建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2002年3月号〉

寄稿

南大阪湾岸流域下水道事業

大阪府 南大阪湾岸流域下水道事務所長 阿部 捷歳

阿部 捷歳 あべ・かつとし
昭和20年生まれ 山口県出身、宮崎大学工学部(土木工学)修了
昭和43年4月大阪府入庁
昭和57年4月南部流域下水道事務所設計係長
平成 5年4月岸和田土木事務所工務課長
平成 7年5月富田林土本事務所建設課長
平成 8年4月土木部土木監理課参事(東大阪市へ派遣)
平成10年4月阪南臨海整備事務所長
平成13年4月現職
大阪府南大阪湾岸流域下水道事務所は昭和63年4月に設立された。
当事務所の前身は大阪府南部流域下水道事務所の南大阪湾岸工区として昭和51年4月に誕生し、その後、湾岸中部流域・湾岸南部流域の計画決定に伴う事業量の増大及び効率的な事業執行のため、昭和54年4月に南大阪湾岸出張所となり、昭和63年4月に現在の名称となった。
当事務所は、堺市南端の一部から岬町までの泉北・泉南地域の9市4町、いわゆる泉州地域を流域として分流式下水道事業を実施している。
流域下水道の整備は、泉州地域を北部・中部・南部の3流域区に分け、各流域区は各々、埋め立て地に処理場を設置し、閉鎖性水域である大阪湾の水質保全を図るため、富栄養化の要因となる窒素・リンを除去するために、高度処理を実施している。
一方、3処理場で発生する下水汚泥については、日本下水道事業団が実施している大阪南下水汚泥広域処理場(大阪南エースセンター)で一括処理されている。
■湾岸北部流域
湾岸北部流域は、昭和48年度に計画決定し、同年度に事業実施している。関連市町は6市1町(堺市・高石市・泉大津市・和泉市・岸和田市・貝塚市・忠岡町)で、計画区域11,704ha。処理場計画は、計画人口558,000人、処理能力630,00立方メートル/日である。
事業の進捗状況については、昭和62年4月に処理能力22,500立方メートル/日の施設が供用開始し、さらに関連市町の流入汚水の増加に伴い、施設の増設を図り、現在、101,000立方メートル/日を有しており、その進捗率は16.0%となっている。
又、平成12年12月より28,000立方メートル/日水処理施設基礎工事に着手し、引き続き今年度は、その本体工事並びに設備工事を発注し、平成16年春の供用開始を目標に鋭意工事を進めている。
管渠は、計画延長55.70qで昭和49年度より着手しており、平成13年3月末で51.34kmが完成し、進捗率は92.2%となっている。
▲【写真−1 湾岸北部処理場】
■湾岸中部流域
湾岸中部流域は、昭和52年度に計画決定し、昭和55年度から事業実施しており、関連市町は4市2町(岸和田市・貝塚市・泉佐野市・泉南市・熊取町・田尻町)で、計画区域6,743ha。処理場計画は、計画人口309,000人、処理能力382,000立方メートル/日である。
事業の進捗状況については、二色の浜パークタウンの街開きに合わせ、処理能力12,500立方メートル/日の施設が平成元年4月に供用開始した。さらに関連市町の流入汚水の増加に伴い施設の増設を図っており、現在の処理能力は52,600立方メートル/日の施設となり進捗率は13.8%となっている。更に、平成12年度から着手していた13,800立方メートル/日の設備工事は平成14年春の供用開始に向け鋭意工事の進捗に努めている。
管渠は、計画延長27.97qで昭和61年度より着手しており、平成13年3月末で23.18qが完成し、進捗率は82.9%となっている。
▲【写真−2 湾岸中部処理場】
■湾岸南部流域
湾岸南部流域は、昭和61年度に計画決定し、昭和62年度より事業実施している。関連市町は3市1町(泉佐野市・泉南市・阪南市・岬町)で計画区域4,173ha。処理場計画は、計画人口198,000人、処理能力140,000立方メートル/日である。
事業の進捗状況については、平成5年7月に処理能力12,700立方メートル/日の施設から府下12処理区で初めて窒素・リンの除去を対象とした高度処理施設として供用開始し、また、平成8年度から処理能力25,400立方メートル/日の水処理施設土木工事に着手し、平成11年3月に完成した。その内、平成10年度から12,700立方メートル/日の設備工事に着手し、平成12年4月に供用開始を行った。現在、25,400/日の処理能力を有しており、進捗率は9.1%となっている。
【写真−3 湾岸南部処理場】
管渠は、計画延長23.94kmで昭和63年度より着手しており、平成13年3月末で20.18kmが完成しており進捗率は84.3%となっている。 なお、岬町域での岬阪南幹線は、淡輪、深日の両中継ポンプ場でポンプアップが必要であり、淡輪中継ポンプ場は平成11年4月に供用開始しており、残りの深日中継ポンプ場についても平成13年10月に完成した。
今後とも本事務所においては、管渠の概成に向け事業の進捗を図っていくとともに、創意と工夫により効率的な下水道整備の促進を図り、泉州地域の下水道普及率向上に努めてまいります。
一方、3処理場から放流される高度処理水は、街路樹や公園等の散水用として供給を実施している以外は大阪湾に直接放流しております。今後は21世紀の大阪「大阪の再生・元気倍増」に貢献でき関西国際空港の玄関口にふさわしい快適な都市環境形成に向け、河川や公園等の親水用水としての水資源再利用等、放流の分散化に向け取り組むとともに、生態系に配慮した下水道の実現のため、処理場内にビオトープ等新たな動植物の生息空間を創設し、環境教育となる施設作りの検討を進め、事業実施手法について関係機関と調整を図っていく方針である。

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