建設グラフインターネットダイジェスト

〈建設グラフ2002年2月号〉

寄稿

21世紀 横浜のまちづくり

〜“生活を楽しむまち”をめざして〜

横浜市長 高秀 秀信

高秀 秀信 たかひで・ひでのぶ
昭和 4年8月18日生まれ、北海道出身
昭和27年3月北海道大学工学部土木工学科卒
昭和59年3月工学博士号取得
昭和27年4月建設省採用
昭和48年8月同大臣官房技術調査室長
昭和50年4月同都市局下水道部流域下水道課長
昭和52年2月同関東地方建設局河川部長
昭和53年11月同大臣官房技術参事官
昭和55年7月同中部地方建設局長
昭和56年6月国土庁水資源局長
昭和58年7月建設技監
昭和59年6月建設事務次官
昭和61年5月水資源開発公団総裁
平成 2年4月横浜市長(1期目)
平成 6年4月横浜市長(2期目)
平成10年4月横浜市長(3期目)
2002年FIFAワールドカップの決勝戦会場となる横浜国際総合競技場
1.2002年FIFAワールドカップサッカー大会誘致の意義
横浜は今、FIFAワールドカップサッカー大会の開催準備に追われています。出場国、また、横浜で試合を行う国が決定されるなど、運営に関わる事項が具体化されるにつれ慌ただしさに拍車がかかるとともに、臨場感が高まってきました。
なぜ、この世界最大のスポーツイベントを誘致したのか……これまでも幾たびか質問されたことですが、一言で表せば「横浜を元気にする」ことが目的です。
第一に「人」の元気。世界最高峰の技と力を持つチーム同士の熱戦を身近に感じることで、横浜市民に元気になってもらいたい。自らもスポーツをしたいという市民が増え、それが健康増進につながることも期待しています。
第二に、「経済」の元気を創出することです。ワールドカップなどコンベンションによる経済波及効果が期待される産業は宿泊、飲食、観光、交通、設備、運送から印刷、広告等々、数多くあります。コンベンションが大型であればあるほど、波及する分野は裾野を広げていきますから、世界最大のスポーツイベントであるワールドカップは、横浜経済活性化に大きな役割を果たすことになります。
第三に、横浜をアピールするとともに、「街」そのものを元気にすることです。横浜は決勝戦その他の試合のほか、IMC(国際メディアセンター)誘致にも成功しました。
このIMCには世界各国から報道関係者が大挙して訪れ、連日ワールドカップ関連のニュースを配信します。その多くの情報とともに横浜の街が世界に紹介されるわけですから、そのシティセールス効果には計り知れないものがあります。
このように、FIFAワールドカップサッカー大会誘致は横浜の未来に向けた挑戦です。ぜひとも成功させなければならないと考えています。
予選組み合わせ決定後に行われた参加国フラッグセレモニー
( 12月3日、市役所前の「くすの木広場」にて)
2.“生活を楽しむまち・横浜”
都市の時代になるといわれる21世紀、私は横浜を「自立都市」にしたいと考えています。これを市民生活の視点からとらえたのが“生活を楽しむまち”です。
暮らしに関わるすべての面で自立性が高く、家族とともに生活そのものを安心して楽しむことのできるゆとりのある街を実現したいと考えています。
そのためには、まず生活の基盤となる「就業の場の確保」に力を入れていきたい。加えて、職住が近接し、文化、スポーツ、ショッピングなど、生活を楽しむ分野の機能や、交通の利便性などが充実した街づくりをソフト・ハード両面から進める…これが”生活を楽しむまち”の視点です。
つまり、“生活を楽しむまち”は、私がこれまで市政の基盤に据えてきた”市民生活の安全・安心・安定”の確保と、それを実現するために取り組んできた「自立都市」の未来図として提案するものです。
3.自立の重要性〜福祉と経済は車の両輪〜
地方分権の進展により、自治体の業務は増大していますが、財源の移譲は遅々として進みません。また、長引く経済の低迷を受け、市税収入も減少しています。
一方で、少子・高齢化、ライフスタイルの変化などを要因に、自治体に対するニーズは多様化しており、やるべきことは山ほどあります。厳しい財政状況だが、実施しなければならない施策は増え続ける…こうした状況の解決策として私が取り組んでいるのが、「市内経済活性化」です。どんな優れた施策も財源なしには実行できません。充実した福祉施策はしっかりとした財政基盤の上に成り立つものです。もちろん、国に対して財源移譲や税制度改正の実現を強く働きかけていますが、自らの手で積極的に自主財源の確保を進めることこそ、都市の自立の第一歩です。今後も、自立的都市経営に向け、歩を進めていきたいと思います。

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