自然環境や水辺に生息・生育する多様な生き物などとふれあえるように河川整備を実施するものです。
▲常願寺川 ▲神通川 ▲小矢部川
道路事業
1. 広域ネットワークの整備でまちとまちの連携を強化 地形的条件や地理的条件を克服し、三大都市圏はもちろん東北地方や中国・九州地方にも広域交流の環を広げていくために、富山高山連絡道路、能越自動車道、東海北陸自動車道の整備を進めます。また、富山市と高岡市の連携を強化する富山高岡連絡道路、都市内交通の円滑化を図る富山外郭環状道路、高岡環状道路を整備します。
1.1 富山高山連絡道路
<地域高規格道路> 猪谷楡原道路
猪谷楡原道路は富山高山連絡道路の延長約80kmの一部となる、大沢野町小糸から細入村楡原に至る延長6.6kmの2車線道路です。
1.2 <高規格幹線道路> 能越自動車道
能越自動車道は、石川県輪島市から富山県砺波市に至る延長約100kmの自動車専用道路です。石川県能登半島地域と富山県西部地域に高速交通サービスを提供するとともに、両地域の主要都市や重要港湾(七尾港・伏木富山港)から国土幹線軸へのアクセス性を向上させる道路です。
1.2.1 高岡砺波道路
高岡北IC(仮称)から小矢部砺波jctに至る延長18.2kmの4車線道路です。小矢部砺波jctで北陸自動車道及び東海北陸自動車道に連結し、高速広域交通ネットワークを形成します。
1.2.2 氷見高岡道路
氷見IC(仮称)から高岡北IC(仮称)に至る延長11.2kmの4車線道路です。氷見・高岡両都市間、富山県西部地域の連携を強化し、幹線道路網の交通混雑緩和にも寄与します。
1.3 富山高岡連絡道路
<地域高規格道路> 下田立体化事業

下田立体化事業は、富山高岡連絡道路のうち高岡市石瀬と同市野村間の延長約1.0kmを立体化(高架化)する事業で、下田交差点の慢性的な交通渋滞を解消し、交通機能向上と安全性確保の効果が期待されています。

2. 安心・安全、信頼性の高い地域ネットワークづくり
富山県の乗用車保有率は全国でもトップクラスで、自動車交通への依存度が高い状態です。このため混雑区間が市街地周辺を中心に各地に依存し、とくに国道8号に交通量が集中する県東部では、交通量が多く混雑度の大きい区間が連続しています。この混雑度の大きな区間を中心としてバイパス事業や拡幅事業を展開し、交通の円滑化と渋滞緩和を図って地域の活性化をうながします。
2.1 国道8号 入善黒部バイパス
入善黒部バイパスは、入善町椚山から魚津市江口間の延長16.1kmの4車線バイパスです。慢性的な交通混雑を解消するとともに、魚津バイパスと接続して富山県東部の幹線ネットワークを形成し、経済活動の活性化、生活環境の改善を図ります。
2.2 国道8号 魚津滑川バイパス
魚津滑川バイパスは、魚津市住吉から滑川市稲泉間の延長7.4kmの4車線バイパスです。魚津バイパス及び滑川富山バイパスと接続して一体的に機能し、この区間の慢性的な交通混雑を解消するとともに、通過交通の円滑化を図ります。
2.3 国道8号 西高岡拡幅
高岡市四屋から同市立野に至る延長5.96kmの区間で、現在の国道8号を4車線に拡幅します。高岡市の中心部に近接する当区間は交通渋滞が著しく、この事業によって渋滞の解消を図るとともに、能越自動車道高岡ICのアクセス道路としての機能を発揮するよう整備します。
2.4 国道41号 南富山拡幅
富山市蜷川から同市太郎丸に至る延長4.13kmの区間において、現在の国道41号を拡幅する事業です。交通混雑の解消と交通安全対策を図ると同時に、電線化の地中化を行い都市景観の向上を図ります。
2.5 国道156号 砺波除雪拡幅
井波町岩屋から砺波市太郎丸に至る延長5.3kmの区間において、現在国道156号を4車線及び2車線に拡幅する事業です。この事業によって増加傾向にある交通量に対応し、とくに冬期間の降雪積雪時に発生している交通麻痺状態の解消を図ります。
2.6 国道160号 氷見改良
氷見市中波から同市字波に至る延長5.3kmの区間で、現在の国道160号を2車線で拡幅します。この事業によって一般通行規制(連続雨量120mm)の緩和を図るとともに、防災事業の局部改良を行います。また、あわせてCCZ事業に対応した道路整備を実施しました。 3. 人にやさしく快適なまちづくり・みちづくり
富山県における高齢化は、全国平均よりもおよそ6年早く進行しています。こうした社会構造の変化に対応し、誰もが安心して暮らせる地域づくりを進めていくことが急がれています。
3.1 交差点改良(事故防止・渋滞解消)
慢性的な交通渋滞が起こったり、事故が多発している交差点において、右折専用車線の設置等による交差点改良を実施し、事故防止と交通渋滞の解消を図っています。
3.2 自転車歩行者道の整備
少子高齢化社会に対応した生活空間づくりをめざして、うるおいのある自転車・歩行者道の整備を進めています。
3.3 歩光空間r41
国道41号城址公園前交差点付近の歩道に、歩行者専用の照明灯を設置しました。これは、夜の快適歩行空間づくりをめざした事業の第一弾です。
3.4 国道8号 歴史国道「北陸道 倶利伽羅峠」
北陸道は、古代から国の重要な道として位置づけられ、中世には源平合戦の舞台にもなった街道です。いにしえの姿を色濃く残すこの道を訪れた人たちが、地域の歴史を五感で味わい、自然や文化にふれあいながらリフレッシュすることができる「歴史国道」の整備を進めます。
富山高山連絡道路
<地域高規格道路>
猪谷楡原道路
楡原より庵谷方向を望む
国道8号 入善黒部バイパス
黒部市古御堂より入善方向を望む

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